植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由を解説【医師監修】

 AGA・薄毛の治療法として、植毛は自分の髪の毛が生えてくる大変魅力的な選択肢ですが、植毛はやめた方が良いといわれることがあります。今回は植毛自体をやめた方が良いといわれる主な理由と、注意が必要な植毛の2つのケースを代表例を挙げてご紹介いたします。植毛を検討されている方の参考にしていただけましたら幸いです。
 なお、本記事の植毛とは自毛植毛を指しますのでご了承ください。

植毛自体をやめた方が良いといわれる理由

 植毛をやめた方が良いとして考えられる代表的な理由は、下記のものが挙げられます。主に植毛のメリット・デメリットのうちのデメリットにあたる部分です。このことをよく理解せずに植毛を受けてしまうと、想定外の結果となってしまい後悔に繋がる可能性があります。ご自身の状況やご希望などを踏まえて、デメリットを理解した上で、植毛を受けるかどうか検討するようにしましょう。

体質や毛質によっては適さないことがある

 植毛(自毛植毛)は、自身の髪の毛が生えてくるため、AGA・薄毛の治療として大変魅力的ではありますが、個人の体質や状況などによって効果や結果に差が生じるということを理解する必要があります。例えば「ケロイド体質」といって、傷が白く盛り上がって治りやすい体質の方がいます。ケロイド体質ですと、ドナー採取部の傷跡も太く盛り上がって治るリスクが高まりますので、そのような場合には植毛を慎重に考えていただく必要があります。また、もしドナー採取部の傷が太く盛り上がって治癒してしまった場合の対応策についても、事前のカウンセリングで医師に確認しておいた方が良いでしょう。
 自毛植毛で生える髪の毛はあくまでご自身の毛ですので、ドナー採取部の髪が細い方であれば移植した髪も細くなります。同じ株数を移植した場合でも、細い毛質の方よりも太い毛質の方の方が頭皮を隠しやすいため、満足度の高い治療に繋がりやすいです。
 くせ毛や白髪についても同様で、後頭部の髪の毛がくせ毛・白髪の方は移植した部分でも同じようなくせ・白髪が出ます。頭部全体が同じ毛質であれば問題ありませんが、部分によって毛質が異なるパターンでは違和感に繋がる可能性があります。またヒゲや眉毛への移植を希望される場合は、強いくせ毛の方は特に注意が必要です。「縮毛矯正で髪をストレートにしているが、自毛はとてもくせが強い」、という方は事前に申告した方が良いでしょう。

後頭部に傷が残る

 植毛は、FUT植毛、FUE植毛いずれの方法でも必ずドナーの採取部分に傷痕が残ります。FUTでは、細い線状の傷痕が1本、FUEでは米粒大の小さなくり抜き痕が採取した数分だけ残りますが、いずれも周囲の髪の毛を伸ばす(目安としてFUTなら2~3cm、FUEなら1~2cm程度)ことで傷痕を隠す事ができます。なお、FUEを用いた傷修正やSMP(Scalp Micro Pigmentation)などで傷を目立ち難くすることもできます。

効果を感じるまでに時間がかかる

 植毛は手術後にすぐ効果を発揮する治療法ではありません。基本的には効果を感じるまでには1年間程度かかるとみて頂いた方がよろしいでしょう。なお、AGAで薄毛が進行している場合、この1年間の間に植毛をしていない部分の薄毛が進行してしまい、植毛の効果があまりないと感じてしまう可能性もありますので、極力既存毛を維持できるように手術部位に応じてAGA治療薬のご使用を検討いただくことをおすすめします。

副作用やリスクがある

 植毛手術は手術である以上、手術後の経過中にいろいろな症状や副作用が出現する可能性があります。これらの中にはかさぶたの形成やドナー部分の傷痕など、手術を受ける上でどうしても避けられないものもあります。また、副作用の発生率や程度には個人差があり、年齢、体質、持病の有無、移植範囲や手術回数などによっても異なります。
 症状(痛み、出血、吐き気、はれ等)はいずれも一時的なもので、時間の経過とともに、改善します。ときには、症状の緩和のためにお薬を内服していただく場合もあります。詳しくは「副作用について」をご参照ください。

