接触性皮膚炎と薄毛の関係は?原因や予防、対策・治療法を紹介【医師監修】

接触性皮膚炎と薄毛の関係は?原因や予防、対策・治療法を紹介【医師監修】

 接触性皮膚炎(せっしょくせいひふえん)は、皮膚が特定の物質と接触することで引き起こされる炎症性の皮膚疾患です。この炎症は、アレルギー反応や物理的・化学的刺激によって発生します。接触性皮膚炎は、大きくアレルギー性接触皮膚炎(ACD)刺激性接触皮膚炎(ICD)の2種類に分類され、それぞれ原因や発症メカニズムが異なります。本コラムでは、接触性皮膚炎について薄毛との関係や原因、予防、対策・治療法などを紹介していきます。詳細につきましては、専門医にご相談ください。

接触性皮膚炎の特徴

 接触性皮膚炎は、皮膚が特定の物質に接触することで発症する炎症性の皮膚疾患です。症状には皮膚の発赤、かゆみ、腫れ、発疹、水ぶくれ、乾燥やひび割れなどが含まれます。炎症は通常、接触した部位に限定して現れることが多く、痛みを伴うこともあります。接触性皮膚炎は、大きくアレルギー性接触皮膚炎と刺激性接触皮膚炎の2種類に分けられますが、それぞれの特徴は以下の通りです。

アレルギー性接触皮膚炎

 アレルギーを引き起こす特定の物質(アレルゲン)に対する免疫系の遅延型過敏反応によって引き起こされます。この皮膚炎は、皮膚にアレルゲンが接触することで免疫系が過剰に反応し、炎症を引き起こすものです。症状は、接触から数日から数週間後に現れることがあり、初回の接触時には症状が現れないこともあります。症状には、皮膚の発赤、かゆみ、腫れ、発疹、水ぶくれなどがあります。発疹はアレルゲンに直接接触した部位に限らず、広がることがあります。発疹の形状や分布は不規則で、周囲に拡がることがあり、場合によっては皮膚が裂けることもあります。また、症状はアレルゲンとの接触を重ねることにより悪化していくことが多く、慢性的に再発することもあります。

刺激性接触皮膚炎

 皮膚が化学物質や物理的な刺激に直接触れることで発症する炎症性の皮膚疾患です。免疫作用を介さず、繰り返しの化学的/物理的な刺激により発症します。症状は刺激物に接触した直後から数時間以内に現れることが多く、皮膚の赤み、かゆみ、腫れ、乾燥やひび割れ、発疹や水ぶくれなどの症状が現れることがあり、通常は接触した部位に局所的に現れます。洗剤や溶剤に触れることで起こることが多いです(例:食器用洗剤による手荒れ)。症状は、刺激物との接触を中止することで改善することが一般的で、慢性化することは少ないですが、繰り返し接触することで長引くことがあります。

接触性皮膚炎と薄毛の関係

 接触性皮膚炎は、直接的ではないものの、間接的に薄毛に影響を及ぼすことがあります。以下にその代表的なものについて説明します。

炎症による毛髪への影響

 シャンプーや育毛剤、整髪料などに含まれる何らかの成分に対して接触性皮膚炎を起こすと、髪の毛に影響が出ます。接触性皮膚炎は皮膚の炎症を引き起こすため、炎症が続くと、炎症部位の血流が影響を受け、毛根への栄養供給が不十分になる可能性があります。これにより、毛髪の成長が阻害されることがあります。

かゆみや掻きむしり

 皮膚炎によるかゆみが強いと、掻きむしりが生じることがあります。頭皮を頻繁に掻くことで毛髪が物理的に引っ張られたり、傷つけられたりし、毛根にダメージを与えることがあります。これが原因で、毛髪の成長が妨げられたり一時的に脱毛を引き起こしてしまう可能性があります。

ストレスの影響

 皮膚炎による不快感や見た目の変化が心理的なストレスを引き起こすことがあります。ストレスは、ホルモンバランスの乱れや血行不良、自己免疫反応などを引き起こす可能性があるため、薄毛や脱毛を悪化させる要因の一つになりえます。

