FUT植毛とFUE植毛どちらが良いのか【医師監修】

 植毛には現在、大きくFUT植毛とFUE植毛の2つの方法があります。植毛をご検討される際にこの2つの植毛法のどちらが良いのかで悩まれる方もいらっしゃるかと思います。結論から言えば、「ご自身の体質や症状、ご希望等のケースによって使い分けるべき」となります。そこで今回は、FUT植毛とFUE植毛のどちらが良いのかについて、詳しくご紹介をさせて頂こうと思います。植毛を検討されている方の参考になりましたら幸いです。

FUT植毛とFUE植毛の特徴

 まずは、FUT植毛とFUE植毛について、其々の簡単な紹介と特徴をみてみましょう。どちらもメリットとデメリット、注意点などがございますので、代表的なものをまとめさせて頂きました。詳細は相談の際などにご確認ください。

FUT植毛

 FUT(Follicular Unit Transplantation)は、主に大量のドナーを必要とする植毛に向いている方法です。ドナーエリア(後頭部や側頭部)からストリップ(帯状にした頭皮の組織)を切り取り、そこから毛包単位に移植する株を切り分けてから植毛する手法で、FUSS(Follicular Unit Strip Surgery:ストリップ法)と呼ばれることもあります。

メリット

  • 生涯に採取出来るドナー株数が多い(約5,000~7,000株程度)
  • 高い有効採取率(双眼実体顕微鏡を使って手作業で切り分け)
  • コスト(FUEよりも安いことが多いです)
  • 狭いバリカン幅(手術後に残るバリカン幅は、縫合部の上下5mmくらい、合計1cm程度のバリカン幅)

デメリット

  • メスで頭皮を切る手術である(人によっては心理的なハードルが高いと感じる方がいらっしゃいます)
  • 後頭部に横に走る細い線状の縫合痕が1本残る(髪を伸ばす事で隠せます)
  • 頭皮の硬い方は採取できるドナー株数が限られる
  • 採取予定の株数から実際の株数が上下する(帯状にドナーを塊として採取して、取ってから株分けして数を数えるので、例えば1500株採取を予定した場合でも、「ちょうど1500株採れる」ということはまずありません。若干の誤差があります)

その他の留意点

  • ドナー採取して縫合した痕は、基本的には1本の線状痕だが、植毛回数によっては2本になったり傷痕が広がる可能性がある
  • ドナー採取後の縫合の際にトリコフィティック縫合法を用いる事によって、縫合痕を目立ち難くする事ができる
  • 体質によっては傷痕が太く治ることがある

FUE植毛

 FUE(Follicular Unit Extraction)は、眉毛、ヒゲや傷痕など、比較的少量のドナー株で充分な植毛に向いている方法です。また、頭皮が硬くて可動性が少ない方や、それ以前に施行したFUTの縫合痕を修正したい場合にもFUEは適した方法です。

メリット

  • 傷跡が目立ちにくい(ひとつの傷痕は約1mm前後のサイズの白い斑点状の傷。ただし採取し過ぎると髪の密度低下に繋がり大きなデメリットとなります)
  • 頭皮が硬く可動性が少ない方でも採取可能
  • 手術後の回復期間が比較的短い

デメリット

  • 生涯に採取できるドナー株数はFUTの約半分(約2,000~3,000株程度)
  • 有効採取率は医師の経験や技量に左右される
  • コスト、手術時間(FUTよりも高いことが多く、また株数の多い手術の場合は手術時間が長い傾向があります)
  • 広いバリカン幅(採取する部分を広くバリカンで刈る必要がある。刈らない方法を採用する所もありますが、費用が高額になる傾向があります)

その他の留意点

  • ドナー採取しすぎると、採取部の密度が低くなり、スカスカになってしまう(傷痕も目立つ)
  • 採取数が過多だと、通常のドナー採取範囲を超えて採取されてしまう(通常はAGAの影響を受けにくい部分からのみドナー採取するが、それで必要な株数がまかなえない場合は他の部分からドナー採取されることがある)
  • 技術不足だと毛根切断率が上がり有効採取率が下がってしまったり、傷同士が繋がってしまう場合がある

FUT植毛に向いている人、FUE植毛に向いている人

 FUT植毛とFUE植毛それぞれに向いている人はどの様な方なのかを見ていきましょう。ここで挙げているのはあくまでも目安で、個々の体質や状況、ご希望、さらにはクリニックの経験・実績などによって異なる場合がございますので、実際にはカウンセリングの際に医師に詳細をご相談下さい。

FUT植毛に向いている人

広い範囲の植毛を希望する方(当院での推奨は1,000株以上)

