植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由を解説【医師監修】

植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由を解説

結論サマリー

 「植毛はやめた方がいいのか?」と不安に感じて検索される方は少なくありません。しかし、植毛は一律に否定されるべき治療ではなく、適応や目的によって有効な選択肢となり得ます。
 ただし、自毛植毛が「やめた方がいいのでは」と言われる理由として、傷痕が残る、費用の負担、体質や毛質による仕上がりの個人差、副作用のリスク、効果を実感するまでに時間がかかることなどが挙げられます。
 また、体質・毛質やAGAの進行度、ドナー量、担当するクリニックの経験など、さまざまな要素によって結果や満足度は大きく変わります。そのため、植毛のメリット・デメリット、副作用や注意点、術式ごとの特徴などを医師から十分に説明してもらい、理解・納得したうえで慎重に判断することが大切です。

【要点】植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由
・傷痕が残ることや短髪で目立つ可能性、仕上がりの個人差(体質・毛質)、副作用や注意点など
・高額になりやすい、移植できる毛髪数に限度がある、未熟なデザイン、効果実感までの期間など
・注意が必要:人工毛植毛や説明不足、費用不明瞭・急かし、経験浅いチーム・フォロー体制など
・結論:複数クリニックに相談して比較し、植毛の種類・メリット・デメリット・リスク等も理解した上で決断するようにしましょう

 本コラムでは植毛自体をやめた方が良いといわれる主な理由と、注意が必要な植毛の2つのケースを代表例を挙げてご紹介いたします。植毛を検討されている方の参考にしていただけましたら幸いです。なお、本記事の植毛とは自毛植毛を指しますのでご了承ください。

植毛をやめた方が良いといわれる理由

 植毛をやめた方が良いと考えられる代表的な理由には、以下のような点が挙げられます。主に植毛治療のデメリットにあたる部分であり、これらをよく理解せずに手術を受けてしまうと、想定外の結果に終わり「植毛をして後悔」してしまう可能性があります。ご自身の薄毛の状態や希望を踏まえ、これらデメリットを理解した上で植毛を受けるかどうか検討するようにしましょう。

体質や毛質によっては適さないことがある

 自毛植毛は移植先で自分の髪の毛が再び生えてくるため、AGA・薄毛治療として非常に魅力的な方法です。しかし、個人の体質や毛髪の性質によって効果や仕上がりに差が生じることを理解しておく必要があります。例えば、傷が盛り上がりやすい「ケロイド体質」の方の場合、後頭部などドナー採取部の傷跡が通常よりも太く盛り上がって治ってしまうリスクがあります。そのような体質の方は植毛手術を慎重に検討すべきです。また、万一ドナー部の傷が大きく目立ってしまった場合にどう対処するか、事前のカウンセリングで医師に確認しておくと安心でしょう。
 また、自毛植毛で新たに生えてくる髪の毛は、あくまで自分自身の毛髪です。当然、移植先でも元の髪質や毛の太さ・色などの性質を引き継ぎます。そのため、後頭部のドナー髪が細い人は移植後の髪も細くなり、太い人は太くしっかりした髪が生えてきます。同じ株数を移植しても、毛が細い方より太い毛質の方のほうが地肌を隠しやすく、結果的に高い密度に見える傾向があります。
 さらに、くせ毛白髪が多い方にも注意が必要です。ドナーとなる後頭部の髪が強いくせ毛や白髪の場合、移植した部分でも同じようにクセ白髪が出現します。頭全体が同じ毛質であれば問題ありませんが、一部分だけ毛質が異なると不自然に見える可能性があります。特にヒゲや眉毛などへの植毛では、くせ毛の移植は仕上がりに違和感を与えかねません。例えば「縮毛矯正で髪をストレートにしているが、地毛は強いくせ毛」という方は、施術前にその旨を医師に伝えておくことが大切です。 このように、植毛には向き不向きがあると言えます。ご自身の体質(皮膚の治癒傾向)や毛質・毛量を考慮し、植毛が適した方法かどうか医師と相談しましょう。

