自毛植毛をして10年経ったらどうなる?【医師監修】

自毛植毛をして10年経ったらどうなる?

結論サマリー

 自毛植毛AGAの影響を受けにくいドナー毛を移植するため、しっかり生着すれば、植毛10年後のみならず生涯生え続けることが期待できます。
 ただし、「既存毛の薄毛進行」や「将来を見据えないデザイン」などによって薄く見えることがあるため、長期的な視点に基づく治療プランを立てることがが重要です。

【要点】植毛10年後はどうなる?

  • 移植毛:生着していれば維持が期待できる
  • 既存毛:AGAの影響で薄毛が進行する可能性があり
  • デザイン:将来を見据えないと、不自然さが目立つことがある
  • 対策:必要に応じて既存毛に対する治療も併用する

 本コラムでは、植毛後10年が経過した際の一般的な状態の考え方を整理するとともに、移植毛を安定して維持するためのポイントや、既存毛も含めて髪の毛を長期的に保つための対策について解説します。

植毛10年後に移植した髪はどうなる?

基本的に移植毛は生え続ける

 自毛植毛は「新しい毛を生み出す治療」ではなく、他の部分に生えている髪の毛を必要な部位へ移す治療です。ドナーとなる後頭部・側頭部の毛根は、AGAの影響を受けにくいのです。そのため移植毛が術後にしっかり移植先で定着すれば、その後は通常の髪と同様の毛周期(ヘアサイクル)で成長を続けます。植毛後数週間で一時的に移植毛が抜け落ちる現象が起こりますが、これは術後にみられることがある一般的な経過で、毛根さえ生着していれば数ヶ月後から再び発毛が始まり、その後は生涯にわたって髪が生え変わり続けることが期待できます

移植毛はドナーの性質を引き継ぐ

 移植した毛髪は「別の毛」に生まれ変わるわけではなく、元のドナー部位の性質をそのまま引き継ぎます。例えば、ドナー部の髪が加齢とともに白髪になる傾向であれば、移植先でも同様に年齢相応に白髪が増えたり毛質が変化したりしますこれは「移植したことで特別な変化が起こる」のではなく、ドナー毛が本来たどるはずだった加齢変化が移植先でも起こるというイメージです。したがって、植毛から10年後に白髪が増えていてもそれ自体は不自然なことではなく、移植元の髪が歳相応に変化した結果といえます。同様に、髪の太さやくせなどの性質も移植先に受け継ぎます。

移植毛以外の要因で薄く見えることも

 「移植した髪は問題なく生えているのに、10年後なんとなく薄く感じる」という場合、その要因は多くの場合移植していない周囲の既存毛にあります。移植毛はAGAの影響を受けにくい一方、既存毛はその後もAGAの影響を受け続けるため、年月とともに周囲の毛が細くなり密度バランスが崩れてしまうことがあるのです。例えば、生え際や頭頂部への植毛後に、その周囲の元からあった毛がさらに後退・減少すると、移植部分だけ髪が残って不自然に見える(いわゆる離れ小島の状態になる)リスクがあります。そのため、そのようにAGAが進行した場合にも不自然に見えないようなデザインを考えて植毛プランを考えていく必要があります。またこのような場合には、AGA治療薬で既存毛の維持を図るか、あるいは追加の自毛植毛手術で薄くなった部分をカバーする、といった対策を検討します。

将来を見据えたデザインの重要性

 植毛10年後に不自然さを感じるかどうかは、植毛デザインにも大きく左右されます。薄毛の進行パターンは人により異なり、年齢とともに変化することもあるため、目先の薄毛部分だけを埋めればよいというものではありません。将来的な薄毛の進行リスクまで見据えて計画を立てておかないと、10年後に「植毛部だけ密集して周りがスカスカ」という状態になりかねません。そのため、自毛植毛の経験が豊富な医師に相談し、年齢による変化や今後の薄毛進行の見立てを踏まえて長期的にも自然に見えるデザインを心がけることが重要です。医師だけでなく看護師などチーム全体で植毛経験が豊富なクリニックで施術を受ければ、将来を見据えた計画のもとでデザイン及びその実現を目指してもらえるでしょう。

