毛根についている白い塊について【医師監修】

髪の毛が抜けた時、その根元にある毛根に白い塊がついているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。実はこの白い塊は、毛根や頭皮の健康状態を示す重要なサインのひとつなのです。本コラムでは、毛根についた白い塊の正体や、その原因、そして予防や改善方法について紹介していきます。
- 1. 毛根についた白い塊の正体とは?
- 1.1. 毛根鞘(もうこんしょう)
- 1.1.1. 内毛根鞘
- 1.1.2. 外毛根鞘
- 1.2. 皮脂腺からの分泌物
- 1.3. ケラチンや角質
- 2. 毛根に白い塊がつく原因
- 2.1. 毛周期(ヘアサイクル)
- 2.2. 外的な力や摩擦
- 2.3. 皮脂や老廃物の蓄積
- 2.4. 乾燥や頭皮の状態
- 3. 抜け毛の毛根に白い塊が多い場合の注意点
- 3.1. 脂漏性皮膚炎の可能性
- 4. 抜け毛に白い塊がない場合の注意点
- 4.1. AGAと関連している可能性
- 5. 抜け毛の毛根に白い塊がついた場合の対処法
- 5.1. 頭皮の清潔を保つ
- 5.2. 頭皮マッサージ
- 5.3. バランスの取れた食生活
- 5.4. ストレス管理
- 5.5. 医師へ相談
- 6. まとめ
毛根についた白い塊の正体とは?
まず、髪の毛の構造について簡単に説明します。髪の毛は大きく「毛幹」と「毛根」に分かれています。毛幹は頭皮から外に出ている部分であり、毛根は頭皮の中に埋まっている部分です。毛根は「毛包」に包まれており、毛根の先端には「毛球」と呼ばれる球状の部分があり、ここで髪の毛が成長します。
抜け毛の毛根についた白い塊は、主に以下の成分で構成されています。
毛根鞘(もうこんしょう)
毛根についた白い塊は、下記の内毛根鞘と外毛根鞘の残留物から形成されます。髪が抜ける過程で、内毛根鞘と外毛根鞘の一部が毛根に付着して頭皮から離れ、白く見える物質として残ります。この現象は、髪の成長サイクルにおいて自然な部分であり、髪が成長し、やがて抜け落ちる際に見られる正常な現象です。
内毛根鞘
内毛根鞘は、毛根を内側から取り囲む層で、髪の成長を支える役割を果たしています。内毛根鞘は、毛根のすぐ外側に位置し、髪の成長が進むにつれて分解されていきます。髪の毛が成長し、やがて抜け落ちる際に、この内毛根鞘の一部が毛根に付着したままとなり、白い塊として観察されることがあります。
外毛根鞘
外毛根鞘は、毛包の外側に位置し、内毛根鞘の外側を覆う層です。この層は、毛根を外的なダメージから保護し、髪の毛が成長する際に周囲の組織に固定し、毛根を安定させる役割があります。髪が抜けるときに、外毛根鞘の一部が毛根に付着して一緒に抜け落ちることがあり、これも白い塊として確認されることがあります。
皮脂腺からの分泌物
頭皮の皮脂腺が分泌する皮脂が固まったものです。皮脂は頭皮や髪の潤いを保つ役割を持っていますが、過剰に分泌されると毛根に付着し、粘り気を伴う白い塊となることがあります。
ケラチンや角質
毛髪や皮膚の主成分であるケラチンや、頭皮の角質が剥がれ落ちたものが固まったものです。
これらの要素が混ざり合って白い塊を形成します。

毛根に白い塊がつく原因
毛根に白い塊がつく原因は様々ですが、以下の要因が主な原因とされています。
毛周期(ヘアサイクル)
毛根に白い塊がつくのは、髪の毛が成長し、抜ける過程で起こる正常な現象です。髪の毛は「成長期」、「退行期」、「休止期」の3つの段階を経て成長します。休止期は髪の毛が生え変わるために脱毛をする時期になりますが、この時に内毛根鞘や外毛根鞘が毛根に付着して抜けることがあります。この時点で、内毛根鞘や外毛根鞘の一部がまだ毛根にしっかりと結びついているため、白い塊として見えるのです。これらの毛根鞘は、髪の成長を保護・支援する役割を果たしており、毛包から毛髪が抜け落ちるときに一緒に引き離されることがあります。特に、内毛根鞘は髪が頭皮から抜けるときに付着している場合が多くあります。
外的な力や摩擦
ブラッシング、髪を引っ張る、または強い摩擦が加わると、髪の毛が抜けることがあります。この際、内毛根鞘や外毛根鞘が通常よりも多く毛根に残ることがあります。このような外的な力が加わることで、毛根に白い塊が付着したまま抜けてしまうことが多くなる可能性があります。
皮脂や老廃物の蓄積
頭皮の皮脂腺は自然に油分を分泌しますが、これが過剰になると毛穴が詰まりやすくなります。さらに、頭皮に溜まった老廃物や汚れが混ざることで、毛根に付着した内毛根鞘や外毛根鞘とともに残りやすくなります。これにより、白い塊が毛根に付着する現象が起こります。この状態は、特に頭皮のケアが不十分な場合や皮脂分泌が過剰な場合に顕著です。
乾燥や頭皮の状態
乾燥した頭皮はバリア機能が低下し、フケや角質が増加します。これにより、内毛根鞘や外毛根鞘に付着した状態で、髪が抜ける際に白い塊として毛根に残ることがあります。
抜け毛の毛根に白い塊が多い場合の注意点
抜けた毛の毛根に白い塊がついている状態は、通常問題は無いのですが、明らかに量が多かったり、その状態が続く場合は、頭皮や髪の健康状態に何らかの問題がある可能性があります。このような場合は速やかに、専門の医師や皮膚科医に相談することをおすすめします。
