薄毛(はげ)と飲酒の関係【医師監修】

薄毛(はげ)と飲酒の関係【医師監修】

結論サマリー

 飲酒は薄毛(はげ)AGAの直接原因ではないものの、過度な飲酒は栄養不足・ホルモン変動・血行不良・睡眠低下を通じて頭皮環境を悪化させる可能性があります。
 体質や飲酒量・頻度などで影響は異なるため、節度ある飲酒(純アルコール20g程度/日)を心掛けておきましょう。

【要点】 薄毛と飲酒の関係は?

・深酒はアミノ酸やビタミンを消耗・吸収阻害し、髪の材料不足を招く
・アルコール代謝の負担でホルモン調整が乱れ、毛周期(ヘアサイクル)に不利に働く
・脱水や食生活の乱れで血行不良・頭皮環境が悪化しやすい
・寝酒で深い睡眠が減り、成長ホルモン分泌と髪の修復が低下する

 飲酒と薄毛の関係は判断が分かれやすく、誤解も生じやすいテーマです。本コラムでは医学的な考え方を前提に、飲酒が髪に及ぼす可能性のある影響や薄毛を予防するための飲酒との付き合い方などを紹介していきます。

飲酒は薄毛の原因になるのか?

 まず結論から述べると、アルコールそのものがAGA(男性型脱毛症)など薄毛を直接引き起こすことは医学的に確認されていません。適度なお酒の範囲であれば、直ちに髪が抜ける原因になるわけではないのです。実際、薄毛の主な原因は遺伝や男性ホルモンによるAGAであり、お酒を全く飲まなくても薄毛が進行する人もいます。一方で、毎日大量のお酒を飲む生活が続けば、髪や頭皮に間接的な悪影響が蓄積することも事実です。過度な飲酒習慣はホルモンバランスの乱れや血行不良を招き、結果的に薄毛を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
 では「適度な飲酒」とはどの程度でしょうか?厚生労働省のガイドラインによれば、節度ある適度な飲酒の目安は1日あたり純アルコールで約20g程度とされています。これはビール中瓶1本(5%500ml=20g)、日本酒1合(15%_180ml=22g)、ウイスキーダブル1杯(43%約60ml=20g)などに相当する量です。もちろん、この量を守れば薄毛にならないというわけではありませんが、健康を害さないためにもひとつの目安として覚えておくとよいでしょう。一方で、この基準を大きく超える飲酒(いわゆる深酒・大量飲酒)を続けると、体にも髪にも負担がかかります。以下では、飲酒が髪の毛にどのような影響を与えるのか、主なポイントを解説していきます。

アルコールが髪に与える主な影響

 お酒は適量であればリラックス効果もありますが、過度な飲酒は身体の生理バランスを乱し、髪の成長に悪影響を及ぼす要因となり得ます。アルコールの分解過程で髪の栄養が消耗されたり、ホルモンバランスが崩れたり、頭皮の血行が悪化したりすることで、結果的に髪の成育が阻害される可能性があります。本稿では主に「栄養素の消耗と吸収阻害」「ホルモンバランスの乱れ」「血行不良と頭皮環境の悪化」「睡眠の質低下」という4つの視点から、アルコールが髪に及ぼす影響について詳しく解説します。

