富士額はM字はげになりやすい?【医師監修】

 富士額(ふじびたい)といわれる生え際と、M字型(はげ)といわれる生え際は若干似ているところもありますが、それぞれに違う特徴を持ちます。また、これらの生え際の形状が、脱毛症の進行に影響するのか、それとも単なる見た目の違いに過ぎないのか、関係性はあるのか等について疑問に思っていらっしゃる方もいるかと思います。そこで本記事では、富士額とM字型(はげ)の関係についてご紹介してみたいと思います。

富士額とは?

 富士額(ふじびたい)は、その名の通り、富士山の形状に似ている額の形を指します。これは、髪の生え際が中央(正中)でV字型に少し下がり、左右が高くなる独特の形状を特徴としています。日本では古来より美的要素とされ、特に女性において魅力的とされており、お雛様の生え際も見事な富士額になっています。富士額の形成には、遺伝的要素が強く関係しています。髪の生え際の形状は、遺伝子によって決定されますので、親や祖父母から特定の遺伝子を受け継ぐことで、富士額の特徴を持つことが多いです。この形状は、家族内で共通して見られることが多く、遺伝による影響が顕著にみられます。一般的には健康的な髪の成長を示す先天的な生え際の特徴です。

M字型(はげ)の生え際とは?

 M字型(はげ)の生え際は、AGA(男性型脱毛症)の一形態であり、髪の生え際がM字型に後退する現象を指します。額の両端が後退し、中央が残る形状が特徴です。男性の間では比較的よく見られる脱毛パターンで、AGAの進行に伴って起こってくる後天的な生え際の特徴です。
 男性の場合、薄毛でなくともヘアラインの形がM字型を描くことが多く、正中に比べて左右の部分が高い位置にあることが多いです。このヘアラインの形は20代半ばくらいに完成します。高校生くらいまでは正中と左右のヘアラインの高さが同じ「丸い形のヘアライン(女性的な形のヘアライン)」が多く、そこから徐々に左右が切れ上がってきて20代半ばくらいにMの形で固定化するパターンが多いようです。 10代後半くらいで左右のヘアラインが上がってきて「AGAではないか」と不安になる方がいますが、これは正常な発達の範囲です。通常は放っておいてもある程度のところで止まります。
 AGAが発症して薄毛が進行する際は、M字型は左右の所謂「そりこみ」部分を中心に薄毛が頭頂部に向かって進行していきます。正中部分(中央部)を囲むように進行して、島のような形で残って進行していく場合があります。もし頭頂部の薄毛も発症している場合は、進行していった結果、生え際の薄毛と重なって、より広範囲が薄毛の状態になる可能性があります。

富士額とM字型(はげ)の関係

 このように富士額とM字型(はげ)は、見た目の形状が一部似ていることがありますが、一方は先天的な生え際であり、一方は後天的な生え際となりますので、全く違う性質を持つ生え際となります。では、富士額の人はM字型(はげ)になりやすいのでしょうか?答えは「ノー」です。M字型(はげ)を進行させる原因のAGAは、「AGA(男性型脱毛症)とは」などでも紹介させて頂いている通り、ホルモンバランスの変化によって起こる事がほとんどです。これは遺伝的要因や加齢による要因の影響をうけてはいますが、特に生え際の形状とは直接的な関係はないため、「富士額だからM字型(はげ)になりやすい」とはいえませんし逆に「富士額だからはげない」ともいえないのです。

生え際の薄毛の予防

 生え際の薄毛を予防する為にできる予防法がいくつかありますので、代表的な例を挙げさせて頂きます。遺伝的な要因を防ぐことは難しいですが、間接的な要因に対してはリスクを下げる事は出来ます。

バランスの良い食生活

 薄毛の予防と髪の健康維持には、バランスの取れた食事をとる事は欠かせません。特にタンパク質、ミネラル(亜鉛や鉄など)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンEなど)を含む食品が、髪にとって有益であるとされています。具体的には、サーモンやサバなどの脂肪分の多い魚、にんじんやほうれんそう、ピーマン、トマトなどの緑黄色野菜、脂肪分の少ない赤身の牛肉、鶏肉、卵、乳製品などが、これらの栄養素を多く含んでいますので、食事をとる際にこれらをバランスよく取り入れるよう心掛けてみてください。

十分な睡眠

 睡眠不足は髪の健康に悪影響を与えます。髪の成長や代謝には成長ホルモンが必要ですが、このホルモンは主に睡眠中に分泌されることが知られています。そのため、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が十分になされず、髪の健康に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。特に成長ホルモンは22時から2時頃に最も分泌されると言われていますので、夜更かしはほどほどに早めの就寝を心掛けておくと良いでしょう。

