ショックロスについて

ショックロス(既存毛の一時的な抜け毛)とは

植毛手術や麻酔などの影響で、既存の髪の一部が一時的に抜ける現象を、俗称で、ショックロスといいます。正式な医学用語では、「手術後に見られる既存毛の一時的な抜け毛の増加」と言います。

抜け毛が増えると気になりますが、実際には、既存の髪の10~15%前後が抜け毛になる程度で、全部が抜けるわけではありません。 たとえば、密度が100%の正常の場所の髪が10~15%減少しても、外見上は薄毛には見えません。ほとんど気がつかない程度の変化です。
もともと薄毛を気にしていた範囲の髪が若干減少すると、少し薄毛が進行したように感じられる場合もありますが、半年~1年後にはまた元通りに生えそろいます。

ショックロスと言うと言葉がきついので、既存の髪が無くなるのではないかと心配する方がおられますが、一時的な現象でやがて元通りに回復しますし、実際には周囲から見るとわかりにくい程度の変化です。

原因

はっきりとした医学的原因はまだわかっていませんが、主に手術の影響による、移植範囲の頭皮に起こる軽い炎症反応や局所麻酔の影響が考えられます。 その結果、既存の頭髪の一部で生え替わりの時期に勘違いが起こり、毛周期が一時的に「ずれ」て、生え代わる時期が早めにきたと勘違いする毛が一部で抜け毛になることが原因の一つではないかと考えられています。

ショックロスの起こる時期・確率

一般的にショックロスの起こる時期は、手術後2~4週間目頃に始まり、4~5カ月後頃に回復してくる場合が多い様ですが、ときには少し遅れて2~4カ月後頃に抜け毛が増え、5~6カ月後頃に回復してくる場合もあります。

ショックロスの起こる確率に関しては、とくに医学的な論文での報告はみられません。どのタイプの方にショックロスが起こりやすいか、あらかじめ予測することは困難です。一般的には、程度の差の問題で、大部分の方に起こる可能性はあると言えます。
手術の後に多少抜け毛が増えるが、明らかに分かるような薄毛にはならないという程度のことは、程度の差はあるとしても、大部分の方に見られる現象です。 中には、抜け毛の範囲が、以前よりも薄くなったと感じる方もおられます。数的には、少数です。

抜け毛の範囲

抜け毛が増える範囲は、移植範囲と、その周囲の、局所麻酔の注射を打つ範囲です。
手術操作と関係ない、別の場所の抜け毛が増えるわけではありません。また、ドナー縫合部の周囲1~2cmの範囲の髪が一時的に抜け毛になることもあります。

その既存毛の一時的な抜け毛の程度は、個人差が大きいです。抜け毛は増えても薄毛には見えない程度で過ぎる方もあれば、もともと薄毛を気にしていた範囲がさらに気になる程度の薄さになる方もおられます。一般的には、元の髪の10~15%程度が抜けて、残りの85~90%の髪は抜けずに残る、と言われています。全部が抜けるわけではありませんので、ご安心下さい。

女性の場合は、ドナー傷の周囲にショックロスが起きやすく、移植した範囲の周囲も、麻酔薬の影響で、手術のあと、一時的な既存毛の抜け毛が増えることがあります。このショックロスは、とくに女性で見られやすい現象です。

また、ショックロスは、植毛手術をした範囲の現象です。植毛をしていない部分には、ショックロスは起こりません。

回復

ショックロスは、手術後3~4ケ月頃までの期間に見られる、既存毛の一時的な抜け毛の増加で、程度に個人差があります。さらに、同じ人でも、複数回の手術で、毎回程度が違います。ほとんど気にならない程度で過ぎる場合もあれば、しばらくの間、抜け毛の増加が手術前よりも若干気になることもあります。初回の手術では気にならなかったのに、2回目の植毛手術後にショックロスが気になる方もおられます。いずれも、抜け毛の量が増えるのは、ほぼ一定の期間に限られた現象で、この時期が過ぎると通常の範囲の抜け毛の量に落ち着きます。そして、いったん抜けた髪も、いずれ約1年で、もとの状態に戻ります。毛根の組織は傷ついていませんので、一旦抜けた髪もやがて元通りに生えてきます。

この抜けた髪は、髪の生え変わるサイクルが1回先に変わったと考えられます。つまり、たとえば人生で髪が16~20回生え変わるとしたら、その1回先の髪の毛に変わります。通常は4~5年ごとに髪が生え変わりますが、その生え変わるサイクルが1回先に変わるわけです。
つまり、今の髪が4~5年先に抜けて生え変わる予定のものが、手術をきっかけに一足先に4~5年先の髪に生え変わるわけです。
自然の髪が生え変わるときに、突然次回から髪が生えてこなくなるとは、だれも予想しないように、ショックロス後の髪も、生えてこないことは考えにくいことです。

ショックロスというと言葉がきついので、永久に生えてこないかもしれないという印象を受けがちですが、毛周期の単なるズレによる一時的な抜け毛の現象です。毛根の組織は傷つかずに以前のまま残っていますので、半年~1年後には必ずまた元通りの毛が生えそろってきます。どうぞご安心ください。

対処方法・予防

人工毛のふりかけ(ケラチンパウダー)
手術後に一時的な抜け毛が増えて、少し薄毛が気になり始めた場合は、人工毛のふりかけ(パウダー)でカモフラージュするのはとても有効な方法です。
例えば「スーパーミリオンヘア」や「ジョンソン&ジョンソン社の製品」などもご使用いただけます。
人工毛のパウダーは、移植毛や頭皮には影響ありません。ふりかけの粉は頭皮に付着しているだけで、毛穴に入るサイズではありませんので、問題ないのです。まれに、定着用のスプレーでかぶれる人がおられます。その場合は、刺激の弱いスプレーを使えば大丈夫です。

ショックロスの原因は手術の影響と考えられますので、手術後に使うミノキシジルや育毛剤でショックロスが予防できるわけではありませが、ショックロスの程度を少し軽減できる可能性は考えられます。手術の影響で頭皮の組織内に起こる炎症反応は手術後7~14日間でほとんど回復します。