髪の毛を太くする方法【医師監修】

髪の毛を太くする方法があるのかは、髪のお悩みを持っている方にとっては特に気になる所です。髪の毛の太さは、見た目の印象に大きな影響を与える重要な要素です。実際、太くて健康な髪は若々しく活力に満ちた印象を与えるとされています。一方、髪が細くボリュームがないと、どうしても薄毛に見えたりスタイリングが決まりにくくなったりします。本コラムでは、髪の毛が細くなる原因から、髪の毛を太く見せる・実際に太くするための対策まで、紹介していきます。髪の太さに関する正しい知識を身につけ、適切な対策を取ることで、ハリ・コシのある元気な髪を目指しましょう。
- 1. 髪の毛の構造と太さの仕組み
- 2. 髪の毛が細くなる原因
- 2.1. 遺伝的な要因
- 2.2. ホルモンバランスの影響
- 2.3. 栄養不足・生活習慣
- 2.4. 加齢による影響
- 2.5. その他(ストレス・環境要因など)
- 3. 栄養・生活習慣の改善で髪を太くする
- 3.1. バランスの良い食事
- 3.1.1. タンパク質
- 3.1.2. ビタミン類
- 3.1.3. ミネラル類
- 3.2. 適度な運動と十分な睡眠
- 3.3. ストレスの軽減
- 4. スカルプケアとシャンプーの選び方
- 5. 髪を太く見せるための工夫
- 6. 医療による髪を太くするためのアプローチ
- 6.1. 専門医の診断と治療計画
- 6.2. 発毛を促す医薬品(外用薬・内服薬)
- 6.2.1. ミノキシジル(外用薬)
- 6.2.2. フィナステリド(内服薬)
- 6.2.3. デュタステリド(内服薬)
- 6.3. 自毛植毛による改善
- 6.4. その他の治療法(低出力レーザー照射など)
- 7. まとめ
髪の毛の構造と太さの仕組み
髪の毛を太くする方法を理解するために、まず髪の構造と太さが決まる仕組みを押さえておきましょう。髪の毛の太さとは、一般的に毛髪の直径のことを指し、マイクロメートル(µm、1µm=1/1000ミリ)単位で測定されます。人種や個人によって差がありますが、基準の一例としては、直径30µm以下の髪を「細い髪(産毛)」、30~60µm程度を「中間の太さの髪」、60µm以上を「太い髪」と分類することがあります。
髪は大きく分けて、皮膚の外に出ている毛幹と、皮膚の中に埋まっている毛根から構成されています。毛幹はさらにいくつかの層からなり、外側から順に表面を覆うキューティクル(表皮層)、髪の大部分を占めるコルテックス(皮質層)、そして中心部のメデュラ(髄質層)です。髪の強度や弾力性は主にコルテックスで決まり、メラニン色素もここに含まれます。髪の太さ自体には、中心の髄質層が関与すると考えられています。ただし髄質の役割は完全には解明されていないものの、細い髪(軟毛)では髄質が欠けていることが多いことが知られており、髪の細い・太いに影響していると考えられます。一方、髪の表面のキューティクルはうろこ状の細胞が重なった保護層で、髪内部の水分保持や艶を左右します。ドライヤーの熱やパーマ・カラーリング剤、紫外線などによってキューティクルが傷つくと内部のコルテックスが露出・損傷し、髪のハリやコシが失われて細く感じる原因になります。そのため髪を太く健康に保つには、内部構造だけでなく表面のキューティクルをケアしてダメージを防ぐことも重要です。

皮膚内に埋まっている毛根は「毛包(もうほう)」と呼ばれる筒状の組織に包まれており、髪を作り出す工場のような役割を果たしています。毛根の一番下、球根状に膨らんだ部分を毛球といい、その内部に毛母細胞と呼ばれる髪を生成する細胞の集まりがあります。毛母細胞は盛んに分裂増殖して新しい髪の毛を作り出す元となる細胞であり、髪の成長そのものを司っています。毛球の底部には毛乳頭という組織があり、ここには毛細血管が密集しています。毛乳頭は血液から栄養素や酸素を受け取り、それを毛母細胞に送り届ける役割を担っています。つまり、毛母細胞が十分に栄養と酸素を得て活発に働くことで、太くしっかりとした髪が生み出されるのです。