後頭部に傷が残る

 自毛植毛では、どの術式(FUT法FUE法)を選んだ場合でもドナー採取部に必ず傷跡が残ります。FUT法(いわゆる「ストリップ法」)では後頭部にメスを入れて皮膚を帯状に切り取るため、細長い一本の線状の傷跡が残ります。一方、FUE法(いわゆる「パンチグラフト法」や「くり抜く植毛」)では、直径1ミリ前後のパンチで毛根を一ずつくり抜いて採取するため、米粒大の小さな丸い傷が採取したグラフトの数だけ点在する形で残ります(1,000株なら1,000個)。いずれの傷跡も、周囲の髪の毛をある程度伸ばせば隠すことが可能ですが(目安としてFUTの傷跡は約2~3cm以上、FUEの傷跡は約1~2cm以上の髪の長さでカバーできます)、髪を極端に短く刈り上げるヘアスタイルには向かなくなります。
 また、医師の技術によって傷跡を目立ちにくくする工夫も可能です。例えばFUT手術時に特殊な縫合法(トリコフィティック縫合法)を用いて傷跡から毛が生えるように縫合したり、術後に傷跡部分へFUE植毛を行ったり、医療用アートメイク(SMP)で傷をカバーしたりする方法もあります。 いずれにしても植毛には少なからず傷跡が残ることを理解しておきましょう。特に、将来ヘアスタイルを変えて短髪にしたいと考えている方や、傷が残ること自体に抵抗がある方は、その点を踏まえて治療法を選択する必要があります。

傷痕の症例は下記をご参照下さい。
FUTでの縫合の傷痕例
くり抜く植毛FUEの傷痕例

効果を感じるまでに時間がかかる

 植毛は手術を受けた直後から劇的に薄毛が改善する治療法ではありません。新しく移植した髪の毛がしっかり生着し、成長して効果を実感できるまでに通常6ヶ月~1年程度かかります。 手術後しばらくは移植部位にかさぶた赤みが残り、移植した毛も一旦抜け落ちてしまいます。これは一時的な脱落であり、毛根が定着した移植毛は数ヶ月後から再び生え始めますが、見た目に変化が出るまでにはどうしても時間が必要です。たとえば増毛かつら(ウィッグ)のように施術直後に毛量が増えるわけではないため、「手術を受けたのにすぐ効果がない」と焦ってしまう方もいます。 特にAGAが進行中の方は注意が必要です。植毛手術で移植した部分以外の既存の髪が、その効果待ちの期間にも薄毛の進行によってさらに減ってしまう可能性があります。せっかく植毛したのに周囲の毛が減ったせいで思ったほど改善を感じられない、といった事態にもなりかねません。そのため、植毛を行う際は並行してAGA治療薬フィナステリドデュタステリドといった5α還元酵素阻害薬、およびミノキシジルなど)を使用し、既存の毛髪の維持に努めることが推奨されます。薬物療法と植毛を組み合わせることで、移植部位だけでなく全体の発毛を促し、植毛効果の最大化と薄毛進行の抑制が期待できます。いずれにせよ、植毛は「長期戦の治療」です。術後すぐにフサフサになるわけではなく、半年から1年かけてゆっくり効果を実感していくものだと理解しておきましょう。

副作用やリスクがある

 植毛手術は外科的な治療であり、FUT法・FUE法のどちらであっても術後経過中に副作用や一時的な症状が現れる可能性があります。例えば、術後には以下のような症状がみられることがあります。

  • 痛み・腫れ:ドナー部に軽い痛みを感じることがありますが、鎮痛薬で和らげられます。また、術後数日目から額やまぶたにかけて軽い腫れが出ることがありますが、通常1週間以内に自然に引いていきます。
  • 出血・かさぶた:移植部位から細かな出血が見られる場合がありますが、清潔なガーゼで圧迫すればすぐ止まる程度です。移植部には小さなかさぶたができますが、1週間ほどで自然に剥がれ落ち出してきます。かさぶたに付いて移植毛が抜けても毛根は定着していますので心配ありません。
  • 赤み・痒み:移植部やドナー部が一時的に赤くなることがありますが、時間とともに薄れていきます。また、治癒過程で傷口に痒みを感じることがありますが、掻かないよう注意しましょう。痒みが気になる場合は冷やす事で緩めたりすることができます。
  • しびれ・違和感:後頭部の採取部周辺に一時的なしびれやつっぱり感が出ることもありますが、皮膚・神経の回復とともに数週間〜数ヶ月で改善していきます。

