かつらについて【医師監修】

 かつらは、AGAやFAGAなどの薄毛で悩んでいる方なら誰でも一度は思い浮かぶアプローチのひとつではないでしょうか?そこで今回は、かつらについてご紹介させて頂きます。
 かつらは、かぶるだけですぐに高い密度が得られ、広い範囲の薄毛をカバーできるという点が大きな魅力です。また、ご自身のご希望通りの毛量や髪形を装着するだけで実現できるため、かつらはQOLの改善にも役立つ場合があります。但し、蒸れたままの使用により頭皮にカビが発生してしまう可能性や、将来を見越したプランや種類にしておかないと、思いの外費用がかかってしまう可能性など注意しておく点もあります。かつらは、個人の特徴や希望に合わせた種類やプランなどを選ぶ必要があるため、最終的には専門家(メーカーや専門サロン等)に相談するなどして、慎重にご検討頂くことをお勧めいたします。

かつらとは?ウィッグとの違い

 かつらについて紹介する前にまずは、かつらとウィッグの違いについて知っておきましょう。結論から申し上げますと、両方とも大まかにいうと同じもので、共に装着するだけでボリュームのある髪型を楽しむ事ができます。ただし、日本において一般的には、AGAなどの薄毛をカバーしているものが「かつら」であり、おしゃれを楽しむものが「ウィッグ」と表現される傾向があります。なお、部分的なかつらはヘアシートやヘアピースと呼ばれる場合があります。本記事では、その前提を踏まえて、薄毛をカバーする事を主目的に置いた「かつら」についてご紹介させて頂きます。

かつらの相場と値段の違い

 かつらは選ぶ種類やプランによって大きな違いがあり、安いものだと数千円のかつらから、高いものだと数十万円のものまでございます。なぜ値段にこれほどの違いがあるのか主な違いを見てみましょう。下記以外にも目的や機能性、フルオーダーかセミオーダーなのか等様々な違いがございます。更に忘れてしまいがちなのは、かつらは購入後も費用が掛かる場合があるという事です。メンテナンスやフォロー体制、修正や買い替えなども考慮しておく必要がございます。詳しくはホームページなどで確認しておきましょう。

素材の違い

 価格が安いかつらだと、基本的には安い素材が使われています。例えばポリエステルなどで人工的に作られた髪の毛で仕上げていくので、数千円からかつらが手に入ります。但し、髪質が人工的であったり、機能性も低く普段の生活に取り入れる目的としては不向きの場合がほとんどです。
 一方、高いかつらには、人間の髪の毛や独自開発の素材が使われており、より自然に見えるよう仕上がります。また、毛髪だけでなく土台の素材にも大きな違いがあり、これらの質によって自然な仕上がりになるかどうかが大きく変わってきます。

見た目の違い

 価格の違いは素材のみならず、その作り方によっても見た目に大きな違いとなって現れます。数千円の安いかつらですと、機械植えで作られた生え際やボリューム感、質感などの違和感から、明らかにかつらを被っているように見えるため、より自然な見た目を重視する人は注意しましょう。高いかつらですと、つむじの生え方などを自然に見せるために、細かく手作業で作っているところもありますし、髪の質感もより自然に見えるよう作られています。高額なものは、そもそもがオーダーメイドでの製作が基本となります。より自然なかつらを選びたい場合は、オーダーメイドのかつらを検討しておきましょう。

装着感の違い

 かつらを被った時にも、土台や装着方法において値段の違いがわかるでしょう。特に値段が安いかつらは、長時間被り続けると機能性の低さからストレスを感じやすくなります。頭が蒸れやすい傾向があるだけではなく、サイズも自分用にカスタマイズされていないので、かつらで締め付けられて痛みを感じてしまうなど違和感を感じてしまいます。それに対して高いかつらですと、最初から1日中被ることを想定して作られている場合も多いため、機能性が高く、個別にカスタマイズにされている場合も多いため、違和感なくかつらを被り続けられる傾向がございます。

