FUE法でよくある質問と回答【医師監修】

植毛には現在、大きくFUT法とFUE法の2つの方法があります。紀尾井町クリニックはFUE法とFUT法の両方を取り扱っているクリニックですが、実際にお客様よりあった御質問で多かったものや、重要なものについて、これまでの実績に基いて、いくつか回答と共にご紹介させて頂きます。本コラムに掲載されていない、またはさらに詳細が知りたい方は、無料のカウンセリングや無料のメール相談などをご活用ください。本コラムが植毛を検討されている方の参考になりましたら幸いです。
- 1. FUE法とは
- 1.1. メリット
- 1.2. デメリット
- 1.3. その他の留意点
- 2. Q.FUE法は切らないので傷が残らないのですか?
- 2.1. A.皮膚をくり抜くので、直径1mm程度の米粒大のくり抜き痕が採取した数分だけ必ず残ります。
- 3. Q.FUE法の傷は、FUT法の傷よりも目立たないのですか?
- 3.1. A.少ない採取数であれば目立ちませんが、採取数を増やすほど目立つリスクは上がります
- 4. Q.FUE法のみのクリニックが増加しているのはなぜですか?
- 4.1. A.FUT法に対応できる医療スタッフが限られるため(FUT法に比べて新規に始めやすい)
- 5. Q.FUE法は坊主(スキンヘッドのような)にしないといけないのですか?
- 5.1. A.ケースやご希望によります
- 6. Q.FUE法の手術は痛いのですか?
- 6.1. A.局所麻酔を打つ時にチクリとしますが、その後はほぼ痛みは感じません
- 7. Q.FUE法で2000株以上の移植は可能ですか?
- 7.1. A.理論的には可能ですが、過剰な採取にはご注意ください
- 8. Q.FUE法が向いているのはどんな人ですか?
- 8.1. A.傷痕、眉毛、ヒゲ、狭い範囲など、少量の移植に向いています
- 9. まとめ
FUE法とは
まずは、FUE法について、簡単に紹介させて頂きます。FUE法(Follicular Unit Extraction)は、専用の器機を使用して、AGAに強い耐性を持つドナーエリア(側頭部・後頭部)から、毛包単位でくり抜いてドナー株(移植毛)を採取していき、薄毛の部位に移植する方法で、眉毛、ヒゲや傷痕など、比較的少量のドナー株で充分な植毛に向いている方法です。また、頭皮が硬くて可動性が少ない方や、それ以前に施行したFUT法の縫合痕を修正したい場合にもFUE法は適した方法です。
メリット
- 傷跡が目立ちにくい(ひとつの傷痕は約1mm前後のサイズの白い斑点状の傷。ただし採取し過ぎると髪の密度低下に繋がり大きなデメリットとなります)
- 頭皮が硬く可動性が少ない方でも採取可能
- 手術後の回復期間が比較的短い
デメリット
- 生涯に採取できるドナー株数はFUT法の約半分(約2,000~3,000株程度)
- 有効採取率は医師の経験や技量に左右される
- コスト、手術時間(FUT法よりも高いことが多く、また株数の多い手術の場合は手術時間が長い傾向があります)
- 広いバリカン幅(採取する部分を広くバリカンで刈る必要がある。刈らない方法を採用する所もありますが、費用が高額になる傾向があります)
その他の留意点
- ドナー採取しすぎると、採取部の密度が低くなり薄毛になってしまう(傷痕も目立つ)
- 採取数が過多だと、通常のドナー採取範囲を超えて採取されてしまう(通常はAGAの影響を受けにくい部分からのみドナー採取するが、それで必要な株数がまかなえない場合は他の部分からドナー採取されることがある)
- 技術不足だと毛根切断率が上がり有効採取率が下がってしまったり、傷同士が繋がってしまう場合がある
Q.FUE法は切らないので傷が残らないのですか?
A.皮膚をくり抜くので、直径1mm程度の米粒大のくり抜き痕が採取した数分だけ必ず残ります。
FUT法のように、FUE法はメスを使って皮膚を切り取る方法ではなく、専用の器機(筒状の刃が付いたドリルのような機械)を使用して頭皮に1mm程度の穴を開けて、毛根を毛包ごとに頭皮からくり抜いていきます。そして、FUT法のように開いた傷を縫合せずに、開放したままにして傷の治りを待ちます。そのため、1mm程度の小さな米粒大のくり抜き痕が、採取した株数分だけドナー部に必ず残ります(例えば、1000株採取した場合は、1000個のくり抜き痕が残る)。一つ一つは直径1mm程度と小さいため、髪の毛を1~2cm以上伸ばせば、傷を隠す事が可能ですが、採取すればするほど、ドナー部の髪の密度が低下していきます。また、ドナー範囲(後頭部と側頭部)は決まっていますので、その限られた範囲で多く採取するほど、傷同士が繋がってより広い無毛地帯ができてしまうリスクも上がります。
FUT法に比べて傷痕が目立ち難いとはいえ、FUT法と同様に、坊主やスキンヘッドなどの極端に短い髪型は、傷痕が隠しきれなくなりますので注意が必要です。また、FUE法は採取するほどに密度の低下や傷痕が増えていきますので、当院では多くの株数を必要とする植毛は、FUT法を推奨(目安として1000株以上)しています。
Q.FUE法の傷は、FUT法の傷よりも目立たないのですか?
