植毛手術でクリニックを変えても大丈夫?2回目以降のクリニック選びのポイント【医師監修】

2回目以降の植毛を検討されている方で「次の植毛は違うクリニックで行うべきか」と考える方も少なくはないのではないでしょうか?植毛手術は、薄毛に悩む方にとって効果が期待できる治療法のひとつですが、1度手術を受けた後に2度目の施術を考えている場合、最初のクリニックから変えるべきか、そのまま同じクリニックで続けるべきか迷うこともあります。本コラムでは、植毛手術の2度目以降にクリニックを変更することの可否やポイントについて解説します。クリニックを変更したいと考える代表的な理由や、そのメリット・デメリット、さらに失敗しないクリニック選びの重要ポイントなどを詳しくご紹介します。複数回の植毛を検討している方は、ぜひ最後までお読みいただきひとつの参考になさってください。
- 1. 2回目以降の植毛でクリニックの変更は可能か?
- 1.1. 複数回の植毛手術は可能か?
- 1.2. 他院での植毛も可能だが、前医での治療情報があった方が良い
- 1.3. 既存の移植毛が抜けてしまわないかが心配
- 2. 2度目以降にクリニックを変更する理由
- 2.1. 1度目の結果に満足していない
- 2.2. 別の移植技術を試したい、より多くの移植を行いたい
- 2.3. クリニック(医師・看護師)の技術や経験・相性の違い
- 2.4. アフターケアやサポートの充実度
- 2.5. 費用や立地の問題
- 3. クリニックを変えることのメリット
- 3.1. より満足度の高い施術が受けられる可能性
- 3.2. 希望や適性に合った手術法の選択
- 4. クリニックを変えることのデメリット
- 4.1. 治療の継続性が途切れる
- 4.2. 前のクリニックのアフターサービスが受けられない
- 4.3. 2回目以降の手術は難易度が上がる
- 4.4. 新たな信頼関係構築の必要
- 5. クリニック選びで重視すべきポイント
- 5.1. 経験豊富で専門性の高いクリニックか
- 5.2. 医師と十分に相談でき、信頼関係を築けるか
- 5.3. 術後のフォロー体制は万全か
- 5.4. 費用が明確で適正か
- 6. アフターフォローだけを他のクリニックにすることは可能か?
- 7. まとめ
2回目以降の植毛でクリニックの変更は可能か?
複数回の植毛手術は可能か?
まず複数回の手術について植毛自体の結論から言えば、自毛植毛手術は1度きりではなく2度以上受けることが可能です。生涯で移植できる毛髪の本数には上限がありますが(FUT法で約5,000~7,000株程度、FUE法で約2,000~3,000株程度)、通常は無理のない範囲で都度実施した場合、2回以上の手術が可能であることが多いです(採取数や個人による差はあります)。1回の手術で理想通りの仕上がりにならなかった場合、2回目で修復・密度アップすることも検討できます。実際、初回の植毛後に「もっと本数を増やしたい」「別の部位も植毛したい」と感じる方は珍しくありません。ただし、次回の手術までには十分な間隔を空けることが大切です。植毛手術の効果(髪の生着状況や仕上がり)は半年~1年ほど経たないとわからないため、少なくとも術後6ヶ月~1年程度は様子を見てから次の手術を検討しましょう。術後1年ほど経過してもボリュームが物足りないようであれば、2度目の植毛を検討すると良いでしょう。反対に、十分に生着していない段階で焦って2回目を受けても、単に髪が生え揃っていないだけの可能性もあります。まずは初回手術の結果をしっかり見極めることが重要です。
他院での植毛も可能だが、前医での治療情報があった方が良い
