フケと薄毛の関係は? 原因や予防、対策・治療法を紹介【医師監修】

フケと薄毛の関係は? 原因や予防、対策・治療法を紹介

 フケと薄毛は多くの人々が直面する可能性のある頭皮と髪の問題です。これらの問題が同時に発生することは珍しくありませんが、両者がどのように関連しているのかを理解することは、適切な対策を講じるために重要です。本コラムでは、フケと薄毛の関係、原因、予防、対策および治療法について紹介します。

フケとは?

 そもそも「フケ」とは何なのでしょうか?まずはフケを理解していきましょう。フケは、頭皮の角質層が過剰に剥がれ落ちたもので、白や黄色の細かい皮膚片として現れます。フケは通常、軽度のものから重度のものまで幅広く、その原因はさまざまです。フケは大きく分けて2種類に分けられます。

乾燥性フケ

 乾燥性フケは、頭皮の乾燥によって生じるフケの一種です。主に冬の乾燥した気候や過度なシャンプーによって頭皮の皮脂が奪われることが原因とされます。白色または灰色の細かくカサカサとしたフケが特徴で、髪や肩に落ちやすく、払うとすぐに散ってしまいます。かゆみを伴うことも多く、掻くことで頭皮がさらに乾燥したり傷ついたりする恐れがあります。

脂性フケ

 脂性フケは、頭皮の皮脂分泌が過剰になることで発生するタイプのフケです。黄色くて油っぽく、べたつきがあるのが特徴で、髪に絡まりやすい傾向があります。かゆみや赤みを伴うことが多く、症状が悪化すると脂漏性皮膚炎に発展する可能性もあります。

フケの原因

乾燥性フケの原因

過度の洗髪

 頻繁にシャンプーを用いた洗髪を行うと、頭皮の自然な皮脂が過剰に取り除かれてしまいます。皮脂は頭皮を保護し、潤いを保つ役割を果たしているため、過度に洗うことで頭皮が乾燥しやすくなります。この乾燥は皮膚のバリア機能を損ない、かゆみや赤みを引き起こすことがあります。乾燥した頭皮では、皮膚が過剰に剥がれ落ちることがあり、これがフケとして現れます。

乾燥した環境

 乾燥した環境、特に冬季や、除湿された湿度の低い室内では、空気中の水分が少なくなり、頭皮も乾燥しやすくなります。頭皮の乾燥が進むと、自然な皮脂が減少し、頭皮の保護バリアが損なわれます。これにより皮膚がカサつき、かゆみが生じ、皮膚の剥がれ落ちが増加します。結果として、乾燥性フケが発生します。さらに、乾燥した環境では頭皮の血行が悪化しやすく、栄養や水分の供給が不足することで、フケの症状が悪化する可能性もあります。

不適切なヘアケア製品

 強力な洗浄成分やアルコールを含むシャンプーは、頭皮の自然な皮脂を過剰に取り除き、乾燥を引き起こすことがあります。これにより、頭皮の保護バリアが損なわれ、乾燥やかゆみが生じやすくなります。また、過剰に乾燥させる成分が含まれていると、頭皮の水分保持能力が低下し、フケの原因となる皮膚の剥がれが増えることがあります。さらに、ヘアケア製品に含まれる合成香料や着色料などの刺激成分も、頭皮の乾燥や炎症を引き起こすとがあります。

年齢

 年齢を重ねると、皮脂腺の機能が低下し、自然な皮脂の分泌が減少します。皮脂は頭皮を保護し、潤いを保つ役割があるため、分泌量が減ると頭皮が乾燥しやすくなります。この乾燥は頭皮のバリア機能を損ない、かゆみや皮膚の剥がれが増加し、乾燥性フケが発生する原因となります。また、加齢によって頭皮の血行が悪化し、栄養や水分の供給が不足することも、乾燥性フケの悪化につながります。