 以上の症状はいずれも一時的なもので、時間の経過とともに改善します。また症状の出方や程度には個人差があり、体質や年齢、手術範囲、回数などによっても異なります。重篤な合併症(感染症など)のリスクは低いですが、万が一気になることがあれば、すぐに施術を受けたクリニックに相談しましょう。術後の過ごし方や注意点について事前によく説明を受け、適切にアフターケアを行えば、こうした副作用は怖がりすぎる必要はありません。

移植できる毛髪数に限度がある

 植毛は自分自身の髪をドナー(移植株)として利用する治療です。したがって、自分の髪の総本数を超えて移植することはできません。 薄毛が進行して頭頂部から前頭部にかけて広範囲に毛が薄くなっている場合でも、後頭部や側頭部などドナーにできる部分に十分な毛量がなければ、理想とする毛量をすべて移植で補うことは難しくなります。
 特に、AGAの影響を受けにくい後頭部〜側頭部の安全なドナー範囲から採取できる髪には限りがあります。目安として、FUT法では生涯で約5,000~7,000株、FUE法では約2,000~3,000株程度を採取できるとされています(個人差があります)。
 このように、植毛は無尽蔵に毛を増やせる魔法の治療ではありません。増毛(人工毛を結び付けてボリュームを出す方法)やかつらのように、欲しいだけの毛量を自由に増やせるわけではないのです。限られたドナー毛をどの部位にどのくらい配分するか、将来の薄毛進行も見据えて計画を立てることが重要になります。経験豊富な医師であれば、現在の薄毛範囲だけでなく、将来的な薄毛の進行パターンも考慮してデザインを提案してくれるでしょう。逆に、将来のドナー残存数を無視して過剰な株数を一度に移植すると、後々ドナー部が薄くなりすぎたり、追加の植毛が必要になった際に毛源が足りなくなったりする恐れがあります。
 植毛を検討する際は、自分が今後移植できるドナー毛に限りがあることを理解し、その中で優先順位をつけてどの部分をカバーするかを医師と時間をかけてしっかり相談しましょう。

1度の費用が比較的高額

 植毛手術は保険適用外の自由診療であり、1回あたりの費用が比較的高額になります。医療機関や植毛方法、移植するグラフト数などによって料金は異なりますが、一般的に数十万円~数百万円(移植本数によっては200万円以上)の費用がかかることがあります。一度の支払い額だけ見ると、他の薄毛治療(例えば投薬治療など)に比べて負担が大きいと感じられるでしょう。
 しかし、自毛植毛は一度定着すればその毛髪は半永久的に生え続ける事が期待できるという大きなメリットがあります。例えばかつらや増毛であれば定期的なメンテナンスや買い替えに継続的な費用がかかりますし、AGA治療薬も効果を維持するには長年の服用が必要です。それらの長期コストと比較すれば、植毛の初期費用が必ずしも割高とは言い切れません。
 もっとも、植毛後にも出来る限り既存毛含めた髪の毛を維持していきたいという場合は、AGAが進行すれば追加の植毛手術が必要になったり、現状維持のために薬代がかかったりする可能性はあります。したがって「植毛さえすれば今後一切お金がかからない」というわけではありません。それでも、自毛植毛で得られる自然な生え際やボリューム、そして維持費やメンテナンスの少なさは他の方法には代えがたい利点です。

不自然なデザインになる可能性がある

 植毛の仕上がりは、医師およびスタッフの技術や経験、デザインセンスによって大きく左右されます。経験の浅いクリニックで手術を受けた場合、不自然な仕上がりになってしまう可能性がある点にも注意しましょう。
 特に生え際は繊細な部分で、一直線すぎたり濃くしすぎたりすると人工的で不自然に見えてしまいます。また、現在の薄毛範囲だけに合わせて植毛し、将来の薄毛進行を考慮しないデザインにすると、数年後に移植部分だけが不自然に目立ってしまう恐れもあります。これらの失敗は施術者の経験不足やセンスの問題によるところが大きいです。逆に、実績豊富な医師・看護師がいるクリニックを選べば、こうしたリスクを大きく減らすことができます。