A.少ない採取数であれば目立ちませんが、採取数を増やすほど目立つリスクは上がります
FUE法は、専用の器材を使用して頭皮に1mm程度の穴を開けて、毛包ごとに頭皮からくり抜いていきます。FUT法と違って、皮膚を切って縫い合わせない為、くり抜いた傷はそのまま残ります。FUE法では、密度低下を極力防ぐ為に、ドナーエリア(後頭部や側頭部)から分散して間引く形で採取が行われます。そのため、FUT法のように線状の縫合痕とは違って、直径1mm程度の円形の傷が水玉状にまばらな形で残り、周囲の髪の毛を1cm~2cm以上伸ばせば、傷を隠す事ができる為、線状の傷痕になるFUT法よりも傷痕は目立ち難いと言えます。
ただし、同じエリアから集中的に採取したり、採取数自体が多くなるにつれて、採取部位の密度が低下していって、周囲とのバランスも合わなくなってきますし、傷の間隔も縮まるため、傷痕同士がくっついてしまう可能性も高くなってしまいます。個々の体質によって違いはあるものの、1000株、2000株、3000株と、採取する株数が増えるほど、そのリスクが上がっていくのは想像に難くないのではないでしょうか。
そのため、もし植毛のドナー採取傷が目立つことを気にしてFUE法を検討されるのであれば、採取する数には注意をしておく必要があります。採れる株数には個人差がありますが、多くドナー株を採り過ぎればドナー部の髪が薄くなり、傷が目立つリスクが上がりますので、無理のない範囲の植毛を心掛けるようにしましょう。FUE法の最大のメリットである「傷痕が目立たない」を享受する為には、採取し過ぎないことが重要になります。
Q.FUE法のみのクリニックが増加しているのはなぜですか?
A.FUT法に対応できる医療スタッフが限られるため(FUT法に比べて新規に始めやすい)
年々、新しいクリニックはFUE法のみを行う所が増えていき、FUT法を実施できるクリニックは相対的に少なくなっています。なぜFUE法を取り扱うクリニックばかりが増えてきているのでしょうか?FUE法の方が優れているからなのでしょうか?簡潔に申し上げますと、方法の優劣ではなく、「FUT法よりも手間と人材育成とノウハウの範囲を絞る事ができて、必要な人数も少なくて済む」からだと思われます。
FUE法と違って、FUT法の場合はドナーをメスを使って帯状に採取して採取した部分は縫合するという外科的な手技が医師に要求されることに加えて、採取された帯状のドナー部は看護師3~5名が株単位に正確かつスピーディーに切り分けるという工程が必要となります。この工程は外科的な経験が豊富にある医師が在籍していないとできない治療である事に加えて、FUT法に習熟した看護師など医療スタッフの確保や育成も必要になりますし、FUE法よりも関わる人数を増やして対応する必要があります。FUE法には無いノウハウを必要とする場合がありますので、それら全てを一定水準以上で揃えたチームを組んで、提供し続けなければなりません。つまり、新規に立ち上げた段階では上記の条件を満たす事は非常に難しいため(FUT法に慣れた医師と複数の看護師が必要)、くり抜いた時点で移植株がほぼ出来ていて、株分けの必要がないFUE法の方が、新しく始めやすい手術方法である、ということが言えると思います。言い換えると、FUE法は医師個人の経験や技量に左右される傾向が強いのに対し、FUT法はよりチームの総合力が求められるという違いがあるということです。
なお、誤解ないよう申し添えておきますと、決して「FUE法の方がFUT法より簡単である」というわけではありませんし、「FUT法の方が優れている」という事でもありません。いずれもメリット・デメリットがあり、ケースによって使い分ける事が、無理のない植毛を実現するために最適だと考えています。
Q.FUE法は坊主(スキンヘッドのような)にしないといけないのですか?