植毛10年後に薄く見える3つの理由

 植毛10年後に見え方の変化を感じる場合、多くは「移植毛が抜けた」というより、移植部周囲の変化やデザインの問題が、時間差で表面化しているケースが大半です。自毛植毛は、適切に行われ、生着していれば移植毛自体は長期的に維持されることが期待できます。しかし、頭髪全体は“静止した状態”ではなく、年齢やAGAの影響とともに常に変化していきます。そのため、10年という時間軸で見ると、当初は問題にならなかった要素が、見え方に影響してくるのです。
 とくに、植毛10年後に「思ったより薄く感じる」「以前ほどボリュームがあるように見えない」と感じる場合、主な要因は以下の3点に集約されます。

植毛10年後に薄く見えるときの典型パターン

  • 既存毛の進行:移植部は残っていても周囲が細くなる → 既存毛の維持策を検討
  • デザインのギャップ:10年の進行で密度バランスが崩れる → 将来を見据えた再設計/追加の検討
  • 移植毛がしっかり定着しなかった:術後に移植した毛包がしっかり生着しなければ、移植毛が生えてきません→術後1週間の管理の重要性

もともと生えていた既存毛のAGA進行

 もっとも多く、そして見落とされやすいのがこのケースです。移植毛はAGAの影響を受けにくい性質を持つ一方、植毛していない既存毛は、その後もAGAの影響を受け続ける可能性があります。そのため、年数の経過とともに、

  • 毛が細くなる(軟毛化)
  • 成長期が短くなり、ボリュームが出にくくなる
  • 密度が徐々に低下する

 といった変化が起こり、最初は「本数が減った」というより「地肌が透けやすくなる」「ボリュームが出にくくなった」といった変化が起こってきます。
 たとえば、前頭部に植毛しても、その周囲の既存毛が細くなれば、生え際のライン自体は保たれていても、境目が目立ったり、密度が落ちたように感じることがあります。頭頂部でも同様に、移植毛は残っているのに、周辺の既存毛が弱くなることで、地肌が見える円形の範囲が再び広がったように見えるケースもあります。このタイプは、「植毛が失敗した」というより、既存毛に対するAGAが徐々に進行している状態と考えるのが適切です。植毛10年後の見え方は、移植毛だけでなく、「残っている毛の質」にも大きく左右されることを理解しておく必要があります。

将来を見据えない植毛デザイン

 薄毛は直線的に進行するとは限らず、年齢とともに進行部位やスピードが変化することがあります。そのため、施術時点で「今、一番薄い部分」だけを基準に高密度で植毛すると、数年〜10年後に、

  • その周囲がさらに薄くなる
  • 密度差が強調される
  • 植えた部分だけが浮いて見える

といったデザイン上のギャップが生じることがあります。
 たとえば、生え際のM時部分のみを高密度で植毛した場合、その後前頭部全体が薄くなれば、生え際のM時に移植した部分だけが不自然に濃く、その部分以外がスカスカに見える状態になり得ます。これは技術的な失敗というより、「時間軸を十分に考慮しなかった設計」の問題です。植毛10年後の自然さを左右するのは、「どれだけ植えたか」ではなく、「将来、どこが薄くなりそうかを想定した配置と密度設計」です。初回施術時にこの視点が欠けていると、数年は仕上がりの見映えも良く、違和感なく過ごす事ができるかもしれませんが、年月が経って既存毛の薄毛が進行した際には、違和感が目立ちやすくなります。

生着が不十分だった場合

 植毛10年後の結果を左右するもう一つの重要な要素が、手術直後〜1週間の期間の生着過程です。移植した毛根(株)は、皮下組織に定着して初めて、その後の発毛・成長が可能になります。この初期段階で、

  • 強い摩擦や圧迫が加わる
  • 出血や炎症の管理が不十分
  • 洗髪・生活制限が守られない

といった要因が重なると、移植した株が定着せず脱落してしまう可能性があります。
 この場合、術後すぐに大きな異変を感じなくても、「最初から生えてこない部分」が将来まで残ることになります。つまり、10年経ってもその部位は埋まらず、結果として

  • 想定より密度が低い
  • ボリュームが出にくい
  • 部分的に薄さが残る

といった形で表面化します。
 言い換えれば、最初の数日〜1週間の過ごし方は、植毛10年後の見た目を決める「基礎工事」の期間とも言えます。この時期の管理が不十分だと、そもそも植毛した移植毛が生えてこない可能性があり、その影響は短期ではなく、長期にわたって残る点が大きな特徴です。