ストレス管理

 「ストレスは万病のもと」という言葉で表されることがあるくらい、ストレスは薄毛だけでなく、さまざまな健康上の問題を引き起こす可能性があるため、日常生活でできる限りストレスを軽減することが重要です。適切な休息や適度な運動、趣味など、自身に合ったストレス対処法を積極的に取り入れましょう。心身の健康を守るためにも、ストレス管理には日々十分な注意を払いましょう。

ヘアケア、頭皮ケア

 頭皮をほぐす頭皮マッサージは頭部の血行を改善し、抜け毛を減らす効果が期待できます。ただし、過剰な洗髪や強い摩擦、引っ張りは髪に損傷を与えてしまうため、逆に抜け毛を誘発し、薄毛を招いてしまう可能性があります。頭皮マッサージの方法としては、指の腹を使って軽く圧迫し、頭皮を上下左右に優しく動かすのが適切です。

育毛剤、養毛剤、発毛剤

 育毛剤や発毛剤などは、細くなった髪を太くしたり、脱毛の進行を遅らせたり、抜け毛を減らすのに期待が持てる対策です。ただし、個人の体質によって効果には差があります。また、これらの製品を使用しても、薄毛の体質自体が劇的に改善されるわけではないので、過度な期待は避けておきましょう。

生え際の薄毛の対策・治療法

 生え際の薄毛の対策・治療法として、代表的な例を挙げると以下のようになります。

医師の診断

 まず薄毛の治療は専門の医師の診断を受ける事をお勧めします。薄毛はAGA以外の原因でも起こる場合があるので、ご自身の状態を診断して、その原因に合わせた治療を医師と進めていくのが良いでしょう。また、医師の診察が必要なAGA治療薬や植毛など、治療の選択肢を広げる意味でも専門の医師への相談をお勧めします。

医薬品

 薄毛の治療薬の中には、処方に医師の診察が必要なものもあります。フィナステリドやデュタステリド等の内服薬、ミノキシジルといった外用薬などは、日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」で評価A(行うよう強く勧める)と推奨されています。なお、生え際の薄毛の場合は、頭頂部の薄毛よりもAGA治療薬が利きにくい傾向があります。

植毛(自毛植毛)

 植毛は薄毛が気になる部分に自身のAGAの影響を受けにくい髪の毛を移植する医療技術です。自身の髪の毛を毛包ごと移植、他の自毛同様に伸びてくるため、定期的なメンテナンスの必要もなく、散髪や洗髪はもちろん、パーマやカラーリングなども自身の髪の毛同様に行なう事が出来、水や風を気にすることなく運動やアクティビティなども楽しむことができます。
 日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」において、「フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用などの薬にの効果が十分でない症例に対して、他に手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧め、女性型脱毛症には行ってもよいこととする。」と記載されており、自毛植毛は男性型脱毛症はB(行なうよう勧める)、女性型脱毛症にはC1(行なっても良い)となっています。
 また、自毛植毛であれば好みの形にヘアラインを形成することができますので、「富士額にしたい」といった御希望がある場合でも対応が可能となります。

その他

 LED及び低出力レーザー治療、かつら、アデノシンの外用、ケトコナゾールの外用など、その他にも様々な治療法があります。それぞれの治療法のメリットやデメリット、リスクや副作用等を詳細に専門の医師に説明してもらった上で、ご自身の症状やご予算、ご希望等を踏まえた上で治療法の選択をしていきましょう。クリニックによって得意とする方法や医師との相性もあるかと思いますので、もし可能であれば複数のクリニックに相談に行かれるのも良いでしょう。

まとめ

 富士額は、先天的な生え際で、M字型との関係はありません。ただし、富士額だからといって薄毛にならないという訳ではないので、薄毛予防を早めにとっておくと薄毛のリスクを軽減する事が期待できるでしょう。もし薄毛が気になり出した場合は、専門の医師に相談して、自身の現状を把握した上で、状況に合った治療を開始していく事が望ましいでしょう。また、富士額にしたいと御希望の場合は、自毛植毛であれば好みの形のヘアラインを形成することができますので、対応が可能となります。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックは、国内で数少ないFUTとFUEの両方に対応できるクリニックです。長年の実績に裏打ちされたノウハウを基に、経験豊富な医師が直接相談を承った上で、お悩みに寄り添って一緒に薄毛治療プランを考えております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方、生え際の薄毛で悩んでいる方などは、お気軽にご相談下さい。

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 正会員
医師 中島 陽太