栄養の消耗と吸収阻害

 髪の主成分であるケラチンは数種類のアミノ酸で構成されており(例:シスチン、メチオニンなど)、これらは健康な髪を育むために必要不可欠です。ところが大量のアルコールを摂取すると、肝臓でのアルコール代謝にケラチン合成に必要なアミノ酸が使われてしまいます。「シスチンやメチオニン」などケラチン構成アミノ酸がアルコール分解に消費されるなど、過度の飲酒により髪の材料不足になる可能性が指摘されています。
 さらにアルコールには栄養吸収阻害の作用もあります。たとえば、アルコール代謝の過程で大量のビタミンB1が消費され、加えてアルコール自体がビタミンB1などの吸収を妨げることが知られています。実際、「アルコールを大量に飲んだときはビタミンB1が大量に消費される上、アルコールはビタミンB1の吸収を悪化させ、排泄も促進する」ことが報告されています。その他、ビタミンA(皮膚・粘膜の健康維持)、ビタミンB群(タンパク質からアミノ酸への代謝促進)、ビタミンE(血流促進)など、髪と頭皮の健康に重要な栄養素の吸収も阻害されやすくなります。これらのビタミン不足は頭皮の乾燥や血行不良を招き、結果的に髪の成長に悪影響を及ぼすおそれがあります。
 こうした栄養面での負担は、継続的な深酒によってより顕著になります。たとえば、厚生労働省も適量飲酒を1日純アルコール20g程度と定めていますが、これを超える飲酒が習慣化すると、髪をつくるタンパク質やビタミンが慢性的に不足し、髪が細くなったり抜け毛が増えたりするリスクが高まると考えられます。

ホルモンバランスの乱れ

 アルコールは性ホルモン(テストステロンエストロゲン)の分泌・代謝にも影響を与えます。テストステロンは男性ホルモンの代表格であり、これが5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素で変換されるとジヒドロテストステロン(DHT)になります。DHTは毛乳頭細胞の受容体に結合して「脱毛因子」を増加させ、ヘアサイクルを短くする作用があるため、AGA(男性型脱毛症)進行に関与しています。肝臓はホルモン代謝にも関わるため、慢性的な過剰飲酒で肝機能が低下すると、テストステロンだけでなくエストロゲン(女性ホルモン)の代謝にも支障をきたし、性ホルモンバランスの全体的な乱れにつながる可能性があります。
 特に女性の場合、アルコールはエストロゲン分泌を乱し、ストレスホルモン(コルチゾール)を増加させることでホルモンバランスを崩す傾向があります。エストロゲンは女性の髪の成長期を維持し、髪にハリやコシを与える重要な役割を担っているため、大量飲酒によってエストロゲンが不足すると髪の成長期が短くなり、休止期の毛髪が増えてしまうリスクが高まります。なお、飲酒によってDHTが直接増える確固たる証拠は現時点では確認されていませんが、アルコール代謝の負担によってホルモン調整機能が低下し、相対的にDHTの割合が高まる可能性は否定できません。加えて、喫煙や高脂肪・高糖質の不健康な食事習慣を伴った飲酒は、ホルモン変動や血行不良、活性酸素増加などの複合的悪影響をもたらします。そのため、髪の健康を考える際には「過度な飲酒はホルモンバランスを乱しうる」ということを理解し、量や頻度を抑えることが望ましいでしょう。

血行不良と頭皮環境の悪化

 髪が育つには毛根への十分な血流が不可欠ですが、過度の飲酒は血行不良を招く要因になります。まず、アルコールには一時的な血管拡張効果がある一方で、長期的・大量飲酒では血糖値の上昇や内臓脂肪の増加を誘発し、血液をドロドロにしてしまうことがあります。たとえばビールや日本酒など糖質の多いお酒を多量に飲むと、血液中の中性脂肪が増えて血液循環が悪化しやすくなります。
 また、アルコールは強い利尿作用も持つため、水分不足になりがちです。飲酒後は尿量が増加して体が脱水状態になりやすくなり、皮膚と同様に頭皮も乾燥しやすくなります。頭皮が乾燥するとフケやかゆみが起こりやすくなり、炎症を引き起こして健康な髪の成長を妨げる恐れがあります。
 以上のように、過度な飲酒習慣は血行不良と頭皮環境の悪化を通じて薄毛リスクを高めます。血流が悪い頭皮では毛根に十分な栄養が届かず、同時に乾燥や炎症で髪の成長環境が乱れてしまいます。髪を守るためには、飲酒後の水分補給を心がけておきましょう。なお、飲酒時(後)には、高カロリー・高脂質のおつまみや締めを食べる事も多いかと思いますので、特に深夜食では気を付けるなど生活習慣の改善も大切です。