自毛植毛した移植毛を維持する為に

 植毛してから10年後の状態を左右するうえで、実は最初の関門になるのが「手術直後の過ごし方」です。自毛植毛した毛髪を10年後にも維持しておく為には、まずはそもそもの自毛植毛手術直後の移植毛をしっかりと生着させる必要があります。移植毛は、術後の一定期間を安全に過ごすことで移植先に「定着」し、その後は髪の毛として生え変わりながら維持されていくことが期待できます。「治療後の過ごし」や「植毛手術後の過ごし方」などでも詳しくご紹介させて頂いておりますが、自毛植毛手術後は下記のようにお過ごし頂くことを推奨しております。

治療当日~4日目

 移植した株(毛包)が頭皮の組織に定着するまでには、術後おおよそ3~5日程度かかります。この期間に毛包ごと株が脱落してしまうと、その部分は将来的に生えなくなってしまうため、植毛10年後まで長く維持するうえで、最も慎重な管理が必要な時期といえます。

この時期は、

  • 頭部をぶつけない
  • 移植部をこすらない・引っかかない
  • 無意識に触らない

といった点に特に注意が必要です。服の着脱や洗面時など、何気ない日常動作で刺激が加わることもあるため、普段よりも動作をゆっくり行う意識が大切になります。治療当日はアルコール摂取を控え、運動はできれば術後7日目頃まで控えることが推奨されます。洗髪は治療当日は行わず、翌日の夜からスプレーで濡らして優しく洗い、ドライヤーの冷風でしっかり乾燥させます。長時間の入浴、サウナ、熱いお湯に入ることも、この時期は避けてください。

※この期間は「清潔にしたい」という気持ちが強くなりやすい一方で、過度な摩擦が生着のリスクになる時期です。濡らし方・洗い方・乾かし方を守ることが、結果として植毛10年後の安定につながります。

 就寝時は、植毛後1週間程度は柔らかい枕や羽根枕を避け、固めの枕を使う、タオルを巻いて首の下に当てるなど、移植部がこすれにくい工夫を行いましょう。 かつらは、移植部に固定用の金具やテープなどが当たらなければ、3~4日目から使えます。ヘルメットは4日目以降(フルフェイスタイプのヘルメットは、少なくとも8日目以降)、バンダナか手拭いを頭に巻いた上からなら被れますが、ズレるなどして移植部をこすることがないよう注意してください。日常でどうしても必要な方ほど、「当たらない/擦れない/ズレない」条件を満たせるかを意識して細心の注意を払って使用しましょう。

術後5日目~13日目

 術後5日目以降になると、移植した毛包は皮下組織にある程度固定され、移植毛が脱落するリスクは大きく低下します。ただし、この時点で完全に安定したわけではないため、引き続き段階的な行動再開が重要です。ウォーキングや軽いサイクリングなど、息が大きく上がらない程度の運動であれば再開可能になりますが、急激に血圧が上がる運動や、頭部に強い揺れ・衝撃が加わる動作は控えめにします。大量に汗をかく運動は、かゆみや無意識に頭皮を触ってしまう原因にもなるため注意が必要です。
 術後7日目以降は、移植部を含めた洗髪時のこすり洗いが可能となり、かさぶたも洗髪によって自然に落ちていきます。ただし、「こすってよい=強くこすってよい」ではありません。爪を立てたり、無理に剥がしたりする行為は避けてください。
 この時期は赤みや腫れが引いてくるため、「もう大丈夫」と油断しやすい時期でもあります。しかし、毛包が生理学的に完全に安定するまでには、もう少し時間が必要です。この移行期の過ごし方が、その後の生え変わりや、植毛10年後の安定性に影響すると考えておくとよいでしょう。