カツラや人工毛の影響

 かつらやウィッグを固定する為の金属製のクリップや接着剤、人工毛の化学物質などによって接触性皮膚炎を引き起こしてしまう可能性があります。

 接触性皮膚炎が薄毛に影響を及ぼす場合、治療においてはまず皮膚炎の治療が最優先となります。炎症を適切に治療し、皮膚の状態を安定させることで、毛髪の健康にも良い影響を与える可能性があります。薄毛の症状が気になる場合は、専門医に相談するようにしましょう。

接触性皮膚炎の原因

 接触性皮膚炎の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が関与しています。

アレルギー性接触皮膚炎

 アレルギー性接触皮膚炎は、アレルゲンと呼ばれる物質に対する免疫系の反応によって引き起こされます。アレルゲンに接触した皮膚が、免疫反応によって炎症を起こすのです。このタイプの皮膚炎は、特定のアレルゲンに対して感作(かんさ)されるまでに時間がかかるため、数回の接触後に症状が現れることが多いです。例えば主なアレルゲンには以下のようなものがあります。

金属

 ニッケルやコバルトなど、金属アレルギーが原因で発症することがあります。これらは指輪やネックレス、ブレスレットなどのジュエリー、時計のバンド、ボタンなどに含まれることがあります。

化粧品

 香料や保存料、色素などが含まれる化粧品やスキンケア製品がアレルゲンとなることがあります。特に化粧品や日焼け止め、シャンプーなどが関係します。

薬剤

 一部の薬物や抗生物質、局所用のクリームや軟膏がアレルギー反応を引き起こすことがあります。

植物

 ウルシやハゼの木などの植物に含まれる成分がアレルゲンとなり、接触すると皮膚炎を引き起こします。

ラテックス

 手袋やゴム製品に含まれるラテックスもアレルゲンで、頻繁に接触することで皮膚炎が生じることがあります。

化学物質

 工業用化学薬品、清掃用洗剤、溶剤などもアレルゲンとなることがあります。特に接触時間が長い場合や濃度が高い場合に反応が起きやすいです。

染料

 衣類や布製品に使用される染料や化学的な処理もアレルゲンとなることがあります。

刺激性接触皮膚炎

 刺激性接触皮膚炎は、皮膚が物理的・化学的刺激にさらされることで直接的にダメージを受けることによって発生します。このタイプの皮膚炎は、感作の必要がなく、初回の接触でも症状が現れることがあります。主な刺激物には以下のようなものがあります。

化学物質

 強い酸やアルカリ、溶剤、漂白剤などが皮膚に直接触れると、皮膚のバリアを破壊し、炎症を引き起こします。これには清掃用洗剤、工業用化学薬品、家庭用洗剤などが含まれます。

石鹸や洗剤

 高濃度の石鹸や洗剤、特に強力な界面活性剤を含む製品は、皮膚の自然な油分を奪い、乾燥や刺激を引き起こすことがあります。

長時間の接触

 水や湿気に長時間接触することで、皮膚がふやけて刺激に対して弱くなることがあります。これにより、皮膚が乾燥し、ひび割れを起こすことがあります。

摩擦や圧力

 長時間の摩擦や圧力がかかることで、皮膚のバリアが破壊され、刺激性の皮膚炎を引き起こすことがあります。例としては、硬い靴や手袋の使用によるものがあります。

温度変化

 高温や低温に長時間さらされると、皮膚が乾燥し、刺激を受けやすくなることがあります。例えば、寒冷乾燥した環境や高温多湿の環境に長時間いると症状が現れることがあります。

金属

 特にアルカリ性の金属(例:鉄粉など)は、皮膚に刺激を与えることがあります。金属の粉塵や溶剤が皮膚に触れることで炎症が起こることがあります。

植物や農薬

 一部の植物や農薬も刺激性があり、皮膚に接触することで刺激性皮膚炎を引き起こすことがあります。

接触性皮膚炎の予防

 接触性皮膚炎を予防するためには、原因となる物質や状況を避けることが重要となります。予防のポイントをみていきましょう。症状が持続する場合や悪化しそうな場合は、速やかに皮膚科医や専門医に相談するようにしましょう。