髪の毛一本一本は一定のサイクルで生え替わっています。この毛周期(ヘアサイクル)における成長段階も髪の太さと深く関係しています。毛髪は「成長期(アナゲン期)」に毛母細胞が盛んに分裂して太く長く伸び、次の「退行期」に成長が止まってから「休止期」に抜け落ちます。このうち成長期は頭髪の場合およそ3~7年と非常に長く、健康な頭髪の約85~90%は成長期にあります。成長期が長いほど髪は長く太く成長します。長期間にわたり毛母細胞が分裂・増殖を続けられるほど、その髪はしっかりと太さを増していくからです。裏を返せば、何らかの要因で成長期が短縮したり毛母細胞の働きが低下すると、髪は十分太く成長できず細い毛のまま抜けてしまいます。男性型脱毛症(AGA)では、ホルモンの影響で成長期が徐々に短くなり毛が細く弱々しくなっていきますが、これも毛周期と毛母細胞の活動低下が関係しています。髪の太さを語る上で、毛根の毛母細胞と毛乳頭の働き、そしてヘアサイクルの長さは欠かせないポイントなのです。
髪の毛が細くなる原因
では、髪の毛が細くなってしまう要因にはどのようなものがあるのでしょうか。「髪の太さの大部分は遺伝的に決まる」とされていますが、その他にも加齢やホルモンバランス、栄養状態、生活習慣、ストレス、頭皮環境など様々な要因が絡み合って髪が細くなっていきます。ここでは主な原因を一つずつ見ていきましょう。
遺伝的な要因
髪の太さは主に遺伝によって決定されるといっても過言ではありません。親から受け継いだ遺伝子が髪の太さや毛質に大きく影響し、家系的に太い髪の家族は子どもも太い髪になる傾向があります。実際に髪の構造や太さに関わるいくつかの遺伝子(髪の主成分ケラチンに関する遺伝子、男性ホルモン(アンドロゲン)やその受容体に関与する遺伝子、人種に関連する遺伝子など)が髪の太さに影響すると考えられています。生まれつき「猫っ毛」と呼ばれる柔らかく細い髪質の方もいますが、これは毛穴の形状や毛根の構造が遺伝的に決まっているためで、根本的に髪の直径そのものを劇的に太く変えることは難しいかもしれません。しかし、遺伝的に細い髪質であっても、後述するケアや生活習慣の改善によってハリ・コシを与えて髪をボリュームアップすることが期待できます。遺伝だからといって何もできないわけではなく、適切な対策で髪の状態を最大限良く保つことが大切です。
ホルモンバランスの影響
ホルモンの変化も髪の太さに大きな影響を及ぼします。男性ホルモン(アンドロゲン)の一種であるジヒドロテストステロン(DHT)は、AGA(男性型脱毛症)の主因として知られ、毛包を縮小させて髪を細く弱くしてしまう作用があります。DHTはテストステロンが5α還元酵素(5αリダクターゼ)によって変換されてできる物質で、このDHTが毛乳頭に作用すると毛母細胞の分裂活動が抑制され、成長期が短縮して髪がどんどん細くなることが分かっています。また女性の場合は女性ホルモン(エストロゲン)が豊富だと髪が健やかに保たれやすいですが、更年期などでエストロゲンが減少すると髪が細くコシが無くなることがあります。さらに甲状腺ホルモンや成長ホルモンの異常も髪質の変化につながることがあります。このようにホルモンバランスの乱れは毛母細胞の働きや毛周期に影響し、結果として髪の太さに表れていきます。
男性の場合、AGAの発症では遺伝要因に加えてホルモン(DHT)の影響が大きく、思春期以降に額の生え際や頭頂部の毛が細く短くなっていきます。一方女性でも出産後や更年期のホルモン変化で一時的に髪が細くボリュームダウンすることがあります。ホルモンが原因と考えられる脱毛・毛髪細りには、医療的なホルモン療法やAGA治療薬が有効な場合があります。いずれにせよ、ホルモンバランスの乱れが疑われる場合は専門医に相談して適切な治療を検討すると良いでしょう。
栄養不足・生活習慣
栄養状態の悪化や不健康な生活習慣も、髪を細くする一因となります。髪の主成分はタンパク質(ケラチン)ですから、極端なダイエットや偏食でタンパク質が不足すると健全な髪が作られず、細く弱い毛が増えてしまいます。また、髪の成長に必要なビタミン類(ビタミンA・B群・C・Eなど)やミネラル類(特に亜鉛・鉄分など)が不足すると、毛母細胞の働きが低下したり頭皮環境が悪化して髪の成長が阻害される可能性があります。例えば亜鉛は細胞分裂に必須の元素で、不足すると毛母細胞の増殖が鈍り髪が細くなりやすくなります。また貧血などでみられる鉄分不足は毛根への酸素供給低下を招き、女性のびまん性薄毛の原因の一つとしても知られています。
