AGA(男性型脱毛症)とは?原因と予防、対策・治療法を紹介【医師監修】
AGA(男性型脱毛症)は男性の薄毛の主な原因として知られております。このAGAについて、原因をしっかり理解し、どのような予防法があるのか、どんな対策・治療法があるのかを知る事は、AGAによる薄毛を治療する上において非常に重要です。「薄毛について」の記事と一部似ているところもあるかとは思いますが、今回はよりAGAについて知って頂くために詳しくご紹介させて頂きます。
それでは、まずはAGA(男性型脱毛症)とは何かからみていきましょう。
- 1. AGAとは
- 1.1. AGAの進行パターン
- 1.1.1. ステージI
- 1.1.2. ステージII
- 1.1.3. ステージII vertex型
- 1.1.4. ステージIII
- 1.1.5. ステージIII vertex型
- 1.1.6. ステージIV
- 1.1.7. ステージV
- 1.1.8. ステージVI
- 1.1.9. ステージVII
- 2. AGA(男性型脱毛症)の原因
- 3. AGA(男性型脱毛症)の予防
- 3.1. 生活習慣の改善
- 4. ストレスの管理
- 5. ヘアケア
- 6. AGA(男性型脱毛症)の対策・治療法
- 6.1. 医師の診断
- 6.2. 医薬品
- 6.2.1. ミノキシジル(外用)
- 6.2.2. フィナステリド(内服)
- 6.2.3. デュタステリド
- 6.3. 植毛(自毛植毛)
- 6.4. その他
- 7. まとめ
AGAとは
AGAは男性型脱毛症を意味するAndrogenetic Alopeciaの略称で、男性の薄毛の原因において最も多い脱毛症です。なお、女性にもAGAは存在し、FAGA(Female Androgenetic Alopecia:女性男性型脱毛症)と呼ばれています(ただし発生機序は男性と全く同じではないと考えられており、こちらははっきり分かっていないことも多いです)。AGAは頭皮の特定の部位から毛髪の薄毛が進行することが特徴で、男性の場合、額の生え際や頭頂部で薄くなることが多いですが、女性の場合は髪の分け目が広がる(薄くなる)、また全体的に薄くなってボリュームダウンするような傾向があります。AGA発症後は加齢とともに進行し、より広範囲に広がる可能性があります。AGAやFAGAは薄毛の原因となる脱毛症のひとつであり、AGA治療薬や植毛(自毛植毛)、LEDおよび低出力レーザー照射など様々な治療法があります。
AGAの進行パターン
AGAは様々な進行パターンがあります。「薄毛について」の記事では、大きく3パターンご紹介させて頂きましたが、今回はより詳しく9つのパターンで紹介させて頂きます。AGAがどの程度進行しているかをパターン別に分類する方法として、日本でも広く活用されているハミルトン・ノーウッド分類というものがございます。この分類は、男性の脱毛症の進行度を簡潔に表現するために広く使用されています。
ステージI
通常、この段階では脱毛の明らかなサインは見られません。正常な髪の成長が維持されています。
ステージII
額の生え際がわずかに後退し始め、初期の薄毛の兆候が現れます。
ステージII vertex型
額の生え際がわずかに後退し始め、かつ頭頂部の薄毛がO字型に進行している状態です。
ステージIII
額の生え際の後退が進行し、薄毛が目立ち始めます。
ステージIII vertex型
額の生え際の後退が進行し、かつ頭頂部の薄毛もO字型に進行した状態です。
ステージIV
額の生え際がより後退し、頭頂部の薄毛も目立つようになります。額と頭頂部の薄毛の間に残された髪が残る部分が細くなっていきます。
ステージV
額の生え際と頭頂部の薄毛がより広がり、残された髪の範囲がますます少なく(細く)なります。
ステージVI
額の生え際と頭頂部の薄毛がより広がり、残された髪の範囲が更に少なく(細く)なります。髪の量がかなり減少して、ほぼ後頭部と側頭部を残すのみとなります。
ステージVII
額の生え際と頭頂部の髪がほとんど残らず、両方の領域が連結して広がります。残された髪は側頭部や後頭部に限られる状態となります。
上記をまとめると、AGAの進行パターンとしては
1)生え際から徐々に薄毛が進行していく
2)頭頂部からO字状に薄毛が進行していく
3)その両方
であることが多いです。
AGA(男性型脱毛症)の原因