移植できる毛髪数に限度がある

 植毛は自身のAGAに強い毛髪を活用する為、自身の髪の毛の総量を超えて移植はできませんまた、移植する毛髪はドナーエリアといわれる側頭部から後頭部にかけてのAGAに強い性質を持つ毛髪が生えているエリアから採取しますので、採取できる本数には限度がございます。また、FUT植毛とFUE植毛によっても生涯に採取できるドナー数が違ってきます(FUTは約5000~7000株程度、FUEは約2000~3000株程度)。かつらや増毛のように思い通りの毛量を移植できる訳では無いので、カバーする範囲や将来を考慮した治療計画が重要となります。

1度の費用が比較的高額

 植毛は自由診療となるため、比較的1度の費用が高額となります。医療機関や植毛方法、ご希望の移植数などによって費用は異なりますが、凡そ数十万円~200万円程度かかります。但し、1度の手術で永続的な効果が期待できるため(追加購入やメンテナンス費などがかからない)、他のAGA治療法と比較する際は、長期的なコストも考慮されると比較しやすいかと思います。

不自然なデザインになる可能性がある

 特に生え際への植毛は目立ちやすいため、一直線な生え際や濃すぎる生え際などのデザインは、とても不自然に見えてしまいますし、密度の濃淡を付けすぎてしまったり、進行するAGAを考慮せずに「今」のみを考えたデザインにしてしまうなどによって、不自然なデザインとなってしまう場合があります。これらは治療にあたるクリニック(医師・看護師)の経験不足・技量不足が主な原因となりますので、経験豊富な実績を持つクリニック(医師・看護師)を選ぶことでそのリスクを軽減する事ができます。

注意が必要な植毛とは

 このような植毛には注意した方が良い、というパターンを下記に挙げます。植毛を行う際には、出来るだけ複数の医療機関で話を聞くようにして、もし不安点や疑問点等がありましたら、何度でも確認し、ご自身が理解・納得した上で行なうようにしましょう。

人工毛植毛

 日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」では、人工毛植毛はD評価となっており、「行なうべきではない」とされており、

日本国内で人工毛植毛術を施行することに医療法上の問題はないが、有害事象の発生を看過できないため,安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは、原則として人工毛植毛術を行うべきではない。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 ― 日本皮膚科学会

とあります。
 人工植毛が原因で頭皮の慢性的な炎症、感染、化膿が続き、頭皮が線維化して血流の低下を起こして感染範囲の既存毛も抜けて、永久脱毛状態になってしまう可能性がありますので注意が必要です。

医師との相談が不十分

 植毛は、AGA・薄毛を治療する医療行為です。必ず手術を受ける前に医師からメリット・デメリット、副作用やリスク等についてしっかりと説明してもらい、植毛についての理解を深めて、ご自身が理解・納得した上で、相談をした医師による施術を受けるようにしましょう。医師との相談が不十分ですと、植毛の効果イメージに乖離が出てしまったり、ご自身の希望と治療計画が乖離してしまっていたり、想定外のリスクを感じてしまうなどの可能性が高まってしまいますので注意が必要です。また、ご希望を伝える際や植毛後の不安やケアなどを相談する際に重要な、担当医師との相性も確認できますので、手術前の医師との相談は十分な時間をとってしっかりと行なうようにしましょう。

クリニック(医師・看護師)の経験が浅い

 経験豊富と思われる医師がいたとしても、看護師の経験が不足していれば効果的な植毛結果に繋がらない場合がありますし、その逆も然りです。植毛はチーム医療です。日本では多くの場合、医師が移植毛の採取、縫合、スリット作り等を担当して、株分けや移植毛の植え付け等は医師の指示に従って主に看護師が手分けして行います。この工程はそれぞれスピード、技術力、集中力を要求され、これらは経験により大きく底上げされます。また、植毛のデザインについてもクリニックの実績は重要な要素となります。植毛は10年~30年を見越したデザインに基いて実施されないと将来不自然な状態になってしまいますので、必ず相談の際にクリニック(医師と看護師)の経験を確認しておきましょう。