アレルギー性接触皮膚炎

アレルゲンの特定と回避

 アレルゲンを特定して接触を避けることが最も重要になります。皮膚炎が酷い場合には皮膚科でパッチテストを受けて、どの物質に反応するかを確認し、それを含まない製品や素材を選びます。

製品の成分確認

 化粧品、洗剤、衣類などの製品の成分を確認し、アレルゲンが含まれていないか確認します。特に香料や保存料、金属(ニッケルなど)に注意が必要です。

代替品の使用

 アレルゲンを含まない製品や素材を選ぶようにします。たとえば、金属アレルギーがある場合は時計やアクセサリーなど、自分にとってのアレルゲンを含まない素材で作られたものを選ぶ必要があります。

皮膚の保護とケア

 アレルゲンに触れる可能性がある作業や活動を行う際には、適切な保護具(手袋など)を使用し、皮膚のバリア機能を保つために保湿剤を使用して乾燥を防ぎます。乾燥した皮膚はアレルゲンに対して敏感になりやすいです。

刺激性接触皮膚炎

刺激物の回避

 皮膚に直接触れる化学物質や強い洗剤、漂白剤などの刺激物を避けることが重要です。作業や生活環境で使用する製品に注意を払い、刺激の少ない製品を選びます。

適切な製品の使用と保護具の使用

 中性の洗剤や低刺激性のスキンケア製品を使用し、化学物質や刺激物に接触する際には適切な保護具(手袋など)を使用します。

皮膚の保湿と適切な洗浄

 皮膚のバリア機能を保つために保湿剤を使用し、乾燥を防ぎます。また、手や皮膚を洗浄後はしっかりと乾燥させることで、刺激を軽減します。

接触時間の短縮

 湿気や水分に長時間触れないようにし、必要に応じて皮膚を乾燥させるための対策を講じます。

皮膚の状態を確認

 刺激を受けやすい部分や皮膚の状態を定期的に確認し、問題がある場合は皮膚科医に相談して適切な対策を講じます。

接触性皮膚炎の対策と治療法

 接触性皮膚炎の対策や治療法は、個々の状態に応じて異なります。以下に代表的な治療法を紹介します。詳細は皮膚科などの専門医にご相談下さい。

アレルギー性接触皮膚炎

 アレルギー性接触皮膚炎の治療には、専門医による適切な診断と治療が不可欠です。治療はアレルゲンの回避が最も重要です。特定されたアレルゲンを含む製品や素材を完全に避けることで、症状の再発を防ぎます。症状が酷い場合には速やかに病院やクリニックに受診し、医師の診察を受けることが肝要です。治療としては、局所用ステロイドクリームや軟膏により炎症やかゆみを軽減したり、かゆみを緩和するために抗ヒスタミン薬が処方されることもあります。皮膚のバリア機能を保つために、保湿剤を使用することも勧められます。

刺激性接触皮膚炎

 刺激性接触皮膚炎の治療は、専門医による適切な診断と治療が重要です。刺激物が特定できたら、患者はその物質や製品との接触を避けるように指導されます。治療には、やはり炎症を抑えるために局所用ステロイドクリームや軟膏が処方されることがあります。これにより、炎症やかゆみが軽減されます。また、皮膚の保護とバリア機能の回復のために、保湿剤の使用が推奨されます。保湿剤は、皮膚の乾燥を防ぎ、外的刺激から皮膚を守ります。さらに、食器洗い洗剤による皮膚炎であればグローブなどを使用し、皮膚を保護することが推奨されます。刺激性の強い洗剤や化学薬品は避けるべきです。皮膚の状態や症状が改善しない場合や治療の効果が不十分な場合には、定期的に医師の診察を受け、治療方針の見直しや追加のアドバイスを受けることが重要です。

まとめ

 接触性皮膚炎は、日常生活で接触するさまざまな物質によって引き起こされる皮膚の炎症で、薄毛にも影響を与える可能性があります。もし接触性皮膚炎が発生した場合は、早期に対処し、必要に応じて医師の診察を受けることが重要です。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックでは、AGA・薄毛治療専門のクリニックです。経験豊富な医師が個別にお悩みをじっくりとお伺いさせて頂き、一緒にAGA・薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師
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