植毛後の経過(1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後)【医師監修】

自毛植毛は後頭部など毛が豊富でAGAの影響を受けにくい部分から自分の毛根を採取し、薄毛部分に移植する治療方法で、一度定着すれば移植毛は自分の髪と同じように生え続けることが期待できます。本コラムでは、自毛植毛の代表的な方法であるFUT法とFUE法の概要とともに、手術後に移植毛が生着して成長するまでの経過(主に1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年後の代表的な様子)に焦点を当てて紹介します。「植毛したらどういう経過になるんだろう?」という植毛を検討中の方や、実際に手術を受けて「これからどんな風に髪が生えてくるのだろう?」と思われている患者様にとって、術後のイメージの目安がつかめる内容になれば幸いです。なお、自毛植毛の効果は個人の状況や体質、担当するクリニックなどによって差がありますので、あくまでもひとつの目安としてお考えいただけますようお願いいたします。
- 1. FUT法・FUE法の概要
- 1.1. FUT法(Follicular Unit Transplantation)
- 1.2. FUE法(Follicular Unit Extraction/Excision)
- 2. 術後の経過:時間ごとの一般的な流れ
- 2.1. 術後経過の目安
- 3. 術後1ヶ月:移植毛が抜け落ちる時期
- 4. 術後3-4ヶ月:発毛の兆しと変化
- 5. 術後6ヶ月:髪が生え揃いはじめて変化を感じる時期
- 6. 術後1年:いよいよ完成!効果を実感する時期
- 7. よくある質問:痛み・傷跡・不安へのQ&A
- 7.1. Q. 手術や術後の痛みが心配です。痛みは続きますか?
- 7.2. Q. 傷跡が残ると聞きますが、人にバレませんか?
- 7.3. Q. ショックロスって何ですか?また防ぐ方法はありますか?
- 7.4. Q. 術後、効果を実感できるのはいつ頃ですか?なかなか生えてきていない気がします…
- 7.5. Q. 植毛した髪は一生抜けないと聞きます。本当に半永久的に生え続けますか?
- 8. まとめ
FUT法・FUE法の概要
自毛植毛には大きく分けてFUT法とFUE法という2つの術式があります。それぞれ採取法や傷跡に違いがあるため、まずは概要を押さえておきましょう。個々の希望や条件に合わせて、両法のメリット・デメリット、特徴や注意点などを踏まえ最適な方法を選択することが重要です。
FUT法(Follicular Unit Transplantation)
後頭部のドナー部位の皮膚を細長い帯状に切除して毛根を含む組織(グラフト)を採取し、切除部位は縫合します。その後、そのグラフトから毛穴単位に株分けして薄毛部に移植します。FUT法の最大の利点は、多くの株数を採取・移植できる点で生涯に採取できるドナー株数はFUEの約2倍(約5,000~7,000株)になります、そのため大量の移植や広範囲への移植に向いています。メガセッション(大量株移植:1回の手術で2000~3000株程度移植を行います)にも適しており、広範囲の薄毛でも比較的短時間でボリュームアップが期待できます。一方、後頭部に線状の傷跡が残る点がデメリットですが、縫合時にトリコフィティック縫合法という特殊な技術を用いて傷跡からも毛が生えてくるように処置すれば、髪の毛が傷を覆って目立ちにくくなります。実際、坊主等の極端に短い髪型にしない限り傷跡はほとんど分からず、髪の長さが約2~3cm以上あればほぼ隠れます。
※詳細は「ボリューム植毛FUT」をご参照下さい
FUE法(Follicular Unit Extraction/Excision)
