密度の問題(レイさんの投稿)

私がこちらの掲示板で勉強させていただくなかで、1回の手術で密度は35%UPが限度だと思っておりましたが、(この掲示板で失礼にあたりますが)他のクリニックや、この掲示板の最近の治療例では40%の密度手術が行われているようです。
実際のところ、現在の技術では1回の手術では最高何%の密度UPが可能なのでしょうか?

レイ

お返事

レイ様へのお返事

ご質問ありがとうございます。
自毛植毛では移植密度の限界も重要な研究課題の一つです。国際毛髪外科学会でも、移植密度の限界は、毎年論議されるテーマです。
アメリカでは植毛医の考え方は大きく2つに分かれているようです。多くの植毛医は1回の植毛で1cm2あたり35株を植えるのが平均的な考え方です。白人の髪の密度が約200本/cm2とすると平均2本毛の株を35株/cm2移植すると約35%の密度アップになります。これを2回おこなえば十分に50〜60%以上の密度を達成できるわけです。
また一方では、1回の植毛で60%以上の密度を実現することに情熱を燃やしている植毛医の発表も見られます。彼らは、高密度で植毛しても定着率や発毛率は低下しないと報告しています。もちろん1回の植毛に採取できるドナーの量に限界がありますので、ごく狭い範囲の植毛に限って、高密度の植毛をおこなうわけです。広範囲の脱毛の治療には高密度移植は適応されません。

さて、紀尾井町グループでは広範囲に植毛を希望されるお客様が多いので、一般的には、平均25〜30%の密度アップとお答えしてきました。実際には前の生え際から前頭部では35〜40%の密度で植毛する場合が多いです。それよりも後ろのほうで、既存の髪が残っている範囲では、術後の一時的な休止期脱毛(いわゆるショックロス)を防ぐために密度を25〜30%に落として植毛しています。
あくまで、採取するドナーの量と、植毛範囲の面積とのかねあいで密度が決まります。

個人的な経験ですが、小さな傷跡の脱毛に対する植毛で高密度植毛をおこなったことがあります。髪のない傷跡の脱毛に対する限局的な植毛ではショックロスの心配もありませんので、高密度植毛に挑戦できるのです。最近の例では、1回の植毛で1.3cm2の傷跡の脱毛に2本毛を70株移植した症例と、4.0cm2の面積の傷跡の脱毛に2本毛を190株植毛した症例があります。つまり2本毛の株を47〜54株/cm2の密度で移植したわけです。日本人の標準的な髪の密度を130本/cm2とするか150本/cm2とするかで%の数値が変わってきますが、約60〜70%以上の(一部では約80%近い)密度を1回の植毛で移植したことになります。いずれもまだ数ヶ月しか経過していませんので、1年後の結果を見ないと実際の仕上がり密度は判定できませんが、結果が楽しみです。私の個人的な経験からは、日本人の症例でも1回の植毛で60〜70%の密度で植毛することは現在の技術で可能と考えています。ただしこれらの高密度植毛は、ごく限られた症例でのみおこなっています。通常の生え際の植毛では、移植面積に対して必要なドナー株の量が多くなりすぎて、かなりの高額治療になりすぎますので、40%前後の密度で植毛しています。

医師 柳生