脂漏性皮膚炎の可能性
白い塊が大量に見られ、それが皮脂の場合、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)の可能性があります。これは、皮脂が過剰に分泌され、頭皮が炎症を起こす状態です。放置すると、頭皮のかゆみや赤み、フケの増加などが見られ、炎症が酷くなると脱毛に繋がる事もあるため、早めの対処が必要です。
抜け毛に白い塊がない場合の注意点
AGAと関連している可能性
抜け毛に白い塊(毛根鞘)が付いていない場合には、いくつかの原因が考えられます。例えば、抜けた毛が途中で切れて付着していない場合で、これには病的な意義はありません。一方、毛周期が乱れて抜け毛が起きた場合、毛根鞘がしっかり発達しない状態で抜けてしまうため、抜け毛に毛根鞘が見られない(あるいは未成熟な状態で抜けてしまう)ことがあります。これにはAGA(男性型脱毛症)で成長期が短縮して抜け毛が起きる場合や、円形脱毛症など免疫の異常で突然抜け毛が起きた場合、化学療法などで成長期に突然抜け毛が起きた場合などが含まれます。抜け毛の一部に毛根鞘が付着していない場合は特に心配はいりませんが、継続的に大量の抜け毛に毛根鞘が付着していない場合には注意が必要です。
抜け毛の毛根に白い塊がついた場合の対処法
通常、毛根に白い塊がついていることは、自然な事であり何か問題をはらんでいるわけではありませんが、毛根の白い塊が毛根鞘以外の皮脂や老廃物、フケなどの場合は頭皮環境が悪化している可能性があるため、それらの可能性がある場合は、以下の対処法を試してみると良いでしょう。
頭皮の清潔を保つ
清潔な頭皮は健康な髪の成長を促進し、毛根鞘以外の白い塊ができるのを防ぎます。適切なシャンプーを使用し、過剰な皮脂や汚れ、洗い残しなどをしっかりと除去することが重要です。皮脂やフケが毛穴に溜まると、毛根に白い塊が残りやすくなるため、定期的に洗髪し、頭皮を清潔に保つことが重要です。洗髪後は頭皮を完全に乾かし、湿気を残さないようにすることで、頭皮環境が整い、白い塊の原因となる角質や皮脂の蓄積を防ぐことが期待できます。
頭皮マッサージ
頭皮マッサージを行うことで、血行を促進し、頭皮の健康を保つことができます。頭皮の血行が良くなると、皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まりを防ぐ効果が期待できます。指の腹を使って優しく上下左右にマッサージすることで、毛根周りの汚れを効果的に除去することが期待できます。
バランスの取れた食生活
例えば、ビタミンB群は髪の成長をサポートし、ビタミンEは髪や頭皮の健康を守る抗酸化作用があります。また、亜鉛や鉄分は毛根に必要な栄養素を供給し、オメガ3脂肪酸は皮脂のバランスを保ちます。これらの栄養素を含む食事を心掛けることで、髪と頭皮が健康に保たれ、白い塊の原因となる皮脂や角質の過剰蓄積を防ぐことが期待できます。
ストレス管理
ストレスが溜まると、皮脂の分泌が増えたり、血流が悪くなったりして、結果として白い塊が毛根に付着しやすくなります。ストレスを軽減するためには、自身に合うリラクゼーション法や運動、趣味等の時間を持つことが効果的です。また、質の良い睡眠を確保することも、ストレスを減らし、髪の健康を保つために大切です。ストレス管理を行うことで、頭皮の状態が改善され、白い塊の発生を抑えることが期待できます。
医師へ相談
抜けた毛根の白い塊が頻繁に見られる場合、単なる皮脂や老廃物の蓄積だけでなく、頭皮の健康に問題がある可能性があります。普段と違い異常を感じた際は、速やかに専門の医師に相談をしましょう。例えば、皮膚科や毛髪専門医は、白い塊の原因を特定し、必要に応じてシャンプーや治療薬の処方、生活習慣の改善指導を行います。また、頭皮に炎症や感染症がある場合には、早期に治療を受けることが薄毛の進行を防ぐためにも重要となります。医師のアドバイスに従い、頭皮ケアを見直すことで、毛根に異常な白い塊が付着することを防ぎ、髪と頭皮の健康を守ることが期待できます。
まとめ
毛根についた白い塊は、頭皮や髪の健康状態を反映する重要なサインです。日常的なヘアケアの見直しや、バランスの取れた食生活、ストレス管理を行うことで、頭皮の健康を維持して、皮脂や老廃物、フケなどが付着する白い塊の発生を防ぐことが期待できます。もし異常を感じた場合は、速やかに専門家に相談するようにしましょう。
1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックでは、AGA治療薬は勿論、国内でも数少ないFUT法とFUE法の両植毛法に対応できる、AGA治療専門のクリニックです。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。
監修医師プロフィール
東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら)
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太