「くり抜く植毛FUE」とも呼ばれる方法です。メスで皮膚を切開せず、後頭部のドナーから直径1mm程度の特殊なパンチ型(筒状の刃)の器具を使って毛根ごと株を一つ一つくり抜くように採取します。FUE法の利点は一つ一つの傷痕が小さな米粒大と小さいため、適切な採取数であればFUT法よりも傷痕が目立たないことと、ドナー部位の回復が比較的早いことです。生涯に採取できるドナー株数は約2,000~3,000株とFUTの約半分程度になる為、少量の移植や狭い範囲への移植に向いています。毛質や毛根の太さに応じて最適なサイズのパンチ(1mm前後)を選択し、毛根へのダメージを最小限に抑えながらひと株ごとに採取していくのが特徴で、ひとつひとつの傷跡は直径約1mm程度の白い点状となり、傷痕が密集しないようにドナー部で散らして広範囲に採取していきます。重要なのは採取した数分だけ傷痕が残る点です(1000株採取なら1000個傷痕が残る)。一つ一つの傷はごく小さいため、髪の毛が約1~2cm以上あれば点状の傷は目立ちにくくなります。デメリットとしては、生涯に採取できる株数はFUT法よりも少ない点や、採取し過ぎるとドナー部が虫食い状態の薄毛となってしまい、採取するほどに密度が低下していくため注意が必要です。
※詳細は「くり抜く植毛FUE」をご参照下さい
術後の経過:時間ごとの一般的な流れ
FUT法・FUE法いずれの方法でも、移植した毛髪が実際に生え揃うまでには時間がかかります。その間、「本当に生えてくるのか?」「いつになったら効果を実感できるのか?」と気になってしまうものです。ここでは術後の経過を分かりやすくまとめるために、時間経過ごとの主な変化を一覧表にしました。個人差はありますので、あくまでも一つの目安として参考になさってください。
術後経過の目安
経過時間 | 移植部・ドナー部の主な状態 |
24時間後 | 手術当日は後頭部に包帯を巻いて帰宅します。翌日(24時間後)に包帯を外します。ドナー採取部(後頭部)はヒリヒリする感じがあるかもしれませんが、痛み止めの内服でほとんど抑えられる程度です。移植部は赤みがあり、徐々に乾燥してカサブタになってきます。 |
1週間後 | 移植部にできた小さなかさぶたが取れ始めます。剥がれ落ちたかさぶたに移植した毛が付いていても、毛包組織はすでに定着しているので心配いりません。ドナー部(FUT法の場合の縫合部)は徐々に傷が安定し痛みも軽減していきます。 |
2週間後 | FUT法の場合、ドナー採取部の傷を吸収性縫合糸(抜糸が不要な、いわゆる「溶ける糸」)で何層かに分けて縫合します。このうち一番外側の糸が溶けて切れてくるのがこの時期です。シャワーなどで洗髪すると、ポロポロと糸くずが取れてきますが、通常の経過ですので心配いりません。 |
1ヶ月後 | 移植した毛が抜け落ち始めてきます。多くの場合、移植毛は術後1ヶ月前後に一旦抜け落ちます。これは毛周期(ヘアサイクル)の関係であり、毛根組織はすでに定着しているので心配いりません。また、それとは別にショックロスと呼ばれる、移植部に元々生えていた既存毛の一時的な抜け毛の増加がある場合がありますが、ショックロスは4~5ケ月も過ぎれば、また生えて戻ってきます。ドナー部の傷はFUT法の場合細い線状痕になり、FUEの場合点状痕が採取した数分残りますが、いずれも髪を伸ばすことで隠すことができます。 |
3~6ヶ月後 | 早い方では徐々に新しい毛がチラチラと生え始める時期です。とはいえこの段階では産毛のような、細く短い毛がまばらに顔を出す程度で、見た目の変化はそこまで目立たちません。移植部の赤みやピンク色の色味はこの頃にはかなり薄れ、注意深く見ないと分からないレベルになります。個人差がありますが、まれに生え始めの毛に強い縮れやカール癖が出ることがあります。これは移植に伴う一時的な現象で、時間とともに落ち着いていきます。 |
6~12ヶ月後 | 移植毛がさらに成長し1本ずつが徐々に太くなっていき、髪全体のボリューム感が徐々に増してくる時期です。移植部の毛も他の既存毛と遜色ない太さ・質感に近づいてきます。個人差はありますが、この頃までに移植毛の大部分が発毛を開始している場合が多いです。とはいえまだまだ変化の途中の段階です。 |