大前提として、できれば同じクリニックで継続的に治療を受けた方が良いです。これは後に詳しく説明しますが、クリニックを変更すると、それまでの詳細な治療経過などの診療情報や、長期的な治療計画が失われてしまうからです。 とはいえ、様々な理由で2回目は初回と異なるクリニックで施術を受けたい、と希望される方は実際にいらっしゃいますし、別のクリニックに変えること自体は可能です。「1回目の仕上がりが気に入らなかった」「説明不足で思ったような植毛にならなかった」などの不満がある場合や、「別の方法を試してみたい」「さらに経験豊富なところでお願いしたい」等様々な理由でクリニックを変えて2回目以降の手術を受ける方も珍しくはありません。ただし、新しいクリニックで施術する際は、初回の植毛手術を受けた事実やその内容を医師になるべく正確かつ詳細に伝えるようにしましょう。初回手術時の時期、移植株数やドナー採取部位、手術方法(FUT法/FUE法)などを申告し、前回のどの点に不満があったのかも相談しておくと良いでしょう。医師はドナー部の傷跡を見れば過去の手術歴は分かりますが、細かな経緯や希望を共有することで、より適切な治療計画を目指す事ができます。また、1度植毛した部位の頭皮は多少硬くなっていたり、瘢痕化している場合もあり、何も知らないままだと2回目の手術の難易度が上がる可能性があります。事前に前回手術について申告し、医師と十分に相談しておくことが、より良い2度目の植毛手術につながります。
既存の移植毛が抜けてしまわないかが心配
2度目の植毛では「最初に植えた髪にダメージが及ぶのでは」と心配になるかもしれません。確かに、同じ部位に密度を上げる目的で植毛を追加する場合、既存の髪の毛の合間を縫って移植する必要があるため高度な技術が求められます(医師の技量が低いと、先に植えた毛を傷つけてしまうリスクも考えられます)。しかし、経験豊富な医師による適切な手術であれば、初回に移植した毛が2回目の手術の影響で抜け落ちてしまうリスクを下げることができます。適切な技術の下では、既存の移植毛を維持しつつ密度を高めることが可能です。2度目の植毛に踏み切る際は、不安な点を医師に確認しつつ、医師や看護師を含めた植毛チームの経験や実績も確認しておきましょう。
2度目以降にクリニックを変更する理由
植毛手術の結果が期待通りでなかった場合や、さらに別の方法や高い密度、自然な仕上がりなどを求める場合、他のクリニックを検討することはありえます。実際に当院で2回目以降を担当(初回は別クリニック様)させて頂く事になった方々の理由として、一部重複するところはありますが主だったものを以下に紹介させて頂きます。
1度目の結果に満足していない
最も多い理由の1つは、初回の手術結果に満足していないと感じることです。例えば、植毛の密度が不足していたり、ヘアラインが自然でない、移植された本数分の効果出ていない、などと感じたりする場合があります。このような場合、他のクリニックでの再手術を希望することがあります。
- 密度不足
植毛した髪の密度が治療計画していたよりも薄く、髪のボリュームが足りない - ヘアラインの不自然さ
植毛後のヘアラインが不自然で、自分の顔や頭の形に合わない仕上がりになった - 生着率の低さ
植毛した毛が十分に生着せず、抜け落ちてしまったり、希望した範囲で髪が生え揃わない - 治療計画への不満
将来を見越した治療計画を立ててもらえなかった。十分な説明もなく無理のある移植数・移植法を実施された - 手術の技術レベルや対応への不満
初回手術を担当した医師・看護師の技術やコミュニケーションに不安や不満を感じた - アフターケアの不足
術後のフォローアップの相談に親身にのってくれず不十分だと感じた - 傷跡、副作用
手術後に予想以上の傷跡が残ったり、予期しない副作用が現れた
別の移植技術を試したい、より多くの移植を行いたい
植毛にはFUT法(ボリューム植毛)とFUE法(くり抜く植毛)の2つの主要な方法がありますが、初回手術で受けた方法が合わなかった場合や、別の技術を試したいという理由でクリニックを変えることがあります。例えば、FUT法では頭皮の一部を切り取るため、線状の傷跡が残ることが一般的ですが、FUE法も皮膚をくり抜くため、小さな丸い傷跡が採取した分だけ必ず残ります(1,000株採取したら1,000個の傷痕ができます)。特にFUE法では、限りあるドナー範囲から採取できる株数がFUT法よりも少ないため、より多くの毛髪を移植したいと考える方がFUT法に切り替えるということもあります。実際にFUE法で手術したクリニックに相談したところ、これ以上は採取出来ないので、FUT法を行っているクリニックに相談をしてみてくださいと言われた方が当院にお越しになるケースも多々あります。
