毛髪培養(ジダンさんの投稿)

完成には20年以上かかるって本当でしょうか?先生方で詳細知っている方教えていただきたいのですが…海外でもよいので

ジダン

お返事

ジダン様へのお返事

新年明けましておめでとうございます。
今年も紀尾井町グループの自毛植毛を、よろしくお願い申し上げます。

さて新年最初のご質問は、夢のある話題でした。
毛根の細胞培養に関するお問い合わせです。

自毛植毛の最大の制約の一つは、使用できるドナー毛髪の量に制限があることです。この問題を解決する方法として、細胞培養技術を応用した細胞移植が考えられています。もしも将来、毛根細胞を細胞培養技術で増殖させてその細胞を移植することで髪が生えることが可能になれば、ドナー量の制約はなくなり、いくらでも髪を生えさせる夢のような治療が可能になります。
そのための基礎的研究は世界的にいくつかの研究施設で進められています。毎年の国際毛髪外科学会でも、研究の進歩が報告されています。
現状はどうかといいますと、マウスを使った動物実験では髪が生えていますが、人ではまだ成功していません。うぶ毛は生えるのですが、まだ太い成人の髪は作れないのです。また、たくさん細胞移植してもそのうちの一部にしか髪が生えてこない点も問題です。今後の研究の進歩に期待されるところです。
実際のヒトでの臨床に成功するのがいつかは予測できませんが、最初の成功例が報告されるのは、数年後かも知れませんし、5〜10年後かも知れません。
仮に、成人の太さの髪を作れるようになったとしても、その次の段階で、クリアーすべき問題がまだあります。その一つは、細胞培養で植えた髪は、髪の生える方向を調節できないことです。現状の技術では、細胞移植で生える髪は皮膚に対して垂直に生えるだけです。前額部(おでこ)の生え際のように、前方向に斜めに生えさせる技術が確立されていないのです。次に、細胞培養で移植した細胞が皮膚癌を発生させる可能性が完全に否定されていないことも残された問題です。髪を生えさせても、そこに皮膚癌が発生する可能性があるとしたら、何のために植毛したのか意味がなくなります。
これらの点が解決されて、培養細胞の移植が実現されるのがいつになるのかは、まだ誰にも分かりません。皆で期待して待っていようではありませんか。

いくつかの資料を参考になさってください:
www.ishrs.org/articles/hair-follicle-cloning.htm
www.ishrs.org/articles/hair-follicle-origin.htm
www.ishrs.org/mediacenter/pr/pr1.htm

今年も、紀尾井町グループでは、世界最新の技術や知識を積極的に導入して、最新の治療法を皆様にご提供し続けてまいります。どうぞ皆様ご期待下さい。

医師 柳生