1年後 | 移植毛がほぼ生え揃う時期です。当院のケースでも、多くの方が術後約1年で移植毛が伸びてきて効果を実感し始めています。この頃には周囲の髪の毛にもなじみ始めてきて、移植部位であることを意識せず「普通の髪」として扱うことができます。移植毛はその後も自分の髪として生涯伸び続けることが期待できます。(生え揃うのにもう少し時間がかかるケースもあります) |
※上記は一般的な目安です。実際の経過には個人差があります。例えば、生え始める時期が早い方もいれば、もう少し遅れて8~9ヶ月目で一気に発毛する方もいます。また、1年時点でまだ短かった毛がその後さらに太く長く成長し、1年半~2年かけて最終的なボリューム感が出てくるケースもあります。本人にとっては非常にもどかしい所ではありますが、大切なのは、途中経過で焦らずに医師の指示通りケアを続けることです。では次章から、経過の各段階(1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年後)ごとに詳しい状況と注意点を見ていきましょう。
術後1ヶ月:移植毛が抜け落ちる時期
移植部(植毛した部分)には術直後、小さな赤い点々とかさぶたができます。これは移植した各毛穴の周囲にできた血のりで、その後乾いて茶色いかさぶたとなり、1週間後以降の洗髪により自然に剥がれ落ちます。強く擦ったり無理に剥がしたりする必要はありません。植毛後10日目頃までには、かさぶたはきれいになくなことが多く、移植部の見た目はかなり落ち着きます。最初の1週間は移植部を擦らないよう注意が必要です。手術翌日夜からは霧吹き状のスプレーで患部を濡らす「濡らし洗い」で優しく洗髪を開始し、およそ1週間後以降は指の腹で軽く円を描くようにやさしく洗う「擦り洗い」へ移行します。10日もすれば通常の洗髪が可能になります。
ドナー部(後頭部の採取部分)については、FUT法の場合は細長い線状に傷口を縫合してあり、患部を清潔に保ち指示された消毒等のケアを続けます(当院では術後2週間程度で溶ける糸を使用していますが、そうでない場合は抜糸が必要です)。抜糸後は傷は既にふさがっており、あとは時間経過とともに細い線状の白い傷痕に落ち着いていきます。傷跡の赤みも徐々に薄れ、術後1ヶ月頃には薄いピンク~肌色になっています。一方、FUE法の場合は多数の小さな穴が空いた状態ですが、こちらも術後数日で表皮は閉じて点状の傷になります。1週間もすればかさぶたとともに目立たなくなり、2週間後には小さな白い斑点状の痕のみが残る状態です。FUT法・FUE法いずれの場合も、術後数週間は後頭部に軽い突っ張り感や違和感を覚えることがありますが、これも次第に治まっていきます。FUT法の傷跡は極端な短髪にしない限りは髪で隠れるため、他人から見て植毛手術を受けたと分かる心配はほとんどありません。
術後1ヶ月前後までには、移植した毛が一旦抜け落ちる現象が起こり始めている場合が多いです。これは決して失敗ではなく、移植された毛根が新しい環境で成長を再開するための準備段階であり、原則移植毛はいったん抜けます。但し、中には「抜けずにそのまま伸び続けた」という方もいます。実際、当院へ頂く相談でも「前回の植毛では抜けなかったのに、今回は抜けてしまった」「1回目と2回目の手術で経過が違う」といった患者様からの声が寄せられています。同一人物でも毎回同じ経過になるとは限りません。いずれにせよ、1ヶ月時点では目に見える増毛効果はまだ出ません。むしろ手術前後の影響で「手術前より薄くなっている…」と不安になることさえあります。しかしこれは順調な経過の一部です。術後約1年頃からが効果の実感を期待できますので、焦らず構えていましょう。このタイミングでは特別なケアは必要なく、クリニックから指示された洗髪・外用薬の使用などを続けて頭皮を清潔に保ち、あとは移植先で再び髪の毛の成長が始まる兆しである「発毛の芽」が出てくるのを待つのみです。 なお、ショックロスという移植毛ではなく「移植部に元々生えていた既存毛」の脱毛が起こることを指します。移植の刺激で一時的にその部分の元から生えていた髪が抜け落ちてしまう現象で、特に高密度で植毛を行ったケースなどで目立つことがあります。但しショックロスで抜けた既存毛は、毛根自体が失われたわけではないので、数ヶ月ほどで自然に元通り生えてきます。このように術後しばらくは一進一退に感じられるかもしれませんが、裏を返せば毛根はしっかり頭皮に定着し、着実に次の成長段階へ進んでいるということです。とはいえ、やはり気になる方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は経過や今後の見通しについて担当の医師に遠慮なくご相談されると良いでしょう。