仕上がりに対する期待が大きくなりすぎてしまうことがある

 自毛植毛は「自分の髪が生えてくる」治療であることから、仕上がりに対する期待が大きくなりやすい治療でもあります。インターネット上の症例写真やビフォー・アフターを見ると、症例によってはまるで別人のように若々しくなった印象を受け、「自分も同じようにフサフサになるのでは」と期待してしまう方も少なくありません。
 しかし実際の自毛植毛は、限られた自身のドナー毛を、限られた範囲に再配置する医療行為です。毛の太さや密度、生え方には個人差があり、さらに移植できる株数にも上限があります。そのため、元々の毛量や毛質、薄毛の進行度によっては、「思っていたほどの変化ではなかった」と感じるケースも起こり得ます。
 また、植毛によって増えるのはあくまで「移植した部分の毛量」であり、頭部全体の毛量が一気に若い頃の状態に戻るわけではありません。特に前頭部から頭頂部まで広範囲に薄毛が進行している場合、すべてを高密度でカバーすることは現実的に難しく、どの部位を優先して改善するかという判断が必要になります。生え際を重視すれば頭頂部の密度は控えめになり、逆に頭頂部を優先すれば生え際は自然さを重視した設計になります。
 さらに重要なのが、移植毛と既存毛の性質の違いです。移植される毛はAGAの影響を受けにくいドナー毛ですが、もともと生えている既存毛はその後も薄毛が進行する可能性があります。たとえば、前頭部に植毛を行い一時的に満足のいく状態になっていても、数年後に周囲の既存毛が薄くなると、結果として「思ったより効果がなかった」「失敗したのではないか」と感じてしまうことがあります。
 このような特徴を十分に理解しないまま、「植毛をすれば薄毛の悩みがすべて解消する」「誰が見てもフサフサになる」「一生変わらない頭髪になった」といった期待だけが先行してしまうと、実際の仕上がりとの間にギャップが生じやすくなります。そのギャップこそが、「植毛はやめたほうがよかったのでは」と感じる最大の原因の一つです。
 植毛は、「薄毛をゼロに戻す治療」ではなく、「見た目を改善する治療」です。どこまで改善できるのか、どの程度の密度やデザインが現実的なのかを事前に理解し、期待値を適切に調整したうえで臨むことが、後悔のない治療結果につながります。

注意が必要な植毛とは

 以上のように、植毛には様々なデメリットや注意点がありますが、特に次のようなパターンの植毛には注意が必要です。これから植毛を受けようと考えている方は、できるだけ複数の医療機関で話を聞いて比較検討し、不安な点や疑問点は納得いくまで医師に質問しましょう。そして、以下に挙げるポイントに一つでも当てはまる場合は、契約を急がず慎重に判断することをおすすめします。

人工毛植毛

 自分の髪ではなく人工毛を植え込む植毛(人工毛植毛)は、基本的におすすめできません。日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」でも人工毛植毛は推奨度D(行うべきでない)と評価されており、「安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは、原則として人工毛植毛術を行うべきではない」と明記されています。それほどまでに人工毛植毛はリスクの高い行為なのです。

日本国内で人工毛植毛術を施行することに医療法上の問題はないが、有害事象の発生を看過できないため,安全性に関する高い水準の根拠が得られるまでは、原則として人工毛植毛術を行うべきではない。

男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 ― 日本皮膚科学会

 人工毛植毛では、化学繊維などでできた人工の毛を頭皮に植え付けます。自毛植毛と違って自分の組織ではない異物を体内に埋め込むため、体がそれを拒絶しようとして炎症反応を起こしやすいのです。具体的には、慢性的な頭皮の炎症・ただれ・化膿が生じやすく、毛穴周囲に瘢痕(傷跡の硬い組織)ができてしまうことがあります。皮膚が線維化して血流が悪くなると、その部分に生えていた元からの毛も抜け落ちてしまい、結果的に永久脱毛のような状態になる恐れもあります。 さらに、人工毛は成長しないため定期的に植え替えが必要で、その度に傷が増えていきますし、感染リスクも高まります。安全性と有効性が確立されていない現状では、人工毛植毛は避けるのが賢明と言えるでしょう。