 生涯で採取できる株数が約5,000~7,000株程度とFUEの2倍程度あるため、FUEよりも広い範囲や進行するAGAにも対応できる可能性があります。

採取株を出来るだけ有効活用したい方

 帯状に切り出したドナー部分から、双眼実体顕微鏡を使って手作業で切り分けていくため、ほぼ全ての株を有効活用する事ができます。

費用を抑えたい方

 FUTはFUEに比べると、およそ半分~2/3程度の金額で実施する事ができます。(同株数の場合)

手術時間を出来るだけ短くしたい方

 株数が多い場合はFUTの方がFUEよりも手術時間が短い傾向にあります。

バリカン幅を狭くしたい方

 採取部分をバリカンで刈りますが、採取後に縫い合わせる為、バリカン幅はFUEに比べると狭くなります(術直後に残るバリカン幅はだいたい1cmくらいです)。1本の線状の縫合痕が残りますが、トリコフィティック縫合法で目立ち難くしたり、FUEによる傷修正やSMPなどで更に目立ち難くさせる事ができます。

FUE植毛に向いている人

狭い範囲の植毛を希望する方(当院での推奨は1,000株未満)

 傷痕、眉毛、ひげ、局所的なつむじや生え際、など狭い範囲の植毛に向いています。

メスを用いた手術を希望しない方

 特殊な器具を使って、1つ1つの毛根をくり抜いていく方法ですので、メスで切除するわけではありません。

傷痕を出来るだけ目立たせたくない方

 1つのくり抜き痕は1mm程度の米粒大となりますので、ドナー範囲内で散らして採取すれば1~2cm程度の髪で隠す事ができます。※但し採取し過ぎると、採取部の密度低下が起こりますし、FUTよりも傷面積が大きくなりますので注意が必要です)

頭皮が硬く可動性が少ない方

 ドナー採取範囲内をまばらに間引いていく方法のため、頭皮の稼働が少ない方に向いています。

手術後の回復期間を出来るだけ短くしたい方

 FUTに比べると手術後の回復期間は短い傾向にあります。

FUT植毛に対応できるクリニックが少ない理由

 現在、FUT植毛を実施できるクリニックは非常に少なく、新しいクリニックはFUE植毛のみを行う所がほとんどです。なぜFUT植毛は取り扱うクリニックが少ないのでしょうか?簡潔に申し上げますと、「FUE植毛よりも手間と人材育成とノウハウが必要」だからだと思います。
 FUE植毛と違って、FUT植毛の場合はドナーを帯状に採取して、株単位に切り分けるという工程が必要となります。この工程は外科的な経験が豊富にある医師が在籍していないとできない治療である事に加えて、FUT植毛に習熟した看護師など医療スタッフの確保や育成も必要になりますし、工程によってはFUE植毛よりも関わる人数を増やして対応する必要があります。その他にもFUE植毛には無いノウハウを必要とする場合がありますので、それら全てを一定水準以上で揃えたチームを組んでご提供し続けなければなりません。つまり、上記の条件を満たす事は非常に難しいため、株分け工程がなく、くり抜いた時点で移植株がほぼ出来ているFUE植毛の方が、新しく始めやすい手術方法である、ということが言えると思います。
 なお、誤解ないよう申し添えておきますと、決して「FUE植毛の方がFUT植毛より簡単である」というわけではありません。FUE植毛は医師個人の経験や技量に左右される傾向が強いのに対し、FUT植毛はチームの総合力が求められるという違いがあるということです。

まとめ

 FUT植毛とFUE植毛どちらが良いのかについてご紹介して参りましたが、いかがでしたでしょうか。どちらの方法も一長一短がありますので、体質や状況、ご希望によって使い分けることが重要となります。FUT植毛とFUE植毛を実施するクリニックによっても大きく結果が変わるため、必ず相談の際には症例(ドナー採取部の傷痕も)を確認しておくようにしましょう。また特にAGAの場合は、長期的に症状が進行する可能性も考えて手術を行う必要がありますので、2回目以降の手術も受けられるのかを確認しておいた方が良いでしょう。
 いずれの方法にしても注意しておくべき点は、複数のクリニックで話を聞いて、植毛について理解を深める事です。もしどちらの方法で実施したら良いのか迷われていたり、解らない場合は、まずFUE植毛とFUT植毛の両方を取り扱っているクリニックに相談してみる事をお勧めいたします。実際にFUE植毛とFUT植毛について経験に基いたメリット・デメリット、副作用やリスクなどの話を聞くことができます。その上で極力複数のクリニックにて相談をして、植毛についての知識を深めた上で、ご自身に合うと思われるクリニックで植毛をなさるのがよろしいかと思います。
 手前味噌で恐縮ですが、1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院として、国内でも数少ないFUT植毛とFUE植毛の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、FUT・FUEそれぞれのメリット・デメリット、副作用、リスク等を、経験豊富な医師が実際の経験に基いて説明させて頂き、直接お悩みを承った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

自毛植毛・AGA治療 |紀尾井町クリニック 
医師 中島 陽太(国際毛髪外科学会 会員)