AGA(男性型脱毛症:Androgenetic Alopecia)は、主に精巣で産生されている男性ホルモンであるテストステロンが血液中に流れ、このうち毛包に運ばれたテストステロンが、5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素の働きでジヒドロテストステロン(以下DHT)という物質に変換されます。このDHTは毛包に分布する受容体に付着する力が非常に強く、またその効果も強力なため、テストステロンを押しのけてアンドロゲン受容体に作用します。そしてDHTが結合したアンドロゲン受容体は髪の毛の周期を早めてしまい、太く成長しきる前に抜けてまた産毛に生え変わるサイクルへと変えてしまいます。つまり、ヘアサイクルが短くなって、髪の毛が太く成長しきる前に抜けてしまい、そこに新たに産毛が生えてきて、またすぐ抜けてしまうという状態になっていきます。この状態になった部位は太い毛が産毛へ置き変わっていくため、頭皮がだんだんと目立つようになってきて薄毛状態になってしまうのです。これがAGA(男性型脱毛症)の主な原因と考えられています。
なお、5α還元酵素はⅠ型、Ⅱ型に分かれており、頭皮の毛包により多く分布しているのはⅡ型の方です(厳密にはその他のタイプもありますが、割合が非常に少ないためここでは無視します)。また後述しますが、AGA治療薬のうちフィナステリドとデュタステリドは、この5α還元酵素を阻害する作用があり、フィナステリドはⅡ型のみを阻害し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。こう聞くと何となく、「デュタステリドはフィナステリドの2倍効果がありそうだ」とイメージされるかもしれませんが、実際にはⅡ型の方が頭皮の毛包に多く分布しているため、そこまでの大きな差ではありません。
また、これら成分の感度や分泌量などは遺伝による影響が大きく、そのため薄毛は遺伝が原因というイメージが強くなっています。ただし、血縁者に薄毛の方がいらしても、必ず自身も薄毛になるとは限りません。
AGA(男性型脱毛症)の予防
AGAの予防として、遺伝的な要因に対しては完全に排除することはできませんが、間接的な要因に対してはいくつか予防する方法がございますので、ご紹介させて頂きます。
生活習慣の改善
髪の毛の薄毛に影響を与える生活習慣としては、食生活、運動、睡眠、喫煙などが挙げられます。髪の発育には血流が必要ですが、前述の生活習慣が乱れてしまったり、喫煙をすると血管が硬化してしまい、髪の毛への血流が低下、つまり健康な髪の毛に必要な酸素や栄養が運ばれにくくなってしまいます。その結果、髪の毛にとってマイナスの査証が働いてしまう場合がございますので、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠(特に22時~2時)、喫煙を控える等、極力これらの生活習慣を改善していきましょう。
ストレスの管理
ストレスによる血管収縮やホルモンバランスの乱れによって、髪の毛に対して悪影響を与えてしまう場合がございます。また、ストレスは薄毛のみならず様々な健康問題を引き起こす可能性がございますので、ストレスの管理には十分注意しましょう。例えば、適度な運動や十分な睡眠、楽しめる趣味など、自身に合ったストレス解消法を見つけてストレスとうまく付き合うよう心掛けておきましょう。
ヘアケア
育毛剤や頭皮マッサージなどによって、脱毛の進行をおくらせたり、抜け毛や薄毛の予防が期待できます。但し、効果は個人の体質や特徴によりますし、育毛剤の使用によって薄毛の体質が改善される訳では無いので、過度な期待はお控え頂き、髪の毛を極力維持するという程度にお考え頂く事が妥当といえます。なお、育毛剤は使用をやめてしまうと、その効果も消失してしまいますので、継続使用を考慮した価格帯のものをお使い下さい。
AGA(男性型脱毛症)の対策・治療法
AGAの予防を行なっていたが効果がない、AGAによる薄毛が気になって来たなど、実際にAGAが進行して薄毛が気になると感じた際は、医学的な治療を含めた具体的な対策をしていくことをおすすめいたします。AGAによる薄毛の治療は様々ございますので、幾つか代表的なものをご紹介させて頂きます。
医師の診断
AGAによる薄毛の治療を行う際は、まず専門の医師の診断を受けて頂く事をおすすめいたします。AGA以外の原因でも薄毛が起こることもございますし、ご自身の状態やご希望に合わせた治療をより幅広い選択肢において実施していくためにも、AGA治療の豊富な経験を持つ専門医へご相談をされるとよろしいかと思います。
医薬品
AGA治療薬による治療は、AGA治療の中でも比較的取り組みやすい治療法です。代表的なものとしては下記の薬剤があり、いずれも医学的に効果が認められているAGA治療薬で「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においても推奨されているAGA治療薬となります。但し、男性には推奨するが女性には推奨しない、使用条件が異なる等、男女において違いがございますので、ご使用の際には注意が必要です。