※当院で実際にあった、人工毛植毛後の瘢痕(はんこん)性脱毛への植毛

医師との相談が不十分

 植毛は医療行為ですから、手術を受ける前に必ず医師と十分に相談し、説明を受けることが大前提です。もしカウンセリング時に医師との話し合いが不十分だった場合、植毛後に「こんなはずじゃなかった」というミスマッチが起こる可能性が高まります。
 例えば、植毛後の仕上がりイメージについて医師としっかり共有できていなければ、効果に不満を感じたり、逆にやりすぎと感じたりするかもしれません。また、副作用やダウンタイムについて正しく理解していないと、術後に起こった症状に過度に不安を覚えてしまうこともあります。事前の説明で納得していれば冷静に対処できることでも、知らなければ「失敗したのでは?」と不安になってしまうでしょう。
 さらに、医師との相談では自分の希望を率直に伝えることも大切です。「ここをもっと密にしたい」「この生え際の形にしたい」など要望があるはずです。要望によっては不自然であったり実現が難しい場合もあるため、必ずしも要望通りになるとは限りませんが、それでも自身の希望と医師側の判断をすり合わせる事で、自身にとってより適した植毛計画を目指す事ができます。それを伝えずにいると、医師側はベストと思う施術をしても患者さんの理想とは大きくズレが生じるかもしれません。また、相談の場は医師との相性を確かめる機会でもあります。悩みを親身に聞いてくれるか、質問に丁寧に答えてくれるか、コミュニケーションは取りやすいかなどといった点は信頼関係を築く上で重要です。 もし十分な相談時間を設けてくれなかったり、医師ではなくカウンセラーだけで説明が終わってしまったり、メリットばかりを強調してデメリットの説明がないような場合は注意しましょう。植毛で失敗しないためには、医師からメリット・デメリットの両方をしっかり聞き、要望に合わせた施術法の説明や将来を見据えた計画の説明を受けて、理解・納得した上で治療に臨むことが不可欠です。

クリニック(医師・看護師)の経験が浅い

 植毛は一人の医師だけで完結するものではなく、医師と複数の看護師から成るチーム医療で行われます。医師がどんなに優秀でも、補佐する看護師の植毛経験が不足していれば十分な結果が得られないことがありますし、その逆もまた然りです。各メンバーの技術力や経験値が積み重なって初めて高品質な植毛手術が実現すると言っても過言はありません。
 日本のクリニックでは一般的に、医師がドナー毛の採取や縫合、移植部へのスリット(穴あけ)作業などを担当し、看護師が株分け(グラフトを1~3本ごとのユニットに分ける作業)や実際の毛の植え付けを分担して行います。これらの工程はスピードと正確さ、集中力が要求され、経験に裏打ちされたチームワークが非常に重要です。経験の浅いチームでは、手術に時間がかかりすぎてグラフトの虚血時間がより長くなってしまったり、植え付けの深さや角度が不適切で不自然な仕上がりになったり、株分けの際に毛根を傷つけて生着率が下がったりなどするリスクがあります。また、前述したような植毛デザインの巧拙も、過去の症例を多数かつ長年経験した実績から培われるものです。
 将来にわたって自然な状態を保つ植毛にするには、少なくとも今後20年~30年を見据えた計画が必要です。そのため、相談時には必ず「担当する医師や看護師の植毛経験(症例数)はどの程度あるのか」「どのくらいの歴史(ノウハウ)を持つクリニックなのか」「過去の症例写真はあるか」「デザインの方針や実績」「FUT法とFUE法の違いや、自身の場合にはどちらが向いているか」などを確認しましょう。公式サイトなどではなかなか内部スタッフの経験やクリニックの方針まで読み取れないので、カウンセリングの場で遠慮せず質問することが大切です。経験豊富なチームに任せることで、植毛の失敗リスクは格段に減らすことができます。