睡眠の質の低下

 適量のアルコール摂取は眠気を促すものの、その効果は一時的です。寝酒は初期の寝つきをよくするものの、寝酒習慣があると深い睡眠が減少し、夜中に目が覚めやすくなることがあります。眠りが浅い状態が続くと成長ホルモン分泌が減少するため、髪や頭皮の修復サイクルにも悪影響が及ぶ可能性があります。実際、成長ホルモンは入眠後の深いノンレム睡眠時に多く分泌され、毛包や皮膚の修復を助けるため、十分な深睡眠が髪の成長には欠かせません。飲酒で深い睡眠が妨げられると、成長ホルモン分泌が減って間接的にヘアサイクルが乱れるおそれがあります。 また眠りが浅かったり夜間覚醒が続くと日中に疲労感が残り、慢性的に睡眠不足になることでストレスホルモンのコルチゾールが増加し、自律神経の乱れも生じやすくなる事にもつながる可能性があります。これらはすべて頭皮環境を悪化させ、結果的に抜け毛を増加させる要因となり得ます。したがって、髪の健康を守るうえでは飲酒量を適切に抑えるとともに、良質な睡眠習慣を心がけることが重要です。

 このように、過度の飲酒は「栄養の消耗・吸収阻害」「ホルモンバランスの乱れ」「血行不良や頭皮環境の悪化」「睡眠の質の低下」といった複数の側面から、間接的に髪や頭皮のコンディションへ影響を及ぼす可能性があります。飲酒と薄毛の関係は単純な因果関係で説明できるものではなく、生活習慣全体の中でこれらの要因が重なり合って影響する点を理解しておくことが重要です。また、影響の現れ方には体質や年齢、飲酒量・頻度、栄養状態、睡眠習慣などによる個人差も大きく、一概に同じ結果になるわけではありません。髪の健康を長期的に守るためには、飲酒を完全に否定するのではなく、量やタイミングに配慮しながら、栄養・睡眠・頭皮環境を含めた全体的な生活習慣を整えていく視点が大切だと言えるでしょう。

薄毛を予防するための飲酒との付き合い方

 ここまで見てきた通り、飲酒は「必ず薄毛を招く」ものではありません。一方で、量や頻度が増えるほど、栄養・睡眠・ホルモン環境・頭皮状態といった要因を通じて、髪にとって不利な条件が重なりやすくなります。お酒も楽しみながら髪のコンディションを守りたい方は、次の点を意識してみてください。

節度ある飲酒量を守る

 まずは「飲み過ぎない」ことが基本です。目安として、純アルコール量で1日20g程度をひとつの基準に考えるとよいでしょう(体格や体質、性別、持病、服薬状況などで適量は変わります)。たとえば、ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合程度を上限のイメージにして、一気に飲まず、ゆっくり時間をかけて楽しむのがおすすめです。飲酒中は水やお茶をはさみ、脱水になりにくいようにこまめに水分をとりましょう。
 また、毎日飲む習慣がある方は、週の中に「飲まない日」を作るのも一つの方法です。休肝日を設けることで、結果として総飲酒量が減り、睡眠の乱れや食生活の偏り(深酒の締めの高カロリー食など)を抑えやすくなります。髪のためにも、まずは量と頻度をコントロールできる形に整えることが大切です。