術後3-4ヶ月:発毛の兆しと変化
植毛手術から3-4ヶ月が経過すると、早い経過の方であれば新しい毛が生え始める兆しが見られ始めてきます。もっとも、3-4ヶ月時点でフサフサに生え揃うわけではありません。先述の脱毛期を経て、眠っていた移植毛の細胞が再び成長を開始するまでには通常3~4ヶ月程度かかるためです。例えば鏡をぐっと近づけてよく見ると、植毛部の皮膚から細く短い産毛のような毛がいくつか顔を出しているかもしれません。「もしかしてこれが新しく生えてきた毛かな?」と気付く方もいらっしゃいます。そうした毛が徐々に増えていくことで、この時期から少しずつ発毛を実感し始めます。
ただし3ヶ月目はまだ変化の度合いに個人差が大きい時期でもあります。早い方だと「明らかに毛が生えてきた!」と喜ばれますが、通常~遅い方だと「まだ全然変わらない…」と不安になる場合もあります。どちらも正常な範囲ですので、焦らずもうしばらく様子を見守りましょう。というのも、移植毛の発毛時期は人によってズレがあり、8ヶ月以上経ってようやく芽吹き始める場合もあるためです。
3ヶ月頃の移植部の見た目は、よく見ると短い毛がまばらに生えているものの、密度としては術前と大差ないように見えることが多いです。「抜けたまま生えてこなかったらどうしよう…」と不安になる気持ちも分かりますが、ここはじっと我慢のしどころです。髪の毛には成長サイクルがあり、休止期を経てから新生毛が成長してくるため、生え揃うまでにタイムラグがあるのです。特に広範囲に植毛した場合、部位によって生え始めるタイミングに差が出ることもあります。
移植毛の毛質について補足すると、この時期に生えてくる毛は細く柔らかいことがほとんどです。なかには「縮れ毛」のようなうねりやカールが強く出ることもあります。このくせは一時的なもので、時間とともに徐々にくせは弱まっていきます。1~2年ほど経過すると、ドナー部位に残っている毛と同じ性質(太さや質感)の髪が生えてくるようになるため、それまでは気長に様子を見るのが良いでしょう。もしどうしても気になる強いくせが出た場合は、ストレートパーマなどで一時的に整えることも可能です。
ドナー部については、3ヶ月も経てばFUT法の線状の傷跡、FUE法の点状の傷跡ともにかなり目立たなくなっています。FUT法の場合、傷跡部分の毛もトリコフィティック縫合をされている場合は生え始めてきており、周辺の髪の毛を2~3cm以上伸ばしていれば目立たない程度には回復している場合がほとんどです。FUE法の場合も、直径1mm大の白斑点(無毛部)が後頭部全体に散らばっている状態ですが、ドナー周辺の髪が1~2cm以上に伸びていればほぼ隠れます。
総じて、3~4ヶ月は「発毛の芽」が出始める時期です。変化が緩やかでじれったく感じるかもしれません。しかしここまで順調に来ていれば、毛根はしっかり皮下に定着しています。あとは毛周期に従って毛が生えてくるプロセスを待つのみです。
術後6ヶ月:髪が生え揃いはじめて変化を感じる時期
手術から半年が経過すると、移植毛は徐々に太く成長してきて見た目の変化を感じ始める時期となります。3ヶ月頃から生え始めた毛が成長して来る頃であり、一般的に実感が湧いてくるのは術後6~8ヶ月以降頃で、鏡を見るたびに変化を感じられる方も多くいらっしゃいます。