なお、ご留意頂く点として、FUE法を既に行っている方といない方では、ドナー部分の密度に差があるため、採取できる移植株の数は、通常のFUT法で採取できる数よりも、FUE法を既に行っている方の方が少なくなりますので、もしより多くの移植を考えていたり、将来の移植も視野に入れて最大限に移植株を活用したいと考えている方などは、初回からFUT法も選択肢に入れた上で相談をされるとよろしいかと思います。
クリニック(医師・看護師)の技術や経験・相性の違い
クリニックによって技術や経験が異なるため、より自身の希望に合わせた技術や専門的な技術を持つクリニックを探すことが理由として挙げられます。特に、ドナーエリアが限られている場合や、再手術でより繊細なデザインが必要な場合、専門的な技術が必要な施術を希望する場合は、必要な経験を豊富に持った医師と看護師がいるクリニックに切り替えたいと思う方も少なくはありません。植毛はチーム医療の為、医師だけでなく看護師の経験や技術も結果に大きく関わってきます。また話していることが伝わっているか、わかりやすく説明されたか、コミュニケーションが問題なくとれているかなど、担当医師や医療スタッフとの相性を理由に変更されるケースもあります。
アフターケアやサポートの充実度
アフターケアや術後のサポートが不十分と感じる場合もクリニック変更の要因の一つです。特に、初回の手術後に不安な事が発生した場合、十分に寄り添ったサポートが受けられなかったと感じた際は、より充実したアフターケアが提供されるクリニックを選び直すことは想像に難くはないかと思います。植毛は手術が終了した後も重要です。手術後に不安やトラブルが発生した際は迅速な対応をしてくれるか、丁寧な対応をしてくれるか、親身になって対応をしてくれるか、手術をした医師や看護師が対応してくれるか、どこまで無料で対応してくれるのか等、術後の不安を払拭してくれる対応をどれだけしているかは、クリニック選びの重要なポイントです。意外と見落とされがちですが、このケースも少なくはありません。
費用や立地の問題
他のクリニックの費用設定や立地が、現在通っているクリニックよりも通いやすく、費用が抑えられる場合も、変更の理由になります。例えば、症例モニタープランなどの費用を安く抑えられるプランが終わってしまった。また、より希望に合いそうなクリニックが別の地域で見つかったなどがあります。特に都市部では選択肢が豊富にあるため、手術費用の比較や施術内容を見直すことで、自分がより良いと思えるクリニックに変更することができます。
クリニックを変えることのメリット
初回とは別のクリニックで2度目の植毛手術を受けることには、いくつかのメリットがあります。
より満足度の高い施術が受けられる可能性
誰しも、最初に植毛を受ける際には「実際自分が手術を受けた際に、何をどう感じるか」は分かりません。経験を通して初めて気づくこと、というのがあると思います。初回の施術で感じたことや経験から、2回目以降の施術を検討される際に「自分にとって、何が大事なのか?どのようなクリニックで施術を受けたいか?」がはっきりしてきます。そのような自分の中の基準をもとに、希望に合致するクリニックを探すことができることから、自分にとってより満足度の高い施術が受けられる可能性が高まります。また、二回目以降にクリニックを変えることで、前回とは異なる視点からの診断やデザイン提案を受けられる場合があります。新しい医師の判断によって、植毛の密度調整やデザインの再構築、植毛範囲の拡大など、より適切な施術計画を立てやすくなることもあります。
希望や適性に合った手術法の選択