ストレス

 ストレスが体にかかると、ホルモンバランスが乱れ、皮脂腺の働きに影響を与えることがあります。このホルモンバランスの変化により、皮脂の分泌が減少し、頭皮が乾燥しやすくなることがあります。乾燥した頭皮はバリア機能が損なわれ、皮膚がかゆくなり、フケが増えることがあります。さらに、ストレスが過剰な皮膚の剥がれを引き起こし、乾燥性フケの症状を悪化させることもあります。

栄養不足

 体に必要な栄養素が不足すると、頭皮の健康が損なわれます。特に、ビタミンAやビタミンB群、亜鉛、オメガ3脂肪酸などが不足すると、皮膚の保湿機能が低下し、乾燥しやすくなります。ビタミンAは皮膚の健康を保ち、ビタミンB群は皮膚の新陳代謝を助け、亜鉛は皮膚の再生を促進します。オメガ3脂肪酸は皮膚の水分保持を助ける役割があります。これらの栄養素が不足すると、頭皮の乾燥が進み、フケが増えることがあります。

脂性フケの原因

過剰な皮脂分泌

 皮脂腺が活発に働くことで皮脂の分泌が増加すると、頭皮がべたつきやすくなります。過剰な皮脂は毛穴に詰まりやすく、これが頭皮の不健康な環境を作り出します。皮脂が毛穴に溜まると、皮膚の細胞が正常に新陳代謝を行うのが難しくなり、古い皮膚が剥がれ落ちてフケとして現れることがあります。また、過剰な皮脂がマラセチア菌などの微生物の増殖を助け、これがさらに炎症を引き起こし、脂性フケの悪化につながります。なお、持続する場合は脂漏性皮膚炎の可能性があります。

ホルモンバランスの乱れ

 ホルモンバランスの変化は皮脂腺の活動に直接影響を与えます。特に、思春期や妊娠、更年期などのホルモン変動が大きい時期には、男性ホルモンや女性ホルモンのバランスが崩れ、皮脂分泌が増加します。また、ストレスによって副腎から分泌されるストレスホルモン(コルチゾール)が皮脂腺を刺激し、皮脂の過剰分泌を引き起こします。ホルモンバランスが乱れると、皮脂腺が活発になり、頭皮の油分が増加して、毛穴が詰まりやすくなり、脂性フケが発生する場合があります。

マラセチア菌の増殖

 マラセチア菌は頭皮にいる真菌(カビ)で、誰の頭皮にも存在する常在菌です。マラセチア菌は皮脂腺が分泌する皮脂を栄養源にして成長します。皮脂が過剰に分泌されると、この菌の繁殖が促進され、菌が頭皮に増殖します。マラセチア菌が皮脂を分解する過程で、皮膚の炎症を引き起こす脂肪酸を生成し、これが頭皮の炎症やかゆみを引き起こします。炎症により、頭皮の皮膚が早く剥がれ落ちるため、脂性フケが増えることになります。また、菌の活動により、皮膚のバリア機能が損なわれ、さらにフケが悪化することがあります。

遺伝的要因

 皮脂腺の活動は遺伝的に決まる部分があり、遺伝的に皮脂腺が過剰に活発な体質を持つ人は、皮脂分泌が多くなる傾向があります。この体質は、親から子へと受け継がれることがあり、家族内で脂性フケの問題が見られる場合もあります。遺伝的要因により皮脂腺の数や大きさ、皮脂の分泌量が異なるため、皮脂分泌の多さが脂性フケの発生に影響を与えます。遺伝的な体質による皮脂分泌の増加は、皮膚の油分が過剰になり、毛穴が詰まりやすくなり、結果として脂性フケが発生しやすくなります。

頭皮環境

 湿度が高く、暑い気候では皮脂の分泌が増加します。また、汗をかくことで皮脂と混ざり合い、脂性フケが発生しやすくなります。また、長時間の整髪料も頭皮環境を悪化させる可能性があります。また、帽子やヘアピース(カツラ)の長時間の装用も頭皮環境を悪化させる要因となります(特に夏場)。