髪の長さも、この時期には3~5cm程度まで伸びていることが多く、髪質には個人差がありますが、触った感じも徐々にコシが出てきて、ブラシで軽く整えられるくらいになっている場合もあります。生え際に植毛した方であれば、おでこが狭くなり顔の印象が変わってきます。頭頂部であれば、地肌の露出具合に変化が生じて来ているのを感じる頃でしょう。とはいえ、6ヶ月で最終完成ではありません。この時点で満足をされる方もいらっしゃいますが、まだ生え始めたばかりの毛や成長途中の毛も混在しています。密度に関しても物足りないと感じる場合もあるでしょう。しかし植毛の効果はこの先さらに高まる場合があります。 移植毛は太さや長さが十分になるまで(移植元の髪の状態)成長を続けますし、休止期で遅れていた毛も7~8ヶ月目以降に次々と発毛してくる場合があります。中には半年まで発毛の兆しが見られなかったが、以降にグッと変化が出てくる場合もあります。
術後半年も経てば、普段のヘアケアや生活もほぼ制限なく楽しめます。パーマやカラーリングも術後1ヶ月以降であれば問題ありません(念のため担当医に相談ください)。植毛による一時的な頭皮の赤みも、6ヶ月頃にはほとんど消えているはずです。FUT法の傷跡が髪をかき分けると薄っすら線状に見えることはありますが、周囲の髪を伸ばしておけば日常生活で人目に触れる心配はまずありません。FUE法のドナー傷も同様です。触ったときにわずかにデコボコや突っ張り感が残る方もいますが、それも徐々に滑らかになっていきます。もし術後半年の時点で何らか気になる症状が残っていれば、遠慮なくクリニックに相談しましょう。追加のケアや治療法がある場合は提案してもらえます。
最後に、半年時点で次の植毛手術を検討するケースについて触れておきます。例えば広範囲の薄毛で1回の手術ではカバーしきれない場合やさらなる密度アップを希望している場合、あるいは将来的な薄毛の進行を見越して段階的に植毛を計画している場合などです。そのような場合、一般的に追加の植毛は最短でも術後6ヶ月以降に行います。ただし、できれば術後1年待ってから行うことを推奨しています。この理由は、1回目の手術結果がしっかり出てから2回目の手術を行った方が、より良い結果に繋がりやすいからです(生え揃った後であれば、1回目の手術で移植した部分にもう少し密度が欲しい、といった要望にも応えられます)。当院でも2回目以降の植毛相談は、原則として1年以上、少なくとも6ヶ月後の状態を確認してから判断しています。
術後1年:いよいよ完成!効果を実感する時期
手術から1年が経過すると、移植毛が生え揃ってきます。この頃には移植部位の毛髪は成長した状態となり長さも十分にあります(5~10cm程度)。10cmも髪があれば、短髪からミディアムヘアまで周囲の既存毛とある程度整えることができ、自然に馴染ませることができることでしょう。個人によって1年半以上かかる場合もありますが、植毛の効果を実感する時期といえます。
移植毛は既存の毛と同じヘアサイクルで生え変わりを繰り返し、生涯にわたって伸び続ける事が期待できます。AGAの影響を受けにくいドナー部の毛根を使っているため、基本的には将来的にも抜けにくく、半永久的な効果の持続が期待できます。ただし、移植した部位以外の元々の毛髪については、この先もAGAの進行で薄くなる可能性があります。植毛は脱毛の原因そのものを止める治療ではないため、たとえば周囲の毛が将来薄くなっていくと、せっかく植毛した部分とのコントラストで再び薄毛が目立ってしまうこともありえます。植毛デザインを考える際に将来の薄毛進行まで見据えたデザインをする事が重要となります。AGA治療薬の投与なども検討し、既存毛も出来る限り長く維持する事も大切になります。また必要に応じて追加の植毛を検討されるのも良いでしょう。1年が経過した段階で、「もう少し密度を上げたい」「別の部位も植毛したい」と新たな希望をお持ちになった場合は、1年間の経過を踏まえ、担当医師と十分に話し合って今後の方針を決めていきましょう。
よくある質問:痛み・傷跡・不安へのQ&A
最後に、初めて植毛を受ける方や術後経過に不安を抱える方から当院によく寄せられる質問とその回答を、Q&A形式でいくつかご紹介します。同じ疑問をお持ちの方は参考になさってください。