クリニックによって採用している植毛法は異なり、FUT法またはFUE法のいずれかのみを行っている場合もあります。この2つの植毛方法はそれぞれにメリット・デメリット、向き・不向き、注意点などがありますので、別のクリニックを受診することで、希望する施術方法や自身の状態に合った選択肢を検討できる場合があります。たとえば、「傷跡への狭い範囲に植毛したい」「より多くの株数に対応できる方法を検討したい」といった要望に対し、両方の術式を扱う医師であれば、症例に応じた方法を説明・提案・実施することが可能です。技術や方法の選択肢を比較することで、自分に適した治療計画を立てやすくなります。
以上のように、クリニックを変えて臨む2度目の植毛手術には状況によってはいくつかのメリットが考えられます。もちろんメリットを最大限生かすためには、変更先のクリニック選びが極めて重要になります。それについては後述する「クリニック選びのポイント」で詳述しますが、メリットに目を向けすぎず次のデメリットも十分に踏まえた上で判断することが大切です。
クリニックを変えることのデメリット
一方で、2度目以降でクリニックを変更することにはデメリットや注意すべき点も存在します。メリットと合わせて把握しておきましょう。
治療の継続性が途切れる
前回施術を受けたクリニックとは別の医療機関に移る場合、治療経過の把握や情報共有の面で課題が生じることがあります。初回手術を担当した医師は、移植部位の状態や術中の処理内容などを把握していますが、他院ではカルテ共有がない限り、それらを改めて確認する必要があります。そのため、これまでの経過や施術内容を患者自身ができるだけ正確に伝えることが重要です。また、使用した術式や移植株数、採取範囲などの情報が不足していると、適切な治療が難しくなる場合もあります。
前のクリニックのアフターサービスが受けられない
クリニックでは、術後の相談や追加施術に関するサポート体制・保証制度などを設けている場合があります。ただし、別のクリニックに移る場合は、これらのサービスが前院の対象外となることが一般的です。植毛手術後の経過観察や再施術の判断は、通常、手術を実施した医療機関が中心となって行うため、クリニックを変更した時点で自身の手術内容を熟知したクリニックによる従来のアフターケアや保証制度が適用されない場合があります。再手術を検討する際は、保証内容やサポートの範囲について、注意しておく必要があります。
2回目以降の手術は難易度が上がる
2回目以降の植毛は、すでに移植毛や既存毛が生えている部位に対して行われることが多く、初回に比べて技術的な配慮が求められる施術です。限られたスペースに正確に株を植え付ける必要があるため、医師にはより精緻な判断と操作技術が必要になります。新しいクリニックで手術を行う場合は、前回の施術内容や頭皮の状態を十分に把握したうえで計画を立てることが重要です。
新たな信頼関係構築の必要
初回で通っていたクリニックから離れる場合、新しい医師やスタッフと改めて信頼関係を築く必要があります。前回の主治医と十分なコミュニケーションを取っていた方にとっては、再び自分の薄毛の経過や希望を一から説明する手間を感じることもありますし、伝わり方が異なる可能性もあります。また、初めて訪れるクリニックでは、方針や雰囲気に慣れるまでに時間を要することもあります。こうした点は人によって感じ方が異なりますが、治療を円滑に進めるためには、担当医と丁寧に情報を共有し、相互理解を深めていくことが大切です。なお、前院で治療方針や対応に納得がいかなかった場合には、新しい環境で改めて治療方針を見直す機会にもなり得ます。
以上のような点が、クリニック変更のデメリットとして考えられます。もっとも、これらは事前の準備や適切なクリニック選びによってカバーできる場合もあります。次の章では、そうしたクリニック選びで重視すべきポイントについて解説します。
クリニック選びで重視すべきポイント
2度目以降の植毛手術を成功させるには、どのクリニックで受けるかが非常に重要です。近年は植毛を行うクリニックが増え、技術や方式、費用・サービスも様々なため「どこを選べば良いのか迷う」という方も多いと思います。ここではクリニック選びの際に考慮すべきポイントを紹介します。これらのポイントを踏まえて複数のクリニックで相談し比較検討することで、植毛への理解も深まり、自分に合ったクリニックを選択しやすくなるでしょう。おすすめのクリニックについては「おすすめの植毛クリニックとは?【医師監修】」からも確認頂けますので、興味のある方はご参照下さい。
