亜鉛不足

亜鉛不足とは、体内の亜鉛量が必要量を下回り、酵素活性や細胞分裂などの生理機能に影響が及ぶ状態を指す栄養学的概念である。特定の脱毛症名ではなく、栄養状態の偏りを示す用語である。

亜鉛不足の生理的背景と細胞機能への影響

亜鉛は必須微量元素の一つであり、300種類以上の酵素活性、タンパク質合成、DNA複製、細胞分裂などに関与する。体内では主に筋肉、骨、皮膚などに分布し、恒常性の維持に重要な役割を担う。
亜鉛が不足すると、酵素活性の低下や細胞増殖の遅延が生じることがある。とくに分裂活動が活発な組織では影響が現れやすく、皮膚や消化管粘膜、毛包などで機能変化が認識される場合がある。
食事制限や偏食、吸収障害などにより亜鉛摂取量が不足した場合、抜け毛が増えたと感じられることがあるが、これは毛幹の損傷ではなく、毛周期の変化と関連して整理される。

亜鉛不足と毛周期・休止期脱毛症の関係

毛包では成長期に毛母細胞が活発に分裂し、毛幹の主成分であるケラチンが合成される。亜鉛はタンパク質合成や細胞分裂に関与するため、不足が持続した場合、成長期の維持に影響を及ぼす可能性がある。
その結果、毛周期の再配分が生じ、休止期毛の割合が相対的に増加することがある。この場合、一定期間後に休止期脱毛症としてびまん性の脱毛が認識されることがある。
ただし、亜鉛不足のみで薄毛や脱毛が必ず生じるわけではない。栄養状態全体、ホルモン環境、遺伝的背景など複数要因が関与する。AGAのように毛包の小型化が進行する脱毛症とは発症機序が異なる。
したがって、亜鉛不足は抜け毛や薄毛と関連づけられることがある栄養学的背景要因の一つとして整理される。

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック東京本院 院長
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師

植毛・自毛植毛に関する総合的な情報については、植毛・自毛植毛のTOPページをご覧ください。

関連用語

前の記事
タンパク質不足
次の記事
鉄欠乏