Q. 手術や術後の痛みが心配です。痛みは続きますか?
A. 局所麻酔と鎮静剤の併用で痛みは最小限に抑えられるため、手術中の痛みはほとんどありません。術後は麻酔が切れた後に後頭部に軽い痛みや突っ張る感じが出ることがありますが、処方された鎮痛薬を飲めば我慢できる程度で収まります。実際、手術当日の夜が痛みのピークで、翌日からは日常生活に支障ないレベルという場合が大半です。万一強い痛みや不安が生じた場合は遠慮せずに手術をしたクリニックに相談をしましょう。
Q. 傷跡が残ると聞きますが、人にバレませんか?
A. 植毛手術のドナー部(移植毛を採取した部位)の傷跡は、方法や回数、体質等によって異なりますが基本的に髪で隠れるため他人には分かりません。FUT法の場合、後頭部に幅1~3mm程度の細い線状瘢痕(縫合した傷痕)が残りますが、髪を少し伸ばせば傷跡は目立ちません。さらに傷跡からも毛が生えてくるトリコフィティック縫合を行えばより目立たなくすることができます(当院では標準実施)。実際には髪の長さが2~3cm以上あれば傷が隠れるので、その程度の長さをキープ頂けるようであれば心配はいらないでしょう。一方、FUE法の場合は後頭部全体に1mm未満の白い点状の傷痕が多数残ります。坊主頭にすると点々が分かりますが、こちらも髪を1~2cm以上伸ばせば隠れるレベルです。術後は傷跡が落ち着くまで帽子などをうまく活用したり、髪型については理容室や美容室で傷痕が目立たない髪型を相談されると良いでしょう。傷痕をさらに目立たなくしたい場合は、FUT法の傷の場合はFUE法による傷修正を行ったり、FUT法とFUE法ともにSMPというヘアタトゥーのようなものでカバーをする等の方法があります。
Q. ショックロスって何ですか?また防ぐ方法はありますか?
A. ショックロスとは、植毛手術の後に一時的に髪が抜け落ちる現象です。既存の髪(周囲の元からある毛)が手術の刺激で抜け落ちることで、高密度植毛を行ったケースや2回目以降の植毛時などに目立つ場合があります。特に元々そこそこ髪のあった部分に追加植毛すると、手術のストレスや麻酔などの影響でその周囲の髪が抜けることがあります。しかしこれも一時的な脱毛で、毛根が死んでしまったわけではありません。抜けた髪は数ヶ月~半年ほどで元通り生えてきます。対策としては、術後にミノキシジルなど発毛を促す治療を併用することで早期の再生を促したり、生えてくるまではパウダー型の増毛を活用するなどです。ただ、ショックロスが起きても最終的な仕上がりに大きな差はありません。仮に一時的に周囲の髪が抜けて術前より薄く見えても、基本的には数か月後には再び生えてきます。詳しくはショックロスについてを参照ください。
Q. 術後、効果を実感できるのはいつ頃ですか?なかなか生えてきていない気がします…
A. 自毛植毛は即効性のある治療ではないため、どうしても効果を実感するのには時間がかかってしまいます。個人によって差はありますが、一般的な経過では、術後3~4ヶ月頃から新しい髪が生え始め、6ヶ月頃には変化を感じ始めるようになり、1年後には完成形となる流れです。途中経過で不安になるのは当然ですが、上記で詳しく述べたように、まずは1年後の効果を期待してお過ごしいただけたらと思います。経過には個人差があるため、「◯ヶ月経てば大丈夫」と一概には言えませんが、目安として半年で見た目に変化を感じ始め、1年でその効果を感じるようになると考えてください。遅い場合は1年半以上経ってから効果を感じ始める方もいらっしゃいます。どうしても不安な場合は途中で遠慮なく手術をしたクリニックに相談をしましょう。