経験豊富で専門性の高いクリニックか
2回目以降の植毛手術を検討する際には、どのクリニックで施術を受けるかが結果を左右する大きな要素となります。特に、医師や看護師、そしてクリニック全体が十分な経験と専門性を備えているかどうかは重要な確認ポイントです。植毛は繊細な外科的手技を伴う治療であり、施術チームの技術や経験が仕上がりに大きく影響します。経験豊富な医療チームによる施術は、再手術のように難易度が高くなるケースでも、頭皮の状態や既存毛の配置を考慮しながら、無理のない計画を立てやすくなります。多くの症例を手がけてきた医師は、個人ごとの状態や希望などに合わせてFUT法やFUE法といった手法を適切に判断し、前回の移植部位との整合性を踏まえた自然なデザインを計画する事が期待できます。手術中の判断力や術後のケアまで含め、これまでの知見を活かした対応が可能であることも、経験豊富な医師ならではの強みです。看護師の経験も同様に大切で、株分け(グラフトの準備)や植込みの補助、患者サポートに熟練しているチームであれば、施術全体がより精密かつ円滑に進みやすくなります。こうした積み重ねが、クリニック全体としての技術水準や対応力の差となって表れます。
また、植毛に特化したクリニックかどうかも確認しておきたい点です。植毛専門クリニックでは、多様な症例を通じて培われた経験に基づき、個々の状態に応じた提案や細かな調整を行いやすい傾向があります。再手術を行う場合、既存毛の密度や移植株の生着状況などを考慮した判断が求められるため、専門的な知識と経験を持つ医療チームが在籍しているかどうかを確かめておくと良いでしょう。
さらに、提供している植毛法の種類にも注目する必要があります。現在、主に行われているのは、頭皮を帯状に採取してから移植毛の株分けを行うFUT法と、専用のパンチで毛根を1株ずつくり抜くFUE法です。それぞれに特徴や向き・不向き、メリット・デメリットなどがあり、どちらの方法にも対応できるクリニックであれば、2回目の施術でも頭皮の状態やドナー残存量に応じた無理のない方法を検討できます。
たとえば、広範囲への植毛などの多くの移植株が必要な場合にはFUT法がより適しているケースもあり、少量の移植株で十分な場合にはFUE法が選択されることもあります。両手法の特性を理解し、患者の希望に合わせて中立的に説明・提案してくれる医師かどうかを確認すると良いでしょう。
FUE法を希望する場合は、ドナー採取時に後頭部を刈るか、刈らずに行う「刈らないFUE法」に対応しているかも確認しておくと良いでしょう。刈らないFUE法は、対応可能なクリニックが限られるほか、費用も高くなる傾向があります。希望する場合は事前に十分な説明を受け、手法の違いや費用について理解しておくことが大切です。またFUE法によるドナー部(移植毛を採取するエリア)の過剰な採取は、密度低下に繋がりますので注意が必要です。
一方、FUT法を希望する場合には、縫合技法も確認ポイントです。FUT法では後頭部に細い線状の傷痕が残りますが、「トリコフィティック縫合法」という特殊な縫合法を採用しているクリニックでは、毛髪が傷跡を覆うように生えるため、比較的目立ちにくく仕上がる傾向があります。完全に傷痕が消えるわけではありませんが、できるだけ目立たせたくない場合は、この縫合法を導入しているかどうかを確認するとよいでしょう。
このように、2回目以降のクリニック選びでは、医師や看護師の経験、クリニック全体の専門性、そしてFUT法・FUE法双方への対応力や縫合法など、技術的特徴を総合的に確認することが重要です。再手術では初回以上に精度と判断力が求められるため、経験と専門性を兼ね備えた医療チームを選ぶことが、治療の安全性と納得のいく結果につながる第一歩といえるでしょう。