不適切なヘアケアも髪を細く見せる原因になります。毎日のシャンプーで爪を立ててゴシゴシ洗ったり、高温のドライヤーを近距離から長時間当てたり、パーマやカラーリングを繰り返すと、髪や頭皮にダメージが蓄積しキューティクルが剥がれて髪が痩せ細る原因となります。特に過度な熱や摩擦によるダメージで髪表面が傷むとツヤが失われて毛が細く見えますし、切れ毛・枝毛が増えて全体のボリュームダウンにもつながります。生活習慣では喫煙も血流を悪化させて毛根への栄養供給を妨げ、髪の成長不良を招くリスクがあります。反対に後述するように規則正しい生活や適度な運動で血行を促進すれば、毛根に栄養が届きやすくなり髪のハリを保つことが期待できます。 このように、栄養バランスの乱れや誤ったヘアケア・生活習慣は、髪を細く弱くする大きな要因です。髪のためには身体の健康が基本となりますので、髪が細くなってきたと感じたらまず生活習慣を見直すことが重要になります。
加齢による影響
年齢を重ねることも髪の太さに影響を及ぼします。一般的に、若い頃は太くコシのある髪だったのが、中高年になるとだんだん髪が細くボリュームが減ってくることがあります。これは毛根や毛包の老化、毛髪を作る細胞の活力低下、ケラチン産生量の減少などが原因と考えられています。加齢に伴い頭皮の血行も悪くなりやすく、毛乳頭への十分な栄養供給が難しくなることも一因です。さらに男性ホルモン・女性ホルモンのバランス変化や、ヘアサイクル自体の短縮も関与します。例えば高齢になると成長期が短くなり休止期の割合が増えるため、髪が十分太く育たないまま抜け落ちやすくなります。また、年齢とともに髪の内部のメラニン色素が減少して白髪になると髪の透け感が増し、細くなったように見えることもあります。白髪自体は太さは変わらなくても光の透過で薄く見えがちです。 以上のように加齢現象そのものは避けられません。しかし髪の老化を遅らせることは可能です。頭皮マッサージや育毛剤の使用、生活習慣の改善などで頭皮の血流を保ち、毛母細胞を活性化させることで、年齢を重ねてもできるだけハリのある髪を維持することが期待できます。
その他(ストレス・環境要因など)
その他にも、過度なストレスや睡眠不足、大気汚染などの環境要因、何らかの疾患や薬剤の影響などで髪が細くなる可能性があります。ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、血管を収縮させて頭皮の血行を悪化させます。その結果、毛乳頭への栄養供給が滞って毛母細胞の働きが低下し、髪が十分太く成長できなくなることがあります。強い精神的ショックや極度のストレスで一時的に脱毛が増える「休止期脱毛」という現象も知られており、ストレスと髪の関係は無視できません。また慢性的な睡眠不足も成長ホルモンの分泌リズムを乱し、細胞の新陳代謝や毛髪の修復に支障をきたします。
環境面では、紫外線や大気中の汚染物質も髪や頭皮にダメージを与え、結果的に髪が細くなる一因となりえます。紫外線は髪のタンパク質を変性させキューティクルを傷めますし、排気ガス中の有害物質は頭皮に炎症を起こす可能性があります。さらに、何らかの病気(甲状腺疾患、貧血、皮膚疾患など)や薬の副作用(抗がん剤など)で髪が細く薄くなるケースもあります。このように「その他」の要因は多岐にわたりますが、日頃からストレスケアを心掛け、十分な睡眠をとり、頭皮を清潔に保つことで、こうした外的要因による悪影響を極力減らすことができます。
栄養・生活習慣の改善で髪を太くする
髪を太く育てるための基本は、健康的な生活習慣とバランスの良い栄養補給です。髪は身体の一部ですから、体調や栄養状態が髪質に現れます。「最近髪が細くなってきたかも?」と感じたら、まずは日々の生活を見直してみましょう。ここでは、髪のハリ・コシを取り戻すために有効な食事・睡眠・運動などのポイントについて解説します。
バランスの良い食事
食生活の改善は、太く健康な髪を育てる上で最も重要と言っても過言ではありません。毛髪の主成分ケラチンを作るには様々な栄養素が必要で、中でも以下の栄養は意識して摂取したいところです。
