薄毛(ハゲ)を自分で治すことはできるのか?【医師監修】

薄毛(ハゲ)を自分で治すことはできるのか?

 薄毛(ハゲ・脱毛症)は、多くの人々が直面する可能性があり、薄毛に対する対処法は多岐にわたって様々な対策や治療法があります。中でも自己治療は、まず初めに思いつく方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、薄毛の最も多い要因であるAGAについて、その原因や、自己治療の可能性、および専門的な治療との比較について紹介します。1つの参考にしていただけますと幸いです。なお、本コラムで言う「自己治療」は、医師による治療は含みません(医師の処方が必要なAGA治療薬植毛など医療機関に通う治療は含まれないということです)。

AGAによる薄毛の原因

 AGAによる薄毛の原因は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の通りです。

遺伝的な要素

 親や祖父母が薄毛である場合、薄毛は遺伝的な要因によって引き起こされる場合があります。ただし遺伝が全て、というわけでもなく、血縁の方が薄くても自身はそうならないパターンもあれば、その逆もあります。

ジヒドロテストステロン

 体内にはテストステロン(いわゆる男性ホルモン)というホルモンがあります。毛包に運ばれたテストステロンが、5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素の働きでジヒドロテストステロン(以下DHT)という物質に変換されます。このDHTがアンドロゲン受容体に作用することで、髪の毛の周期を早めてしまい、太く成長しきる前に抜けてまた産毛に生え変わるというサイクルを起こします。これが男性型脱毛症(AGA)の主な原因と考えられています。

生活習慣やストレスなど

 薄毛の原因として生活習慣やストレスが関与していると考えらえています。髪の毛にとってマイナスな生活習慣として具体的には、バランスの悪い食生活、運動不足、睡眠不足、喫煙などが挙げられます。髪の発育には血流が必要ですが、前述の生活習慣の結果血管が硬化してしまい、髪の毛への血流が低下してしまうのです。

薄毛の自己治療の可能性

 AGAの薄毛に対して、自己治療としてアプローチができる代表的な例は以下の通りです。AGAによる薄毛の原因で紹介しましたが、遺伝的要因やホルモン的要因に対しては自分で何かをする、というのは非常に難しいため、主に生活習慣に関するものとなります。

生活習慣の改善

 生活習慣を見直すことは、薄毛の自己治療において非常に重要です。以下に具体的な改善策を示します。

バランスの良い食生活

 髪の健康には栄養素が欠かせません。特にビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、鉄分、タンパク質などが髪の成長に寄与します。ビタミンAは皮脂の分泌を調整し、ビタミンB群は細胞の代謝を促進します。ビタミンCは抗酸化作用があり、コラーゲン生成を助けます。ビタミンEは血行を促進し、亜鉛は毛髪の成長を助け、鉄分は毛根に酸素を供給します。タンパク質は髪の主成分であり、これらの栄養素を含む食品をバランス良く摂取することで、頭皮の健康を維持し、毛髪の成長を促進します。例えば、緑黄色野菜、ナッツ類、果物、魚、赤身の肉、豆類などを積極的に食事に取り入れると良いでしょう。バランスの取れた食生活を心がけることで、AGAの進行を抑え、健康な髪を育む環境を整えることが期待できます。

適度な運動

 運動をすることで全身の血行が促進され、頭皮にも十分な血液が行き渡りやすくなります。これにより、毛根に必要な栄養素や酸素が効率よく供給され、毛髪の成長を助けることが期待できます。また、運動はストレスの軽減にも役立ちます。ストレスはホルモンバランスを崩し、AGAの進行を悪化させる一因となるため、運動を通じてリラクゼーション効果を得ることは重要です。ランニングやウォーキングなどの有酸素運動やヨガ、軽い筋力トレーニングなどを定期的に行うことで、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げ、心身の健康を保ちます。さらに、運動は代謝を活性化し、体内の老廃物や毒素の排出を促進するため、頭皮の健康維持にもつながります。

ストレス管理

 ストレスは体内のホルモンバランスを乱し、AGAの進行を加速させる要因となります。ストレスを適切に管理することで、ホルモンバランスを整え、薄毛の進行を抑えることが期待できます。ストレス管理の方法として、まずリラクゼーション法を取り入れることが有効です。深呼吸や瞑想、ヨガなどは心身のリラックスを促し、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑えます。また、適度な運動もストレス解消に役立ち、気分転換を図ることができます。さらに、趣味や友人との交流を楽しむ時間や趣味などの好きな事を楽しむ時間を作ることも、ストレスを軽減する効果があります。自身に合ったストレス管理法を日常生活に取り入れることで、健康な髪を保つ環境を整えることが期待できます。