傷痕に関する情報が不十分

 前述のとおり、FUT法でもFUE法でも植毛後には何らかの傷痕が後頭部に残ります。しかし、その傷痕の大きさや目立ちやすさは、採取数の数はもちろんのこと、クリニックや医師の技術によっても差が出る部分です。事前に傷痕に関する十分な情報提供がない場合は注意しましょう。
 例えば、「FUE法は傷が全く残りません」などとうたっている場合は誇張が過ぎるかもしれませんし、「FUE法は切らない植毛だ」とだけ強調する事も注意が必要です。実際のFUE法は直径1mm程度の小さな点状の傷が採取数分だけ必ず残りますし、採取数によっては密度が低下し過ぎて薄く毛がまばらになることもあります。そして、「メスのように切らない」のですが、かわりに専用の筒状の刃の付いた器具を用いて皮膚を「くり抜いて」いきます。
 FUT法でどの程度の長さ・太さの傷になるかは、採取するグラフト数や医師の縫合技術によっても変わります。通常縫合よりも傷を目立たなくするトリコフィティック縫合法のような縫合技術を採用しているか否かも傷跡の目立ち方に影響します。
 カウンセリングでは、「自分のケースでは傷がどうなるのか」を具体的に尋ねてみましょう。たとえば「○○グラフト移植する場合、傷跡は何センチくらいになりますか?」「FUE法で○○株採る場合、採取範囲はどの程度広がりますか?採取後のドナー部密度は問題ないですか?」といった質問です。可能であれば、そのクリニックで実際に同程度のグラフト数を採取した患者さんの術後写真を見せてもらうとイメージしやすいでしょう。
 自分がケロイド体質でない限り、大抵の方は術後数ヶ月~半年も経てば傷跡はかなり目立たなくなります。ただ、「傷が全くゼロにはならない」ことを理解し、それがどのような形で残るのか理解・納得しておくことが大切です。傷跡に関する説明が曖昧なクリニックや、「絶対に傷が見えません・残りません」と断言するような場合には注意しましょう。

アフターフォローが不十分

 植毛手術は施術して終わりではなく、術後のフォロー体制も非常に重要です。植毛の効果は個人差がありますが、前述の通り効果を感じるようになるまで約1年ほどかかります。その間、術後の相談やトラブル対応、薄毛治療の継続など、クリニックとの付き合いは続きます。
 信頼できるクリニックは、術後に気になる症状があればすぐ相談に乗ってくれるはずです。例えば、傷痕や植毛部の経過に不安があれば電話やメールで医師に相談が可能であったり、必要であれば実際に診てもらう事も可能です。こうした手厚いフォローがあれば、患者さんも不安を抱えたまま経過を待つことにならなくて済みます。
 反対に、手術が終わったら「はいさようなら」というようなクリニックですと、万一何かトラブルが起きた時に困ってしまいます。植毛自体は体への負担が比較的少ない手術ですが、それでも術後に感染が起きたり、思わぬ副作用が出たりする可能性はゼロではありません。その際、適切な処置やアドバイスをしてもらえないと、治りが遅れるだけでなく不安も募ります。また、毛の生え方について心配なことが出てきた時にも、気軽に相談できる窓口があるのは心強いものです。
 カウンセリング時には、術後のサポート内容についても必ず確認しましょう。追加費用なく診察してもらえるのか、何かあれば電話やメールで相談できるのか、薬の処方はどうなるのか、といった点です。意外と見落としがちですが、アフターフォロー体制もしっかり比較してクリニック選びをすることをおすすめします。

治療を急かしてくる

 カウンセリングの際に、スタッフや医師から契約や治療開始を妙に急かされるような場合も注意が必要です。植毛は患者さん自身が納得した上で決断すべき治療です。十分な説明を受け理解した上で、自分の意思で行うべきものです。 それにも関わらず、「今日決めていただければ割引します」「今やらないともっとハゲて大変ですよ」といったセールストークでその場での契約を迫られたら、一度冷静になりましょう。確かにAGAは進行性ですので、治療は早いに越したことはありませんが、一生に何度もない決断ですから即断は禁物です。特に、高額なお金が動く話でもありますから、家族に相談したり、自分で情報収集したりする時間を持つことも大切です。治療を急かしてくるような対応には十分注意し、納得できるまで決断しないようにしましょう。