ストレス

 ストレスがかかると、体内でホルモンバランスが乱れ、特に副腎から分泌されるコルチゾールが増加します。このホルモンの変化が皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌量が増えることで、頭皮がべたつきやすくなります。過剰な皮脂は毛穴に詰まりやすく、マラセチア菌の増殖を促進し、脂性フケの発生を悪化させます。慢性的なストレスは、皮脂の分泌を一層活発にすることがあるため、脂性フケが悪化する可能性があります。

食事

 脂質や糖質を多く含む食事は、皮脂の分泌を促進することがあります。特にジャンクフードや揚げ物、甘いものを多く摂取すると、頭皮の皮脂分泌が活発になり、脂性フケの原因となる場合があります。

フケと薄毛の関係

 フケ自体が直接的に薄毛の原因になることは少ないですが、フケが発生することで頭皮環境が悪化し、それが薄毛の一因となることがあります。以下に、その代表例を紹介します。

頭皮の炎症

 フケが多いと、頭皮に炎症が起こりやすくなります。頭皮の炎症は薄毛の発生に深く関わっています。炎症が続くと毛包や毛根にダメージが蓄積され、髪の成長サイクルが乱れます。これにより髪が細く弱くなり、抜け毛が増えて薄毛が進行することがあります。さらに、炎症が原因で頭皮の血行が悪くなると、毛根に必要な栄養や酸素が行き渡らず、髪の健康が損なわれます。重度の炎症では瘢痕が形成され、毛包が破壊されるため、永久に髪が生えなくなる可能性もあります。

毛穴の詰まり

 フケが大量に発生すると、特に脂性フケは皮脂と混ざり合い、毛穴を塞ぐことがあります。毛穴が詰まると、毛根に必要な栄養や酸素が届かず、髪の成長が妨げられます。これにより髪が細くなり、抜け毛が増えることがあります。また、毛穴の詰まりは炎症を引き起こし、炎症が進むと毛包がダメージを受け、脱毛が進行することもあります。

かゆみと掻きむしり

 フケが発生すると、頭皮がかゆくなることがよくあります。このかゆみが不快であるため、掻きむしることが多くなりますが、掻きむしることで頭皮に悪影響を与えることがあります。まず、掻きむしることによって頭皮に小さな傷や裂け目ができ、これが炎症を引き起こします。炎症が続くと、毛包がダメージを受け、毛根の健康が損なわれることがあります。さらに、掻きむしりによって頭皮のバリア機能が破壊され、皮脂やフケの不純物が毛穴に詰まりやすくなります毛穴の詰まりが進むと、髪の成長が阻害され、薄毛が進行することがあります。

フケの予防と対策

 前述のようにフケが薄毛に繋がってしまう可能性もあるので、極力フケを抑える事が薄毛の予防のためにも重要です。代表的な予防策を見てみましょう。もしフケが持続するような場合は、皮膚科に相談に行くようにしましょう。

乾燥性フケの予防と対策

適切なシャンプー選び

 乾燥性フケを防ぐためには、低刺激かつ保湿成分が含まれたシャンプーを選ぶことが効果的です。アルコールや強力な洗浄成分が含まれていないマイルドなシャンプーを使用することで、頭皮の自然な油分を守り、乾燥やかゆみを軽減することができます。適切なシャンプー選びは乾燥性フケの予防に大きな役割を果たします。

洗髪の頻度と温度

 頻繁な洗髪は頭皮の自然な皮脂を過剰に取り除き、乾燥を悪化させることがあります。1日に何度も洗髪するなどの過度な洗浄を避けることが推奨されます。また、洗髪時の水温も重要で、熱すぎるお湯は皮脂を過剰に取り除き、頭皮の乾燥を招く原因になる場合があります。ぬるま湯で洗髪することで、頭皮の保湿を保つことが期待できます。

環境の調整

 特に湿度が低い環境、例えば冬季の乾燥した室内では、頭皮も乾燥しやすくなります。加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つことで、頭皮の乾燥を防ぐことができます。また、長時間の冷暖房の直接的な影響も乾燥を悪化させるため、風通しを良くし、直接的な冷暖房の風を避けることも有効です。