栄養バランスに配慮する

 飲酒が増えると、食事の質が落ちたり、つまみが脂っこいもの・塩分の多いものに偏りがちです。髪の主成分はタンパク質(ケラチン)なので、飲む日ほど「主菜(魚・肉・卵・大豆製品)」と「野菜」を意識して、栄養が偏らないようにしましょう。揚げ物やスナック菓子、締めの麺類が続く場合は、頭皮の皮脂バランスや体重増加にもつながりやすいため、頻度を控えるのが無難です。
 不足が心配な栄養素(例:ビタミンB群、亜鉛、鉄など)を補いたい場合、サプリメントを使う選択肢もあります。ただし、サプリは「食事の代わり」ではなく、体調や服薬状況によっては合わないこともあります。特に持病がある方、治療中の方は、自己判断で大量摂取せず、医師・薬剤師に相談したうえで取り入れてください。

生活リズムを整える

 薄毛予防は、飲酒だけを切り取って考えるより、生活習慣全体で整えるほうが実行しやすく、効果も期待しやすくなります。睡眠に関しては、「お酒で寝つく」方法に頼るほど、夜中に目が覚めやすくなるなど睡眠の質が下がりやすい点に注意が必要です。就寝前はスマホや強い光を避け、入浴や軽いストレッチなど、アルコール以外の方法でリラックスできる習慣を作っておくと安定します。
 ストレスも同様で、慢性的に続くと自律神経やホルモン環境を乱し、結果として髪のコンディションに影響することがあります。運動、入浴、趣味の時間など、継続できる形でストレスを逃がす工夫をしましょう。
 さらに、喫煙習慣がある方は見直しをおすすめします。喫煙は血管収縮などを通じて頭皮の循環に不利に働きやすく、飲酒と重なると生活習慣が崩れやすくなるためです。髪のための生活習慣は、「適量の飲酒」「十分な睡眠」「バランスのよい食事」「禁煙(または減煙)」をセットで考えるのが現実的です。

育毛治療中のお酒の注意点

 AGA治療薬フィナステリドデュタステリドなど)は、一般に「飲酒で薬効が直接弱まる」とは考えられていません。ただし、治療中であっても深酒が続けば、睡眠の乱れや栄養バランスの崩れが起きやすく、結果として髪にとってよい環境を作りにくくなります。「薬を飲んでいるから大丈夫」と考えて飲酒量が増えてしまうのは避けたいところです。また、肝機能に不安がある方や、他の薬を併用している方は注意が必要です。飲酒量の調整が難しい場合や体調に変化がある場合は、治療を受けている医療機関に相談してください。

 以上のように、髪を守るうえで重要なのは「完全に禁酒すること」よりも、飲酒量と頻度をコントロールし、睡眠と食事を崩さないことです。お酒も楽しみながら、髪にとって不利な条件が重ならない生活リズムを整えていきましょう。

まとめ

 アルコール自体は薄毛の直接的な原因とはなりませんが、飲み方次第では髪の成長を妨げる間接的な要因になり得ることがお分かりいただけたかと思います。過度な飲酒習慣は、栄養不足・ホルモンバランスの乱れ・血行不良・睡眠障害などを引き起こし、結果的に薄毛を進行させてしまう可能性があります。薄毛や抜け毛に悩む方は、まずはご自身の飲酒量・頻度を今一度見直してみましょう。適量を守り、「お酒はほどほどに、楽しく飲む」ことが髪と健康のためには一番です。お酒をたしなむ方でも、節度ある飲み方と規則正しい生活によって髪が育ちやすい頭皮環境を維持することは十分に可能です。「飲まないとストレスが溜まる…」という人は無理に禁酒する必要はありませんので、上手にお酒と付き合いながらストレスも髪もケアしていきましょう。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院として実績を持つ紀尾井町クリニックでは、長年のノウハウを持った医師が診療にあたり、カウンセリングからデザイン策定、施術まで一貫して担当します。豊富な経験で個人に寄り添った自毛植毛治療を提供していますので、まずはお気軽にご相談ください。

第三者サイトに掲載されている当院の評価(Caloo)

紀尾井町クリニックの自毛植毛や薄毛治療については、
医療口コミサイト「Caloo」にて、
実際に受診した方による評価・口コミが掲載されています。

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監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック東京本院 院長
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師