A.ケースやご希望によります
基本的に、FUE法でのドナー採取は、採取範囲をバリカンで短く刈ってから採取が行われますので、その部分だけが短く刈りあがっている状態になります。FUE法では、一部から集中的に株を採取するとその部分だけがスカスカになってしまうため、採取する面積を広くとることで、密度低下を抑えて採取していきます。そのため採取数によっては、思いの外刈りあがっている部分が広範囲に及ぶ場合があります。そのアンバランスな状態に対しては、バランスをとるために全て短くしてしまう(=坊主のような髪型にする)、該当箇所をヘアピースでカバーする等があります。また、刈り上げないで採取する方法を採用しているクリニックもあるようです(費用は高くなる傾向があります)。FUE法を希望される場合は、複数のクリニックでどのような対応をしているのかを確認するようにしましょう。(※当院では、ヘアピースの用意や刈り上げない方法には対応しておりません。)
Q.FUE法の手術は痛いのですか?
A.局所麻酔を打つ時にチクリとしますが、その後はほぼ痛みは感じません
FUE法であれば専用器材を用いて、採取する数分だけ頭皮をくり抜いたり(1000株なら1000箇所)、FUT法であればメスを使って皮膚を切ったりするため、どうしても痛みに関する不安はある所かと思います。植毛は局所麻酔を用いて実施されるため、その麻酔を打つ際にチクリと一瞬痛みはあります。当院では局所麻酔を打つ前に鎮静剤という、リラックスする薬を注射してから麻酔を行っていますので、大抵の方は眠っているかボーっとした状態で、あまり気付かないうちに麻酔が終ります。その後は麻酔によって、手術中は基本的には痛みを感じる事はほぼありません。手術後の回復もFUT法に比べると早い傾向があります。詳しくは手術を行うクリニックにてご確認ください。
Q.FUE法で2000株以上の移植は可能ですか?
A.理論的には可能ですが、過剰な採取にはご注意ください
理論的にはFUE法では生涯約2,000~3,000株程度まで可能と言われていますが、FUE法は傷痕を縫合処理せずに開放したままにするため、採取する株数が多くなるほど、ドナー部の密度が下がり過ぎてしまったり、傷同士が繋がってより大きな傷跡になってしまったり、採取の集中を避ける為に、本来のドナー採取範囲外から採取が行われてしまう(AGAに強い性質を持つ移植毛以外の毛が移植されてしまう)等のリスクが高まります。つまり、FUE法で過剰に採取してしまうとその分特有のリスクも比例して生じるという事です。必ず医師と事前に自身の場合はどの程度までの採取が可能なのかや、希望の株数を採取した場合の傷痕の症例を確認するようにしましょう。
なお当院では、FUT法とFUE法の両方を取り扱っておりますが、当院以外も含めた数多のFUE法のケースを拝見したり、お話をお伺いする中で、FUE法の最大のメリットである傷痕の目立たなさを享受して、無理をしない植毛をして頂くためにも、1,000株以上の植毛はFUT法をお勧めしており、FUE法での植毛は基本的に1回1,000株未満とさせて頂いております。
Q.FUE法が向いているのはどんな人ですか?
A.傷痕、眉毛、ヒゲ、狭い範囲など、少量の移植に向いています
広範囲や大量の移植ではなく、狭い範囲や少ない量の移植(傷痕、眉毛、ヒゲなど)に向いています。FUE法は生涯で約2,000~3,000株程度まで可能と言われていますが、最大のメリットともいえる「傷痕が目立たない」を無理せずに享受する為には、不自然な密度にならない範囲で実施する事が最善策であると当院では考えています。FUE法では採取する株数が多くなると、それに伴ってドナー部(後頭部など)の密度が低下し、薄毛のように見えてしまうリスクが高くなっていきます。そのため、無理に大量の株を採取するのではなく、必要最小限にとどめることが重要です。個人によって違いはありますので、専門の医師に相談をして慎重に治療計画を立てていきましょう。
まとめ
FUE法でよくある質問と回答を紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。FUE法は植毛の方法として、傷が目立ち難い、回復が比較的早いなどメリットのある素晴らしい方法ですが、移植数が増え過ぎると傷痕が目立ちやすくなったり、密度が低下したりとデメリットもあります。
重要な点は、複数のクリニックで話を聞いて、FUE法について理解を深めておく事です。どの程度移植したら、どのような傷痕が残るのか、ドナー部の密度低下はどの程度までなら許容範囲なのかなどを医師に確認しておきましょう。もし偏りのない話を聞きたい場合は、FUE法とFUT法の両方を取り扱っているクリニックでも相談をしてみると良いでしょう。実際にFUE法とFUT法についての経験に基いたメリット・デメリット、副作用やリスクなどの話を聞くことができます。その上で、ご自身に合うと思われるクリニックで植毛治療をされるのがよろしいかと思います。
1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院として、FUT法とFUE法の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、FUT法・FUE法それぞれのメリット・デメリット、副作用、リスク等を、経験豊富な医師が実際の経験に基いて説明させて頂き、直接お悩みを承った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。
監修医師プロフィール
東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら)
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太