ストレスの管理

 自身に合ったリラックス法や趣味など、ストレス解消法を取り入れて、日々のストレスと上手く付き合うことが大切です。

バランスの取れた食事

 特にビタミンAやビタミンB群、亜鉛やオメガ3脂肪酸など、頭皮の健康に必要な栄養素を含む食品(例:魚、ナッツ、緑黄色野菜)を含めたバランスの良い食事を摂るようにしましょう。

脂性フケの予防と対策

適切なシャンプー選び

 脂性フケの原因となる過剰な皮脂を抑えるためには、油分をしっかりと除去できるシャンプーが効果的です(但し、洗浄力が強すぎるものはNG)。また、シャンプーは適量を使い、頭皮に優しくマッサージしながら泡立てることで、毛穴に詰まった皮脂を効果的に取り除くことができます。すすぎも十分に行い、シャンプーが残らないようにすることが重要です。

洗髪の頻度と温度

 頻繁な洗髪は頭皮の皮脂を過剰に取り除き、皮脂腺がさらに多くの皮脂を分泌する原因になります。そのため、洗髪は極力1日1回程度に留めておきましょう。また、洗髪時の水温も重要で、熱すぎるお湯は皮脂を過剰に除去し、皮脂腺の過剰分泌を促す可能性があります。ぬるま湯での洗髪を心掛けておきましょう。

頭皮環境の管理

 汗は皮脂と混ざりやすく、毛穴を詰まらせる原因となるため、汗をかいた後は速やかに洗い流すことが推奨されます。また、整髪料の使用も注意が必要です。整髪料が毛穴に残ると、皮脂と混ざって毛穴を詰まらせ、脂性フケを悪化させることがあります。整髪料を使用する際は、少量を使い、使用後は丁寧に洗い流すことが重要です。頭皮を清潔に保ち、過剰な皮脂や汗、整髪料の残留物を除去することで、健康な頭皮環境を維持するようにしましょう。

ストレスの管理

 ストレスはホルモンバランスを乱し、皮脂腺の過剰な分泌を引き起こします。これにより、汗や整髪料と混ざり、脂性フケが悪化する可能性があります。リラクゼーションや趣味の時間など、自身に合ったストレス解消法でストレスを軽減させることで、ホルモンバランスを整え、皮脂の過剰分泌を抑えることが期待できます。

バランスの取れた食事

 脂質や糖質が多い食事は皮脂の過剰分泌を促し、汗や整髪料と混ざって脂性フケを悪化させることがあります。栄養バランスの取れた健康的な食事は、皮脂のバランスを整え、皮脂分泌を抑える助けになります。また、野菜や果物を豊富に摂取することで、抗酸化作用や肌の健康をサポートし、頭皮の状態を改善することが期待できます。脂質や糖質を多く含む食事はなるべく控えて、栄養バランスの良い食事を摂るようにしましょう。

医師の診察

 フケがひどく、持続するような場合は、皮膚科医に相談し、適切な治療を受けるようにましょう。

まとめ

 フケと薄毛は、頭皮と髪の健康に関連する問題のひとつです。フケは頭皮環境を悪化させ、薄毛の一因となることがあります。つまりフケに対して適切な予防策を講じることで、フケを要因とした薄毛の予防にも繋がります。栄養バランスの取れた食事、適切なヘアケア、ストレス管理など、全体的なアプローチが重要です。さらに、症状が重い場合は専門医の診察を受け、適切な治療を受けることが健康な頭皮と髪を保つために欠かせません。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックでは、フィナステリドデュタステリドミノキシジルといったAGA治療薬は勿論、国内でも数少ないFUT植毛とFUE植毛の両方に対応できる、AGA治療専門のクリニックです。経験豊富な医師が個別にお悩みをじっくりとお伺いさせて頂き、一緒にAGA・薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師