医師と十分に相談でき、信頼関係を築けるか
2回目以降の植毛手術を検討する際には、カウンセリング(事前相談)の内容と担当医との相性がより一層重要になります。再手術では、前回の移植範囲や生着状態、頭皮の伸展性などを踏まえて慎重な計画を立てる必要があるため、丁寧なカウンセリングが欠かせません。カウンセリングでは、現在の薄毛の進行度や既往歴を確認したうえで、希望する仕上がりや改善したい部分について、医師が詳しくヒアリングを行います。その際、メリットだけでなくデメリットやリスク、副作用の可能性、術後経過や注意点についても十分な説明が行われるかを確認することが大切です。
特に、FUT法とFUE法のどちらを選択するかは、前回の手術内容やドナー部の残存状態によって最適な方法が異なります。どちらか一方を強く勧められる場合でも、両方の特徴や向き・不向き、術後の違いについて偏りなく説明を受けることが望ましいでしょう。十分な情報が得られないまま手法を決めてしまうと、再手術後の結果に影響する可能性もあります。不明点や疑問があれば遠慮せず質問し、納得できるまで時間をかけて相談に応じてくれるかどうかを見極めましょう。カウンセリングは、手術を成功に導くための最も重要な準備段階といえます。
また、担当医との相性も慎重に確認しておくべきです。医師が患者の悩みや希望を丁寧に聞き取り、現実的で的確な治療計画を提案してくれるか、説明が分かりやすいかといった点は非常に重要です。対して患者側も、自分の希望や不安を率直に伝えることが大切です。互いにしっかりと意見を交わせる関係性が築けるかどうかは、実際に話してみなければ分かりません。もしカウンセリングの段階で「説明が不十分」「質問しにくい」と感じる場合は、他のクリニックでも相談を受けて比較してみるのも一つの方法です。植毛は長期的な経過観察が必要な自由診療であり、納得したうえで信頼できる医師に依頼することが、結果に満足するための前提になります。
加えて、カウンセリングから手術まで一貫して同じ医師が担当するかどうかも確認しておきたいポイントです。植毛では、カウンセリングで作成されたデザインや移植計画をもとに手術が行われるため、設計段階を担当した医師がそのまま執刀するのが理想的です。途中で担当が変わると、何に悩んでいるのかやデザイン意図、細部の共有がなど不十分になる可能性もあるため、最初から最後まで一人の医師が責任を持って対応してくれる体制かを確認しておくと良いでしょう。
さらに、カウンセリング時には過去の症例写真を見せてもらうことで、クリニックの技術や仕上がりの傾向を把握できます。その際、植毛部位のビフォーアフターだけでなく、ドナー採取部(後頭部)の傷痕の状態にも注目しましょう。FUT法でもFUE法でも採取部には必ず傷が残るため、同程度の移植株数でどのような仕上がりになっているかを確認することで、術後の経過を具体的にイメージしやすくなります。希望すればドナー部の症例写真を見せてもらえるクリニックも多く、そうした丁寧な対応をしてくれるかどうかも判断の一助となります。
このように、2回目以降のクリニック選びでは、技術力や症例数だけでなく、カウンセリングを通じて医師としっかり信頼関係を築けるかが非常に重要です。再手術は初回以上に計画性と判断力が求められるため、十分に相談できる環境を選ぶことが、納得のいく結果につながる鍵となります。
術後のフォロー体制は万全か
2回目以降の植毛手術では、1回目とは異なるクリニックを選ぶケースも少なくありません。
その場合、施術後の経過管理やアフターフォロー体制をあらかじめ確認しておくことが特に重要です。植毛は施術当日で完結する治療ではなく、その後の経過観察や毛髪の成長を見守る期間を含めて治療の一部と考えられます。新しいクリニックで施術を受ける場合には、手術後にどのようなサポート体制が整っているかを慎重に確認しておきましょう。