タンパク質
髪の原料となるケラチン合成に不可欠です。肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など良質なタンパク質を十分に摂りましょう。特に朝食を抜いたり極端な炭水化物ダイエットをするとタンパク質不足に陥りやすいため注意が必要です。
ビタミン類
ビタミンA・B群(特にビオチン、パントテン酸)・C・Eは毛母細胞や頭皮の健康維持に重要です。これらは緑黄色野菜、果物、肉や魚、ナッツ類などに豊富に含まれます。ビタミン不足は頭皮の代謝低下やフケ・乾燥を招き、結果的に髪の成長に悪影響を与えます。
ミネラル類
鉄分、亜鉛、セレン、マグネシウムなどのミネラルも髪の成長促進に役立ちます。海藻類、貝類、赤身の肉、レバー、ナッツ類、乳製品などから摂取できます。特に亜鉛は細胞分裂に必須で、不足すると髪が細くなりやすいため積極的に摂りたいミネラルです。
以上のような栄養素をバランス良く含む食事を心掛けることで、毛母細胞に十分な材料が供給され、髪が太く育ちやすくなります。忙しくて食事が偏りがちな場合は、マルチビタミン剤や亜鉛・鉄などのサプリメントを上手に取り入れるのも一つの方法です。ただし過剰摂取にならないよう注意し、あくまで補助的に利用しましょう。基本は食事から栄養をとることが望ましく、栄養の偏った食事の持続的な摂取や過度の飲酒・喫煙は控えて、髪と体に優しい食生活を続けてください。
適度な運動と十分な睡眠
血行を促進する習慣も髪の太さ維持に有効です。適度な有酸素運動やストレッチを日常に取り入れることで全身の血の巡りが良くなり、頭皮の毛細血管にも十分な血液が届きやすくなります。血液は毛乳頭へ酸素と栄養を運ぶ役割がありますから、運動不足で血流が滞ると髪に必要な養分供給が不足しがちです。ジョギングやウォーキングなど軽い運動を習慣化してみましょう。運動はストレス発散にもなり一石二鳥です。 また、睡眠も髪を太く育てるために重要な時間です。人間の成長ホルモンは睡眠中、とりわけ夜22時~深夜2時頃に多く分泌されることが知られています。成長ホルモンには細胞の修復や育毛を促す作用があるため、この時間帯にしっかり熟睡していることが理想です。慢性的な睡眠不足は成長ホルモン分泌の妨げになるだけでなく、ストレス耐性も低下させます。夜ふかしを避けて、質の良い睡眠を十分にとるようにしましょう。寝つきを良くするために寝る前のスマホやPCの使用は極力控えると良いでしょう。
ストレスの軽減
前述のように、ストレス管理も髪のためには欠かせません。強いストレスがかかると自律神経のバランスが乱れ、頭皮の血管が収縮して血行不良になります。その結果、毛根に栄養が十分行き届かず髪が細くなったり抜け毛が増えたりします。またストレスに伴うホルモン変化もヘアサイクルを乱す可能性があります。ストレスを完全になくすことは難しいですが、上手に発散・緩和する工夫をしましょう。趣味の時間を持ったり、軽い運動でリフレッシュしたり、深呼吸や瞑想で心を落ち着けるのも効果的です。忙しい現代人にとってストレスは避けられませんが、自分なりのリラックス法を見つけて溜め込まないことが大切です。必要なら抱え込まず周囲に相談したり、専門家のカウンセリングを受けるのも良いでしょう。ストレスを減らし心身の健康を保つことが、巡り巡って髪の健康(太さ)維持につながります。
スカルプケアとシャンプーの選び方
毎日の頭皮ケアを適切に行うことで、髪が細くなるのを防いだりハリのある毛が育ちやすい環境を整えることができます。ここではシャンプーやマッサージなどスカルプケアのポイントを解説します。
まず、シャンプー選びと洗い方です。髪が細くボリュームが出にくい方は、できるだけ頭皮に優しいシャンプーを使いましょう。刺激の強すぎる洗浄成分を含む製品は必要な皮脂まで奪い頭皮を乾燥させてしまうため、アミノ酸系などマイルドな洗浄成分のシャンプーがおすすめです。シャンプーに髪そのものを太くする劇的な効果を期待しすぎず、頭皮を清潔に保つことが最大の目的と考えましょう。選んだシャンプーで大切なのは洗い方です。爪を立てず指の腹で優しくマッサージするように洗い、十分にすすいでください。この際、熱いお湯で洗い流すと皮脂をとり過ぎてしまう場合があるため、すすぐ際はぬるま湯で流すよう心掛けておきましょう。