かつらと植毛の違い

 かつらと植毛はAGAなどの薄毛への対応策という意味では同じですが、それぞれ全く違うアプローチとなります。それらの違いをご案内させて頂きます。詳細についてはそれぞれの専門サロンまたはクリニックにご確認ください。なお、本記事で挙げる「植毛」は「自毛植毛」を指しますので、ご了承ください。

費用

かつら
1度の購入で数千円~数十万円。品質やプラン等によって金額が変わります。また、取り換え、メンテナンス、買い替えなどで追加の費用が発生する場合がございます。
植毛
1度の治療でおよそ数十万円~百数十万円。FUTやFUEなどの方法、希望本数等によって金額が変わります。取り換え、メンテナンス・継続購入等の追加費用は発生いたしません。

効果

かつら
装着した瞬間からボリュームアップが可能。装着している間は好みの髪型を楽しむ事ができます。
植毛
植毛後生え揃うまでに約1年ほどかかります。1度の手術で永続的な効果が期待できます。自身の毛が生えてくるAGA・薄毛に対する医学的な治療法です。

管理

かつら
雑菌が繁殖したりスタイルが崩れないよう専用のスタンドを使って直射日光を避けて保管します。また、専用のシャンプーを使用して洗ったり、ブラッシングをする、熱に気を付けるなどして長持ちするよう心掛けます。定期的または劣化が気になったら専門店での対応が必要です。
植毛
移植毛が定着した後は、ご自身の他の髪の毛同様の管理で大丈夫です。染髪や洗髪、パーマやカラーリング、整髪料の使用も問題ございません。伸びてきたら散髪して整髪します。

耐用年数

かつら
品質にもよりますが、毎日同じものを被り続けたとしたら、きれいに被れる期間が約2年~3年程度といわれており、早い人だとおよそ1年でダメージが気になり始める場合があるようです。
植毛
移植毛はAGAに強い性質を持つため、定着後は永続的な効果が期待できます。

使用方法

かつら
金具(クリップ)式、編み込み式、貼付け(テープ、接着剤)式など、それぞれの方法で自分または専用のサロンにて装着を行います。
植毛
移植毛の定着後は特別な手入れは一切なし。自分の毛髪同様に伸びてきたら散髪して整えるだけです。

 上記以外に精神的な面で見てみると、かつらは、どうしても薄毛を「隠している」という精神的な負担が常につきまといますが、自毛植毛は、ご自身の頭髪なので「隠す必要がなく」、精神的な負担が無いという点も大きな違いと言えるかと思います。

かつらと植毛のメリット・デメリット

 かつらと植毛は、それぞれにメリットとデメリットがございます。代表的なものをいくつかご紹介させて頂きます。

メリット

かつら
・即効性がある。装着後すぐにボリュームアップが可能
・装着するだけで好きな髪形を楽しむ事ができる
・髪型や髪色などを自分好みにする事ができる
・手術を伴わない為、比較的簡単にお試しが出来る
・好みのかつらを複数使い分ける事ができる
植毛
・持続性がある。AGAに強い髪の毛を移植する為、永続的な効果が期待できる
・自分の髪と同様の管理で済むため、日常生活をそのまま維持できて管理が楽
・メンテナンスや買い替えなどで追加費用が発生しない為、長期的なコストパフォーマンスに優れる
・時間をかけて生え揃うため、周囲から気付かれにくい
・「外れる」心配がないので水や風を気にすることなく、スポーツやアクティビティを楽しめる
・薄毛を改善させる医学的な治療法

デメリット

かつら
・「外れる」というリスクがある
・即ボリュームが変化するので、始めるタイミングや外すタイミングが難しい
・長く愛用する為に管理が必要であり、メンテナンスや買い替えなど都度費用がかかる場合がある
・長時間の蒸れにより頭皮にカビが生えてしまったり、装着方法次第(結ぶ、編み込む等)で薄毛がより進行してしまう可能性がある
・AGA・薄毛自体を改善させるわけではない
植毛
・必ずドナー部にドナー採取痕(FUT:1本の細い線状痕、FUE:米粒大の小さな傷が採取数と同じ数)が残る ※髪を伸ばすことで隠せます
・効果は個人の体質や特徴による
・手術を伴うため、一時的ではあるが副作用が出る可能性がある
・1度の費用が比較的高額
・効果を感じるまでに時間がかかる(およそ1年程度)