傷痕に関する情報が不十分

 FUT植毛及びFUE植毛は必ず傷痕が残ります。FUTであれば細い線状の縫合痕が1本、FUEであれば米粒大の小さなくり抜き痕が採取した分だけ残ります。さらにドナー採取部のこれ等の傷痕は、手術を行うクリニック(医師)によって大きく差が出る部分でもあります。FUT及びFUEで、希望移植数を採取した際の傷がどの程度になるのかをそのクリニックでの症例写真などで確認しておきましょう。(例えば、移植数が1000株であれば、FUTの場合は傷の太さや長さ、トリコフィティック縫合法の採用の有無など。FUEの場合は、採取した1000株の採取範囲や傷同士が繋がっていないか、1000個の採取痕はどの程度かなど)体質や状態によって傷の治りに差は出ますが、ひとつの目安になると思います。

アフターフォローが不十分

 植毛は、手術後すぐに効果のある治療法ではなく、個人によって差はありますが、効果を感じて頂くにはおよそ1年程度かかります。術後の副作用や症状、リスクに対するケアは勿論、状況に対する不安にも気軽に相談に乗ってくれるクリニックを選ぶようにしましょう。症状によっては実際に手術したクリニックに行って診てもらう必要が出てくる可能性もあります。意外と施術をするクリニック選びの際に見落としがちなので、しっかりと相談の際にアフターフォローについて確認をしておきましょう。

治療を急かしてくる

 植毛は医師から治療法のメリット・デメリット、副作用やリスクの説明を十分に受けて、ご理解・納得された上で、最終的にはご自身の決断によって実施されるべきです。もしカウンセリングの際に治療を急かされたり、その場で治療の可否を決めるよう迫られるようなことがあるようでしたらご注意ください。

費用が不明瞭

 植毛は自由診療にあたるため、クリニックごとにその費用は違います。ホームページに掲載されている金額以外にも追加で費用が発生したり、分かり難い費用構成や条件で、結果として予想よりもはるかに高くついてしまったり、など思わぬ出費に繋がってしまう事があるかもしれません。必ずご自身の植毛プランの総額がいくらになるのかを、相談の段階で確認しておきましょう。

その他

 上記に挙げた点以外にも注意いただきたい点として、実際にどの程度先の結果を確認したことがあるのか、無理な治療計画(過剰な移植株数)を提案されていないか、などの点にも注意が必要です。これらは、ホームページではなかなか確認する事が難しいので、複数のクリニックで相談をする際に確認するように心掛けておきましょう。

まとめ

 植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由と注意が必要な植毛を解説して参りましたが、いかがでしたでしょうか。植毛は医療行為にあたりますので、ご検討される際は必ず植毛の特徴やメリットだけではなく、デメリットや副作用、リスクなども全て説明してくれる医療機関で受けるように心掛けておきましょう。また、植毛は術後も非常に重要ですので、相談しやすく、しっかりとフォローをしてくれるクリニックを選ぶよう心掛けておきましょう。ご自身に合うクリニックを選ぶためにも極力複数の医療機関にてご相談をされる事をお勧めいたします。そして、ご自身の中で「やめたほうがよいかも?」という不安がなくなった上で、治療を進めるよう心掛けておきましょう。植毛で失敗しないための5つのポイント」でもクリニック選びの際に確認しておくポイントを紹介させて頂いておりますので、興味のある方はご参照ください。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、AGA治療薬による治療は勿論、国内でも数少ないFUTとFUEの両方の植毛を行う事ができるクリニックです。公平な視点でそれぞれのメリット・デメリットや、副作用、リスクも包み隠さずに丁寧にご説明させて頂いております。経験豊富な医師が直接相談を伺った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック 
医師 中島 陽太(国際毛髪外科学会 会員)