次にドライヤーでの乾かし方です。濡れた髪はキューティクルが開いた状態でダメージを受けやすいため、自然乾燥ではなくドライヤーで早めに乾かしましょう。ただし高温を長時間当てると髪を傷めるので、ドライヤーの温度は中低温に設定もしくは距離をなるべく離して使用し、ある程度乾いたら冷風に切り替えて仕上げるとキューティクルが引き締まりツヤが出ます。乾かす際に引っ張りすぎやブラッシングのし過ぎは逆効果なので注意しましょう。優しくブラシを使い、摩擦ダメージを避けながらふんわりと整えることがポイントです。
さらに、頭皮マッサージや育毛剤の使用も髪を太くするサポートになります。お風呂上がりなどに指の腹で頭皮全体を揉みほぐすようにマッサージすると血行促進につながり、毛根への栄養供給を助けます。市販の育毛トニックやエッセンスには血行促進成分や保湿成分が含まれるものが多く、頭皮環境を整えるのに有用です。毎日のマッサージ習慣や育毛剤の併用によって「毛包に栄養が行き渡りやすくなる」ことが期待できます。ただし、マッサージはやり過ぎ厳禁です。力を入れすぎたり長時間揉み続けると頭皮をかえって傷つけてしまう可能性があり逆効果になりかねません。適度な力加減で1日5分程度リラックスしながら行いましょう。 以上のように、日々のスカルプケアを正しく行うことで頭皮環境が整い、太くしっかりした髪が育ちやすくなる下地を作ることができます。髪を太くしたいときには、まずは基本のケアを見直してみてください。それだけでも髪のハリ・コシに違いが出てくるはずです。
髪を太く見せるための工夫
髪そのものを太くするには時間がかかりますが、スタイリングの工夫によって今ある髪を太く見せ、ボリュームアップしたように演出することも可能です。ここでは、髪を「太く見せる」ためのテクニックやアイテムをご紹介します。
ヘアスタイルの工夫は即効性のある方法です。カットやスタイリングによってはボリュームを感じさせることができますので、カットやスタイリングに関しては、美容師さんや理容師さんなど専門の方に詳しく相談すると良いでしょう。
そして、髪を太く見せるためのアイテムの利用も選択肢としては検討できます。市販の増毛パウダーやスプレー(いわゆる髪の毛の「ふりかけ」)は、細かい人工繊維や微粉末を髪に付着させて太く見せる製品です。薄毛の部分に振りかけると髪一本一本が太くなったようにボリュームアップし、地肌の透けも目立ちにくくなります。これらは雨や汗にも比較的強い製品もあり、シャンプーで簡単に洗い流せるため日常的に使いやすいのが利点です。黒や茶色など髪色に合わせた色付きの繊維を使えば、ボリュームアップと同時に白髪隠しにもなるので、一石二鳥です。瞬時に髪の印象をアップさせたい方は、一度こうした製品を試してみるのも良いでしょう。ただし、地肌に付着したままだと毛穴づまりの原因になることもあるため、使った日はしっかり洗髪して落としてください。
最後に、即効性のある方法としてかつら・ウィッグの利用もあります。部分ウィッグを使えば、今ある髪にプラスして部分的にボリュームを増やすことができます。最近の人工毛ウィッグは非常に自然で通気性も良く、薄毛に悩む男女がファッション感覚で利用するケースも増えています。ウィッグは装着すれば一瞬でふさふさの髪を手に入れられる反面、毎日の手入れや装着の手間、長時間使用による頭皮への負担や費用がかかる等のデメリットもあります。必要に応じて検討すると良いでしょう。興味があれば専門家に相談してみてください。
以上のように、髪型・スタイリングや増毛グッズを駆使することで、今ある髪を太く見せてボリュームアップすることは可能です。これらはあくまで工夫であって根本的な太さへの解決策ではありませんが、これらの工夫を凝らしつつ、並行して次章以降で述べる髪そのものを太く育てる対策を講じていけば、見た目の変化と髪質改善の両面からアプローチできます。
医療による髪を太くするためのアプローチ