費用が不明瞭

 植毛は自由診療のため、クリニックごとに料金設定が異なります。そのため、費用体系がわかりにくい場合や総額が見えにくい場合には注意が必要です。
 例えば、「基本料金無料」「〇株〇〇円」などと安い値段で広告していても、実際にはグラフト(株)数に応じた追加費用や薬代、麻酔代、検査費、追加オプションなどが後から加算され、最終的には思った以上の金額になってしまう可能性があります。また、「〇〇万円!」と一見安くお得に見えるプランでも、上限設定があったり、実はモニターの価格であったりと、よくよく確認したら様々な条件が設定されていて、自分の希望に合わせたら結局割高になってしまったりする可能性があります。
 大切なのは、自分が希望する治療内容でトータルいくらかかるのかを事前にハッキリさせておくことです。カウンセリングの際に、「〇〇グラフト移植する場合、すべて込みでいくらですか?」と具体的に確認しましょう。見積書を出してもらえるならなお良いでしょう。金額に不明な点が残ったまま契約してしまうと思わぬ出費に後悔するかもしれません。
 なお、費用が極端に安すぎる場合は注意が必要です。特に理由なく価格が安い場合、何らかの理由(経験不足を価格でカバー、アフターケア別料金、追加オプション、植毛以外の処置が不十分など)があるかもしれません。価格だけに飛びつかず、内容とのバランスを見て納得がいくまで質問して判断しましょう。

その他

 上記に挙げた点のほかにも、植毛クリニック選びで注意しておきたい点はいくつかあります。なかでも、「2回目・3回目といったリピーターの患者さんがどの程度いるのか」という点は、ひとつの参考になります。継続して施術を受ける患者さんが一定数いるかどうかは、長期的な満足度や信頼性を考えるうえでの指標の一つとなり得ます。また、そのような機会が多い場合には、数年後から数十年後までの経過を踏まえた知見が蓄積されている可能性もあり、長期的な植毛プランに関するノウハウが期待できます。
 一方で、カウンセリングではクリニックによって情報が偏ってしまうことも少なくありません。実際に、「クリニックによって1,000株以上の見積もりに差がある」「FUE法の説明のみで、FUT法の存在について説明されなかった」といったケースも見受けられます。
 自毛植毛は自由診療であるため、宣伝が目立つこともありますが、「なんとなく良さそう」といった印象だけで判断するのではなく、複数のクリニックで話を聞き、それぞれの見解や提案を比較することが大切です。異なる意見を知ることで、自分の状況に合った治療法や手術プランがより明確になることもあります。
 後悔しないためには、疑問点を残さず解消することが重要です。ホームページだけでは分かりにくい部分も多いため、実際に複数のクリニックで医師の説明を受け、十分に比較・検討したうえで判断するようにしましょう。

よくある質問(Q&A)

 最後に、「植毛はやめたほうがいいのか?」と不安に思っている方が抱きがちな疑問について、Q&A形式で補足解説します。

Q: 「植毛はやめたほうがいい」というのは本当ですか?

A:
 必ずしも「植毛=やめたほうがいい」というわけではありません。植毛には上述のようなデメリットや注意点がありますが、それらを正しく理解し、適切に対応することが、納得のいく結果につながる重要な要素となります。「やめたほうがいい」と言われるのは、植毛のデメリット面ばかりがクローズアップされた場合や、向いていない人まで安易に受けてしまった場合の話です。裏を返せば、植毛のメリット(自分の毛が生涯生え続けることが期待できる、他の髪と同様の扱い方で管理できる、見た目が自然 etc.)も大きいため、正しい知識を持って適切な医療機関で受ければ決して「やらない方がいい治療」ではありません。要は向き不向きを見極め、信頼できるクリニックで受けることが大切です。本コラムで述べたポイントを踏まえ、ご自身にとって植毛がベストな選択かどうかしっかりと検討することが重要です。

自毛植毛のメリット・デメリットの詳細については、下記のコラムをご参照下さい。
植毛のメリットとは?5つのメリットを解説【医師監修】
植毛のデメリットとは?5つのデメリットを解説【医師監修】

Q: 植毛手術は痛いですか?術後のダウンタイムはどのくらいですか?