頭皮ケア

 頭皮の健康を保つことは、薄毛対策において非常に有効です。頭皮マッサージや適切なシャンプーの使用など、以下の方法で頭皮ケアを行うことができます。

頭皮マッサージ 

 頭皮マッサージを行うことで、頭皮の血行が促進され、毛根に必要な栄養や酸素が届きやすくなる効果が期待できます。指の腹を使い、前後左右に優しくマッサージするのが基本です。また、リラクゼーション効果もあり、ストレスの軽減にもつながります。入浴時やリラックスタイムに取り入れると効果的です。爪を立てたてて引っ掻いたり、強い摩擦を加える等頭皮と髪の毛にダメージを与えないようにしましょう。

頭皮の健康保持

 定期的な洗髪で頭皮の皮脂や汚れ、スタイリング剤の残留物をしっかりと除去することが基本です。洗髪には低刺激で頭皮に優しいシャンプーを使用し、フケが多い場合には抗炎症成分や保湿成分が含まれているものを選ぶとよいでしょう。洗髪時には指の腹を使い、優しくマッサージするように洗うことで、血行を促進し、毛根への栄養供給を助けます。また、シャンプーの泡をしっかりとすすぎ、残留物が頭皮に残らないようにすることも重要です。すすぎが不十分だと毛穴が詰まり、皮脂や汚れが溜まりやすくなり、炎症を引き起こす原因となります。さらに、適切な洗髪頻度を守り、頭皮の自然な油分を保つことも大切です。過度な洗髪は頭皮を乾燥させ、逆に皮脂の過剰分泌を招くことがあります。清潔な頭皮を維持することで、健康な育毛環境を整え、薄毛の進行を抑える効果が期待できます。

育毛剤(ミノキシジルを除く)

 医師の診断が必要ない市販の育毛剤の効果について、人によっては効果が出て髪を太くするなどが期待できることもあるかもしれませんが、あくまで薄毛の体質自体を改善するものではない為、過度な期待はできないものと考えた方が良いでしょう。

自己治療の限界

 自己治療はAGAの進行を多少遅らせるといった効果が期待できる可能性もありますが、限界があります。特に遺伝的要因や、進行したAGAなどは、自己治療だけでは目に見えて改善することは難しい場合が多いと思われます。そのため、自己治療の結果が思わしくない場合や症状が進行する場合は、専門医の診断と治療を受けることをおすすめします。

専門的な治療との比較

 薄毛の自己治療と専門的な治療を比較することで、それぞれのメリットとデメリットを理解することができます。

専門的な治療のメリット

 専門的な治療には、以下のようなメリットがあります。

高い効果が期待できる

 専門的な治療は、非常に効果が期待できるものがいくつもあります。AGA治療薬であるフィナステリドデュタステリドミノキシジルなどの薬物療法、植毛手術、PRP療法(自己血小板血漿注入療法)などは、科学的に効果が証明されています。

個別対応が可能

 専門医は、医学的な根拠に基き患者一人一人の状況に合わせた治療プランを提供します。これにより、自身で判断するよりもより効果的な治療が可能となります。

医療技術の利用

 医療機関では、専門の技術や機器を使用した治療が受ける事も出来ます。これにより、自己治療では達成できないレベルの結果が期待できます。

専門的な治療のデメリット

 一方で、専門的な治療には以下のようなデメリットも存在します。

費用が高い

 AGAに関する治療は保険適応外の自由診療となるため、専門的な治療は、一般的に高額な費用がかかることが多いです。特に植毛手術などは1度の治療費用が高価な治療法となります。

副作用のリスク

 薬物療法などでは、副作用のリスクが伴います。例えば、フィナステリドは性機能障害の副作用が報告されており、ミノキシジルは頭皮のかゆみや発疹を引き起こすことがあります。 また外科的処置である植毛では、腫れ、出血・かさぶた、痛み・違和感、炎症等の副作用やショックロス、ドナー部の瘢痕等のリスクもあります。

継続的な治療が必要

 多くの治療法は、継続的な使用が必要です。例えば、ミノキシジルの効果を維持するためには、継続して使用しなければならず、治療を中止すると効果は無くなっていき、使用をしていない状態に戻っていきます。

まとめ

 薄毛を自分で治すことは、すべてのケースにおいて効果的とは限りません。生活習慣の改善や適切な頭皮ケア、栄養補助食品の利用などは、薄毛の進行を遅らせたり、改善を助ける効果が期待できます。しかし、遺伝的要因やホルモンの影響が大きい場合や、症状が進行している場合には、自己治療だけでは限界があります。そのような場合には、専門医の診断と治療を受けることが推奨されます。自己治療と専門的な治療を併用することで、さらに効果的なの結果を得ることが期待できるでしょう。
 国内でも数少ないFUT法とFUE法の実績を持つ紀尾井町クリニックでは、これまで数多くの患者様を治療してきた実績があります。FUE法で少ない株数をポイントで移植する事も、FUT法で比較的広い範囲へ多くの移植株を移植する事も可能なので、薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師