自己ケアを行っても髪の細りや薄毛が進行してしまう場合、医療的なアプローチも検討しましょう。専門の医師の診断のもとで原因を特定し、適切な治療を受けることで、細くなった髪を太くコシのある状態に改善できる可能性があります。ここでは、専門のクリニックで受けられる代表的な治療法について解説します。
専門医の診断と治療計画
髪が細くなってきたと感じたら、まずはAGA専門クリニックなどの専門医に相談することをおすすめします。髪が細くなる原因はAGA(男性型脱毛症)に限らず、女性のびまん性脱毛症や円形脱毛症、甲状腺疾患など様々です。自己判断で市販薬を使ったり民間療法に頼る前に、医師に現在の状態を正確に評価してもらいましょう。専門医であれば毛髪や頭皮の検査を行い、髪が細くなっている原因(AGAかそれ以外か)を診断した上で、個人に適した治療プランを提案してくれます。特にAGAと診断された場合は、以下に述べるような医学的根拠のある治療法によって、細くなった毛を太く丈夫に育てることが期待できます。
発毛を促す医薬品(外用薬・内服薬)
AGA治療薬の使用は、細く弱った髪を太くする効果が期待できる代表的な治療法です。日本皮膚科学会の男性型脱毛症治療ガイドラインでも推奨されている治療であり、多くの臨床実績があります。主な薬剤として以下のようなものがあります。
ミノキシジル(外用薬)
頭皮に直接塗布するタイプの発毛剤です。ミノキシジルには血管拡張作用があり、頭皮の血行を改善して毛乳頭へ栄養や酸素を届けやすくすることで発毛を促進します。臨床的にも毛髪の成長促進効果が認められています。ただし即効性はなく、効果を実感できるまで最低6ヶ月程度は継続使用が必要です。日本では男性用は5%濃度、女性用は1~2%濃度と使える濃度が異なります。薬局で購入できるリアップなどもこの成分です。
フィナステリド(内服薬)
飲むタイプのAGA治療薬です。男性ホルモンのテストステロンが毛根で脱毛ホルモンのジヒドロテストステロン(DHT)に変換される際に関与する5α還元酵素(5αリダクターゼ)という酵素を阻害することでDHTへの変換を防ぎ、AGAの進行を食い止めます。簡単に言えば、フィナステリドは髪を細くする悪玉ホルモンDHTの産生を阻害する薬です。6~12ヶ月の服用で抜け毛の減少や軟毛化した髪の太さ改善効果が期待できます。注意点として、この薬は男性にしか使用できません。女性や未成年への投与は禁忌とされています。プロペシアという製品名が日本では有名です。
デュタステリド(内服薬)
フィナステリドと同じく5α還元酵素を阻害するAGA治療薬ですが、フィナステリドが抑える酵素タイプのII型だけではなく、I型とII型両方の酵素タイプを抑制するため、より強力にDHTの産生を抑える作用があります。そのぶん発毛効果も高いとされていますが、副作用リスクもあり注意が必要です。デュタステリドも男性に限られた薬で、女性は使用できません。日本ではザガーロという製品名でも処方されています。
これらの医薬品治療は比較的手軽に始められる反面、効果には個人差があり、また服用・使用を中止すると再び細くなってしまうことが多いため、長期的な継続が必要です。医師と相談しながら自分に合った薬を選択し、副作用(性機能への影響や初期脱毛など)についても十分理解した上で使用してください。適切に用いれば、細かった毛髪が太くコシのある状態に回復することも十分期待できます。
自毛植毛による改善
AGA治療薬以外の選択肢としては自毛植毛という治療法もあります。自毛植毛は、現状ある髪を太くするというより「後頭部など太い毛が生えている部分の毛根を気になる部分へ移植する」というアプローチです。自分自身の毛を移植するため拒絶反応がなく、移植後はその毛が生涯生え続ける事が期待できるのが最大の特徴です。AGA治療薬では効果が不十分だったり、既に細い毛すらほとんど生えていないような部分には、植毛が有力な選択肢となります。