ミノキシジル(外用)
塗布した頭皮の血管拡張作用によって、毛乳頭細胞へより多くの栄養素や酸素を運んで、抜け毛を減らしたり、薄毛の進行を遅らせる効果が期待できます。ドラッグストアなどでも広く市販されているAGA治療薬で、男性のみならず女性の薄毛に対しても効果が期待できます。なお、男性用が5%、女性用は1~2%と、同じ成分でも男女で濃度が異なりますのでご注意ください。
フィナステリド(内服)
男性ホルモンであるテストステロンが、AGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)へと転換するのを阻害(5α還元酵素Ⅱ型を抑制)することによって、AGAの症状を改善する効果が期待できます。もともとは前立腺肥大症の治療薬でしたが、副作用として毛が濃くなることからAGA治療薬として使用されるようになりました。なお、フィナステリドは医師の診察が必要なAGA治療薬で、未成年や女性に対する適応はございません。
デュタステリド
フィナステリド同様、男性ホルモンであるテストステロンがAGAの原因となるジヒドロテストステロン(DHT)へと変わる際に必要な5α還元酵素を抑制して、AGAの改善が期待できるAGA治療薬です。フィナステリドが5α還元酵素Ⅱ型のみを抑制するのに対して、デュタステリドは5α還元酵素Ⅰ型とⅡ型の両方を抑制するため、より効果が期待できます。こちらも、医師の診察が必要なAGA治療薬で、未成年や女性に対する適応はございません。
植毛(自毛植毛)
AGA治療薬による治療で効果が感じられない場合は、植毛手術(自毛植毛)という治療法の選択肢がございます。自毛植毛は、自身のAGAの影響を受けにくい髪の毛を薄毛の部位に移植する医療技術で、移植毛が定着した後は、自身の他の髪の毛同様の管理で済み、永続的な効果が期待できます。また、メンテナンスや買い替えなどの追加費用が発生しません。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、男性型脱毛症は推奨度B(行うよう勧める)、女性型脱毛症は推奨度C1(行ってもよい)となっているAGA・薄毛の治療法です。
ちなみに、植毛というと、人工毛植毛を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、人工毛植毛は推奨度D(行うべきではない)とされているため、現在は植毛といえば自毛植毛手術を指す場合がほとんどです。
植毛については、「植毛とは?医師が詳しく解説」にて詳細を解説させて頂いておりますので、興味のある方はご参照ください。
その他
その他のAGAの治療法としては、かつらの着用やLEDおよび低出力レーザー照射、成長因子導入および細胞移植療法など様々なものがございます。詳細は日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」にてご確認を頂けますので、興味がございましたらご参照下さい。
まとめ
男性の薄毛の主な要因であるAGA(男性型脱毛症)は、遺伝的要因や男性ホルモンの変化などによって引き起こされます。AGAを予防するためには、生活習慣の改善(バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、禁煙)やストレス管理、ヘアケアなどを極力実施していくこと重要です。また、AGAの対策・治療法としては、ミノキシジルやフィナステリド・デュタステリドなどのAGA治療薬、植毛(自毛植毛)、かつらやLEDおよび低出力レーザー照射などがございます。AGAの治療を行う際は、まず医師への相談からはじめて頂く事をおすすめいたします。個々の症状の診断はもちろん、医学的な治療法も視野に入れることでAGA治療の選択肢が広がりますので、ご自身の症状やご希望に合わせたAGA治療を見つけることができます。
AGA治療・自毛植毛専門院として1998年からの実績がある紀尾井町クリニックでは、医師が無料で相談を受け付けており、お悩みに寄り添って治療法のメリット・デメリット、リスクや副作用などをご説明させていただいた上で、症状やご希望に合わせたAGAの治療プランを一緒に考えております。AGAの治療をお考えの際は、お気軽にご相談下さい。
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
医師 中島 陽太(国際毛髪外科学会 会員)