A:
 手術中の痛みは局所麻酔によってほぼ感じません。麻酔注射の際にチクッとした刺激はありますが、その後の採取・植え付け作業中は痛みなく過ごせます。術後は麻酔が切れると多少の痛みや違和感がありますが、処方された鎮痛剤で和らげることができます。多くの場合、痛み止めを服用しなくても我慢できる程度の軽い痛みです。 ダウンタイム(回復期間)については、個人差はありますが数日~1週間程度見ておけば十分でしょう。数日たてば日常生活には支障がない場合がほとんどで、デスクワークなら2~3日休めば復帰できる人が多いです。ただし移植部や採取部に赤み・かさぶたが残るため、見た目を気にする方は術後1週間ほどは帽子を利用するなど工夫すると安心です。FUT法・FUE法どちらの術式でも2週間ほど経てば見た目の違和感はかなり軽減します。その後は移植毛が一時的に抜け落ちる時期を経て、一般的には3~4ヶ月目頃から新しい毛が生え始めて、半年~1年ほどかけて徐々に変化していく流れです。

自毛植毛の経過や副作用については下記もあわせてご参照下さい。
植毛後の経過(1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後)【医師監修】
副作用について

Q: 植毛をしても将来また薄くなりますか?

A:
 移植される毛はAGAの影響を受けにくいドナー毛の性質を引き継ぐ(ドナー優位性)ため、移植毛そのものがAGAで抜ける可能性は低いと考えられます。ただし、もともと生えている既存毛はその後もAGAの影響を受けて薄くなる可能性があります。そのため、時間の経過とともに「移植した部分は残っているが、周囲の毛が減って薄く見える」という状態になることがあります。こうした変化を抑えるためには、植毛とあわせてAGA治療(内服薬や外用薬など)で既存毛を維持することが重要になります。

AGA治療薬については下記を併せてご参照下さい。
AGA治療薬とは?その効果や副作用を解説【医師監修】

Q: FUE法とFUT法はどちらを選べばいいのですか?

A:
 FUE法とFUT法にはそれぞれ特徴があり、どちらが良いかは薄毛の状態や体質、希望によって異なります。FUT法は一度に多くのドナー毛を確保しやすく、広い範囲の植毛に向いていますが線状の傷が残ります。一方、FUE法は生涯採取できる株数はFUT法のおよそ半分程度(約2,000~3,000株)ですが、傷痕が目立ちにくいです。但し、採取し過ぎると密度低下が顕著になり、採取部が薄毛になってしまいます。どちらの方法が適しているかは、ドナーの状態、必要な株数、将来の薄毛進行などを総合的に考えて判断する必要があります。

自毛植毛の術法(FUT法・FUE法)の違いや選定の目安などについては下記も併せてご参照下さい。
FUT法とFUE法の違い【医師監修】
FUT植毛とFUE植毛どちらが良いのか【医師監修】
植毛を行うときにFUT法とFUE法のどちらを最初に行うべきか【医師監修】

まとめ

 植毛はやめた方がいい?と言われる主な理由と注意が必要な植毛を解説して参りましたが、いかがでしたでしょうか。植毛は医療行為にあたりますので、ご検討される際は必ず植毛の特徴やメリットだけではなく、デメリットや副作用、リスクなども全て説明してくれる医療機関で受けるように心掛けておきましょう。また、植毛は術後も非常に重要ですので、相談しやすく、しっかりとフォローをしてくれるクリニックを選ぶよう心掛けておきましょう。ご自身に合うクリニックを選ぶためにも極力複数の医療機関にてご相談をされる事をお勧めいたします。そして、ご自身の中で「やめたほうがよいかも?」という不安がなくなった上で、治療を進めるよう心掛けておきましょう。「植毛で失敗しないための5つのポイント」でもクリニック選びの際に確認しておくポイントを紹介させて頂いておりますので、興味のある方はご参照ください。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、AGA治療薬による治療は勿論、国内でも数少ないFUTとFUEの両方の植毛を行う事ができるクリニックです。公平な視点でそれぞれのメリット・デメリットや、副作用、リスクも包み隠さずに丁寧にご説明させて頂いております。経験豊富な医師が直接相談を伺った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

第三者サイトに掲載されている当院の評価(Caloo)

紀尾井町クリニックの自毛植毛や薄毛治療については、
医療口コミサイト「Caloo」にて、
実際に受診した方による評価・口コミが掲載されています。

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監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師