植毛では、後頭部や側頭部の太くてAGAの影響を受けにくい髪を採取し、薄毛部位に毛包単位で移植します。例えば直径90µmの太い毛を、生え際など細い毛(30~50µm程度)しかない部分に移せば、その部分は太い毛が生えるようになるわけです。移植された毛は定着すれば通常の髪と同じように成長し続けます。自毛植毛は外科的治療ではありますが、日本皮膚科学会のガイドラインでも、男性のAGAに対しては推奨度B(行うよう勧められる)、女性のAGAでもC1(行ってもよい)とされ、有効性が認められた治療法です。一度移植してしまえばあとは自分の髪として特別なメンテナンスや買い替えなどは不要で、継続的にかかるコストや手間も掛かりません。 植毛手術にはメスで皮膚を帯状に切り取るFUT法と、パンチで毛根をくり抜くFUE法がありますが、髪の太さ自体への影響はどちらでも同じです。どちらの方法でも後頭部など太い毛のエリアからドナーを採取するため、結果的に移植部位には太くしっかりした毛が生えるようになります。植毛手術は費用が高額であること、外科的手術のため術後の赤みや一時的なショックロス(移植周囲の毛が一時的に抜ける現象)等の副作用が起こることもあり、必ず髪を採取したエリアに傷痕が残ります。しかし、薄毛部分に太い毛を増やす方法としては非常に効果的です。投薬との併用で既存の細い毛もケアしつつ、植毛で新たに太い毛を追加することで、全体のボリュームアップを図ることが期待できます。
その他の治療法(低出力レーザー照射など)
上記のほかにも、クリニックでは様々なアプローチで髪を強く育てる治療が行われています。例えば、低出力レーザー療法やLED光療法は頭皮に特殊な光を当てて血行促進や細胞活性化を図る方法です。家庭用のレーザー育毛器具(レーザー帽子やレーザーコームなど)も市販されています。光による刺激で毛母細胞を元気づけ、髪を太く育てる効果が期待できますが、効果には個人差があり医学的エビデンスは限定的です。
即効性の観点では、前述した部分ウィッグ(かつら)の使用もクリニックで提案される場合があります。医療用ウィッグであれば専門家がサイズや毛色を調整してくれるため自然な仕上がりです。ウィッグは治療とは言えませんが、メンタル面も含め総合的に薄毛対策を考える上で一つの手段です。
その他、頭皮の状態によっては抗炎症剤や育毛メソッドを組み合わせることもあります。例えば皮脂分泌が多く毛穴づまりがある人には頭皮の抗炎症ローションを処方したり、フケ症であればそれを改善するシャンプー指導を行ったりします。髪を太くするには毛根が健康であることが前提ですので、頭皮のトラブルを抱えている場合はその治療から始める必要があります。
このように、「髪を太くする」ための医療アプローチには複数の選択肢があります。それぞれメリット・デメリットがありますので、専門医と相談しながら自分の症状に合った方法を選ぶことが大切です。一人で悩まず、まずは医療機関で現状をチェックしてもらうところから始めてみましょう。
まとめ
髪の毛を太くする方法について、原因から対策まで幅広く紹介してきました。髪の太さそのものは遺伝によるところが大きいですが、髪が細くなってしまうかどうかは生活習慣やAGAなどの要因が密接に関与します。日頃からバランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけ、正しいヘアケアとストレス管理で髪と頭皮の健康を保つことが何より重要です。そうすることで、持って生まれた髪質を最大限良好な状態に維持し、細くなりかけた髪の踏ん張りを利かせることが期待できます。また、「最近髪が細くなってきた」「抜け毛が増えて地肌が透ける」と感じ始めたら、早めに専門の医師に相談するようにしましょう。自己流のケアで悪化させてしまう前に、プロの視点で原因を見極め適切な対策を講じることが肝心です。
1998年より薄毛治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックでは、ミノキシジルやフィナステリド・デュタステリドといったAGA治療薬は勿論、FUT法とFUE法の両植毛に対応が可能な薄毛治療専門のクリニックです。経験豊富な医師が個別にお悩みをじっくりとお伺いさせて頂き、一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。
監修医師プロフィール
東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら)
AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太