Q. 植毛した髪は一生抜けないと聞きます。本当に半永久的に生え続けますか?
A. 基本的には移植毛は半永久的に生え続けることが期待できます。自毛植毛が「一度生えたらずっと生える」と言われるゆえんは、AGAの影響を受けにくく生涯にわたって生え続ける傾向のある後頭部の毛根を移植に利用するためです。この部分の毛根は男性ホルモンの影響を受けにくく、AGAで前頭部や頭頂部が禿げ上がっても側頭部~後頭部だけは髪が残るのはそのためです。同じ性質を持つ毛根を薄毛部に移植することで、その場所でもドナーと同じように生え続けるようになるのです。もっとも、毛髪にも寿命はありますし、加齢による変化で全く抜けなくなるわけではありません。しかし少なくともAGAによって再び脱毛するリスクは非常に低く、移植毛は末長くあなたの髪の一部として機能し続けるでしょう。そのため仕上がりのデザインを自然にしておくことが重要です。なお、移植毛が将来にわたり生え続ける一方で、既存の髪(ドナーから移植していない元々の髪)はこの先薄くなる可能性があります。そのため術後も必要に応じてAGA治療薬の併用などケアを継続するとよいでしょう。
以上、代表的な質問と回答を紹介しました。この他にも「植毛後いつから飲酒・喫煙してよいか」「運動や入浴の再開時期」「術後にまぶたが腫れることはあるか」など様々な疑問があるかと思います。これらについては、公式サイトの「よくあるご質問」ページに詳細なQ&Aが掲載されていますし、カウンセリング時や術後フォローの際にも丁寧にご説明いたします。初めての植毛で不安な点があれば、どんな小さなことでも遠慮なく質問してください。経験豊富な医師・スタッフが皆様の疑問や不安を解消できるよう親身に対応いたします。
まとめ
自毛植毛の術後経過について、主に1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年と段階を追って紹介してきました。植毛は決して魔法のように一夜で髪が増える治療ではありません。しかし、その持続性の高さは他のどの薄毛対策にも代え難い魅力があります。植毛には術式ごとの特徴や術後の経過について知っておくべきポイントがあります。ぜひ信頼できる専門クリニックで十分なカウンセリングを受け、メリット・デメリットを理解した上でご自身に合った治療法やクリニックを選んでください。また、実は見落としがちなのは手術をした後のアフターサポートの面です。相談しても充分なサポートを受けられないと当院に相談される方もいらっしゃいます。植毛をされる際は、費用や実績も重要ですが、術後でもしっかりと寄り添ってくれるクリニックを選んでおくようにしましょう。最後に、繰り返しとなり大変恐縮ですが本コラムで紹介いたしましたのは、あくまで目安であり、個人によって経過には差があります事を改めて申し添えておきます。
1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院として、国内でも数少ないFUT法とFUE法の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、FUT法・FUE法それぞれのメリット・デメリット、副作用、リスク等を、経験豊富な医師が実際の経験に基いて説明させて頂き、直接お悩みを承った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。また術後も寄り添ったサポートしておりますので、AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。
監修医師プロフィール
東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら)
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太