かつら装着後の自毛植毛について

 かつらを装着されている方で、自毛植毛を希望される方はたくさんいらっしゃいます。その際に事前にご留意頂いておくべき点をお伝えさせて頂きます。

かつらと同じ密度は難しい場合がある

 まず第一に、植毛でかつらの密度を再現することは非常に難しいことを御理解いただく必要があります。かつらは種類にもよりますが、一般的に非常に高密度で出来ています。10代、20代くらいの方の髪の密度と同じか、あるいはそれより高いくらいの密度で出来ていることがあります(そのため、お年を召した方のかつらは毛量が多すぎて違和感に繋がる場合があります)。その密度を植毛で実現しようとすると、1回の移植では足りず、同じ部位に2回移植するくらいでないと実現できません。しかし1回の手術で移植できる株数には限りがありますし、生涯で採れる株数にも限りがあります。かつらを着けていらっしゃる方は広い範囲で薄毛が起こっている場合が多く、広い範囲をカバーしようとしたら、同一部位に2回手術して密度アップする、というより1回目の手術で前頭部、2回目の手術で頭頂部、というように移植部位をずらして移植を行うことが多いです。そのため、「かつらを装着した自分」のイメージをベースに考えると、「植毛してかつらを外した自分」というのはどうしても密度が低く見えてしまうことが多いのです。

移植後はかつらを装着できない期間がある

 第二に、術後しばらくはかつらを装着できない期間がある、ということです。別稿でも説明していますが、植毛の術後しばらくは、移植毛が抜けないようになるべく頭皮を安静に保ち、摩擦などは起こさない方が良いです。少なくとも、術後3日くらいは、かつらを装着することは控えていただく必要があります。また、かつらの装着方法はテープ式やクリップ式などがありますが、例えばテープ式で移植した部分にテープを張って装着してしまうと、外す時に移植毛が抜けてしまいますので、このような場合には術後1週間は控えていただく必要があります。クリップ式で、移植した部分に触れないようにして装着できるようであれば術後4日目くらいにはかつらを装着することが出来ます。

かつらを外すタイミングを考慮しておく

 第三に、どのタイミングでかつらを外すか、という問題があります。植毛した髪が生え揃うのは術後1年かかりますので、術後すぐにかつらを外すことは出来ません。移植して1年はかつらを着用され、1年後に生え揃ったタイミングで外されることが多いですが、移植面積によっては1年後に2回目の手術を行い、それが生え揃ってから(つまり、初回手術から2年後に)外す方もいます。

まとめ

 かつらは、装着後すぐに希望通りのボリュームアップが図れる点が最大のメリットであるAGA・薄毛の対策法です。ただし、かつらのタイプや質、管理・運用方法によってはより薄毛を進行させてしまう可能性や、「隠す」ことに精神的な負担を感じる場合もございますので、注意が必要です。薄毛をカバーするためにかつらを使うのであれば、専門家にしっかりメリットやデメリット、発生する費用等を説明してもらい、ご自身で納得をした上でお決めになるようにしましょう。  
 なお、かつらは日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」においては、

かつら着用は脱毛症状を改善するものではないが、通常の治療により改善しない場合や、QOLが低下している場合に、行ってもよいことにする

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 - 日本皮膚科学会

とされていますので、直ぐに薄毛を隠したい場合や植毛した後の移植毛が生え揃うまでに使用する、などの際にはメリット・デメリットを十分考慮された上で、検討されてもよろしいのではないかと思います。
 AGA・薄毛自体を改善したいとお考えの方は、当クリニックのAGA治療薬や自毛植毛をご検討頂くこともおすすめです。専門の医師が無料で相談をお伺いさせて頂きますので、AGA・薄毛のお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

自毛植毛・AGA治療|紀尾井町クリニック 医師 中島