術後に発赤や腫れ、かさぶた、毛の成長経過など気になる点が生じた際、すぐに相談・診察できる体制があるかどうかは重要な判断材料です。多くのクリニックでは自院で行った手術後の経過相談を無料で行っていますが、対応内容や診察方法は施設によって異なります。事前に「経過観察の頻度」「再診予約の取り方」「メールやオンライン相談の可否」「緊急時の対応方法」などを確認しておくとよいでしょう。小さな変化や不安を相談しやすい雰囲気があるかどうかも、長期的な経過管理を行ううえで大切な要素です。
特に2回目以降の施術では、前回の移植部位と新たな移植範囲が隣接または重なることも多く、経過を一貫して把握している医師がフォローを行うことが望ましいといえます。カウンセリングから手術、術後までを同じ医師が担当する体制であれば、前回との整合性を踏まえた的確な経過確認がしやすくなります。一方で、術後の相談が手術を担当した医師以外に引き継がれる可能性もあるため、担当の一貫性について事前に確認しておくと安心です。
また、術後フォローは基本的に手術を行ったクリニックでのみ対応されるのが一般的です。前回と別の医療機関に移る場合、初回手術を行ったクリニックでの無償相談や補償制度が継続されないことが多いため、フォロー体制の引き継ぎが難しくなる点には留意が必要です。術後にトラブルが生じた際、どこで相談できるのかをあらかじめ把握しておくと良いでしょう。
さらに、フォロー対応に費用が発生するかどうかも確認しておきたいポイントです。多くのクリニックでは簡単な経過相談は無料ですが、炎症や腫れ止めの処方など追加対応が必要な場合には費用がかかることがあります。どの範囲が無料で、どのような対応が有料になるのかを事前に確認しておくことで、後から想定外の負担が生じるのを防げます。
このように、2回目以降の植毛で新しいクリニックを選ぶ場合には、施術技術だけでなく、術後フォローの体制や対応方針も重視することが大切です。経過観察・再診の仕組み、医師の関与の範囲、フォローに関する費用を事前に把握しておくことで、治療後の過程をよりスムーズに進めることができます。
費用が明確で適正か
2回目以降の植毛手術を検討する際には、1回目とは異なるクリニックを選ぶケースもあり、費用体系や料金設定の違いをしっかり確認することが大切です。自毛植毛は自由診療のため、費用設定はクリニックによって大きく異なります。費用の明確さや説明の丁寧さは、納得して治療を進めるうえで欠かせないポイントです。
カウンセリング時には、手術費用だけでなく、事前の検査料・薬代・麻酔費用・アフターケア費用などを含めた総額を確認しましょう。提示された金額にどこまでの内容が含まれているか、逆に別途費用がかかる項目があるかを質問し、不明点をそのままにしないことが重要です。中には、ウェブサイト上で「○○円〜」と表記されていても、それがモニター価格や特定条件下での最安料金である場合もあります。グラフト数によって料金が細かく変動したり、手術後にアフターキットや追加薬剤の費用が発生する場合もあるため、手術開始から完了までのトータル費用を基準に比較するよう心がけましょう。
また、2回目以降の植毛では、既存の移植範囲やドナー部の残り状況に応じて、必要な株数や施術範囲が1回目と異なることがあります。そのため、単純な費用比較ではなく、必要株数あたりの単価・費用対効果・施術内容の妥当性を総合的に判断することが重要です。カウンセリング時にこうした点を丁寧に説明してくれるクリニックであれば、費用の透明性に重きを置いているといえます。
さらに、契約に関しても注意が必要です。費用面で「当日契約で○割引」「今決めないと予約枠が埋まる」といった即決を促すような説明がある場合は、慎重に判断しましょう。植毛は高額で、体への処置を伴う医療行為です。十分に比較検討したうえで納得して受けることが大前提であり、時間をかけて検討する姿勢を尊重してくれるかどうかも、クリニック選びの大切な基準となります。
2回目以降のクリニック選びでは、初回の経験を踏まえ、費用に対する説明の丁寧さや透明性、契約時の対応姿勢などを慎重に確認しましょう。明確な費用説明と冷静な判断のもとで選択することが、後悔のない再手術につながります。
アフターフォローだけを他のクリニックにすることは可能か?
