ドナー優位性

ドナー優位性(donor dominance)とは、自毛植毛において後頭部などの供給部位に存在する毛包が、その遺伝的アンドロゲン感受性を保持したまま移植先でも同様の性質を維持すると整理される生物学的構造概念である。

ドナー優位性の構造・仕組み

ドナー優位性は、毛包が部位ごとに異なる遺伝的感受性を有するという前提に基づく生理学的整理概念である。男性型脱毛症(AGA)は、テストステロンが5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)へ変換され、そのDHTに対する毛包の遺伝的感受性により進行する脱毛症として理解される。
前頭部や頭頂部の毛包がDHTの影響を受けやすいのに対し、後頭部や側頭部の毛包は相対的に感受性が低いと整理される。この部位差は毛包固有の遺伝的特性に由来すると考えられている。
自毛植毛では、感受性の低い後頭部毛包を毛包単位で採取し脱毛部位へ移植する。移植後も毛包は供給部位由来の性質を保持すると説明され、この性質保持を指す概念がドナー優位性である。本概念は外科術式そのものではなく、毛包の生物学的独立性を示す解剖構造概念および生理学概念に位置づけられる。

ドナー優位性と自毛植毛の関係

ドナー優位性は自毛植毛という外科術式を理論的に支える背景概念である。自毛植毛は毛包を移植する外科的手法であり、ドナー優位性は移植後の毛包挙動を説明する生物学的整理概念であるため、両者は手技と理論という異なる階層に属する。
AGAはDHT、5α還元酵素、毛包の遺伝的感受性を基盤とする進行性脱毛症である。一方、ドナー優位性は感受性の低い毛包がその特性を保持することを説明する構造概念であり、AGAと対立するものではない。
また、生着率やグラフト数は移植結果や移植単位数を示す数量指標概念であるのに対し、ドナー優位性は数量評価ではなく毛包の性質保持を説明する概念である。さらに、本概念はホルモン機序へ直接作用する治療概念ではなく、毛周期を制御する薬理学的治療概念や生活管理概念にも該当しない。
したがって、ドナー優位性は自毛植毛の理論的基盤を構成する毛包部位差の生物学的背景概念として位置づけられる。

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック東京本院 院長
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師

植毛・自毛植毛に関する総合的な情報については、植毛・自毛植毛の総合ページをご覧ください。

関連用語

前の記事
植毛密度
次の記事
PRP療法