2回目以降の植毛の話題からは少し脱線しますが、「手術は海外や費用の安いクリニックで受け、その後の経過観察やフォローアップだけを国内の別クリニックで受けたい」と希望される方も稀にいらっしゃいます。理論上は、他院で手術を受けた後に別の医療機関で経過観察を行うことは不可能ではありません。しかし、自毛植毛という外科的治療の特性を考慮すると、基本的には推奨されません。
植毛は、採取から縫合(FUT法)、移植、移植毛の定着まで複数のプロセスを伴う医療行為であり、手術後の状態を正確に判断するには、術式・移植株数・採取および植え込みの方法、そして体質など、詳細な施術情報を把握していることが不可欠です。他院ではその情報が共有されていない場合が多く、万一のトラブルが起きた際に、原因の特定や適切な処置を行うことが難しくなる可能性があります。
また、クリニックごとに使用する医療器具や移植株の処理方法、薬剤や消毒薬の種類などが異なるため、手術を行った施設とは異なる条件で経過観察を行うこと自体が、医療的判断を複雑にする要因になります。これらの違いによって、術後の診断や対処に誤差が生じるリスクも考えられます。
そもそも多くのクリニックは「他院で手術を受けた患者のフォローのみ」を受け付けていません。仮に受け入れている場合でも、診察や処置が自費診療となるため、費用が高額になる可能性もあります。フォローアップができない環境で受ける施術は、結果的に経済的にも医療的にも負担が増す要因となり得ます。
したがって、植毛手術のアフターフォローや経過観察は、原則として施術を行ったクリニックで継続的に受けることが望ましいと考えられます。医療行為としての植毛は、手術そのものだけでなく、術後の回復過程や結果の安定化までを含めて一連の治療と位置付けられています。そのため、フォローアップまで責任を持って対応できる体制を備えたクリニックを選ぶことが、長期的に見て安全で確実な治療につながります。
まとめ
植毛手術において、2度目以降でクリニックを変えることは可能であり、多くのメリットが期待できる一方、いくつかの注意点も存在します。まずは初回植毛の結果を十分に見極めた上で、クリニック変更の是非を検討しましょう(本当は、初回から継続的に同じクリニックで治療を受けることが理想的です)。その際、本コラムで紹介した「クリニックを変えたくなる理由」「変更することのメリット・デメリット」を踏まえて、自身の状況に当てはめて考えることが大切です。
そして何より重要なのが、後悔のないクリニック選びです。2度目の植毛では特に、「このクリニックなら信頼できる」と心から思える医療機関を選ぶことが成功への近道と言えます。幸い、現在は植毛クリニックの情報も豊富に入手できますので、なるべく複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討することをおすすめします。実際に話を聞いてみることで植毛についての理解も深まり、より偏りのない情報に基づいて自分に合ったクリニックを選択できるでしょう。
2度目、3度目の植毛手術は、理想の髪型に1歩1歩近づいていくためのプロセスです。信頼できるパートナー(クリニック・医師)を見つけ、適切なタイミングと方法で施術を重ねていけば、きっと満足のいく結果が得られるはずです。今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひ慎重にクリニック選びを行ってください。
1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院として、国内でも数少ないFUT法とFUE法の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、FUT法・FUE法それぞれのメリット・デメリット、副作用、リスク等を、経験豊富な医師が実際の経験に基いて説明させて頂き、直接お悩みを承った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。二度目以降の植毛でお悩みの方もお気軽にご相談下さい。
監修医師プロフィール
東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら)
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック東京本院 院長
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

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