術後14日目以降

 術後14日目以降になると、移植部・採取部ともに皮膚表面の回復が進み、通常通りの洗髪や日常生活がほぼ問題なく行える段階に入ります。外見上も落ち着いてくるため、多くの方が「手術前と同じ生活」に戻れる時期です。ただし、頭皮の内部ではまだ組織の修復や再構築が続いています。そのため、パーマやヘアカラー、ブリーチなどの化学的刺激を伴う施術や、サッカーのヘディング・格闘技など頭部に強い衝撃が加わる行為については、術後1か月以上経過してから行うようにしてください。
 この時期は、短期的な制限が解除される一方で、「植毛10年後を見据えた頭皮環境づくり」へ意識を切り替えるタイミングでもあります。強い摩擦を伴う洗髪やブラッシング、高温のドライヤー、刺激の強い整髪料の多用などは、可能な範囲で控えめにすることで、移植毛だけでなく既存毛のコンディション維持にもつながります。
 自毛植毛は「植えて終わり」の治療ではなく、生着後の環境づくりと長期的なケアが、植毛10年後の見え方を左右する治療です。判断に迷うことがあれば、自己判断せず、術後の指示を基本にクリニックへ相談することが、結果として長期的な安定につながります。

植毛10年後も維持していく為に

 先述のように、手術直後の過ごし方に注意し、移植した株をしっかりと生着させておけば、植毛してから10年後20年後も、移植した毛髪は生え続けることが期待できます。自毛植毛は、AGAの影響を受けにくい性質を持つドナー毛(側頭部・後頭部など)を移植する治療であるため、移植毛そのものは長期的に維持されやすい、という考え方が基本になります。
 一方で、注意したいのは「移植毛」と「もともと生えていた既存毛」は同じ条件ではない、という点です。移植した髪はAGAの影響を受けにくい一方、既存毛はAGAの影響を受けて薄毛が進行する可能性があります。その結果、植毛してから10年後に「移植部は残っているのに、周囲の髪が薄くなってきて全体として薄く見える」「当初の見え方と印象が大分変わってきた」と感じる方もいらっしゃいます。
 つまり、長期的に自然な見た目を保つためには、移植毛を守るだけでなく、既存毛もできる限り維持していく視点が重要です。 ここでは、植毛してから10年後も既存毛を出来るだけ維持していくために、日常で実践できるポイントを整理してご紹介いたします。どれか1つだけで全てが解決するというより、できる範囲で複数を組み合わせて極力「薄毛の進行を抑える」「頭皮環境を整える」「将来の変化に備える」ことが大切です。

AGA治療薬

 植毛10年後の見え方は、移植毛よりも既存毛の維持に左右されやすいため、必要に応じて治療の併用が検討されます。既存毛のAGA進行を抑える目的では、内服薬(フィナステリド、デュタステリド)や外用薬(ミノキシジル)などのAGA治療薬を併用することが、治療選択肢として検討されます。これらの医薬品は、日本皮膚科学会が策定している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」において、医学的根拠に基づく治療として「推奨度A(行うよう強く勧められる)」に位置づけられています。

内服薬(フィナステリド/デュタステリド)

 AGAの進行に関わる要因にアプローチし、「減っていくスピードを抑える」目的で用いられます。植毛10年後との関係でいうと、移植毛が保たれていても周囲の既存毛が細くなると密度バランスが崩れ、薄く見えることがあるため、既存毛の守りとして検討されます。
※処方が必要であり、副作用の可能性もあるため、医師と相談の上で使用します。
詳しくは「フィナステリドの効果と副作用【医師監修】」、「デュタステリドの効果と副作用【医師監修】」を参照下さい。

外用薬(ミノキシジル)

 ミノキシジル外用は、一般に頭皮の血流を支える作用などが知られ、髪に必要な栄養の運搬をサポートして髪の毛の成長を支える事が期待できます。植毛10年後の見え方は「本数」だけでなく、毛の太さ・ハリ・コシにも左右されるため、既存毛のコンディション維持という観点から検討されることがあります。
※市販品もありますが、刺激症状(かゆみ・赤み等)が出る場合があるため、合わない場合は無理せず相談します。
詳しくは「ミノキシジルの効果と副作用【医師監修】」を参照下さい。

食生活

 健康な毛髪の維持や薄毛の予防には、バランスの良い食事を摂ることが重要です。極端な偏食や過度なダイエットなどで栄養バランスが崩れると、髪のコンディションにも影響が出る可能性があります。植毛してから10年後に「毛が細くなった気がする」「ボリュームが出にくい」と感じる背景に、食事(栄養)が複合的に関与していることもありますので、日々の積み重ねが大切です。

  • タンパク質:肉・魚・卵・大豆製品などを偏りなく
  • ミネラル(亜鉛、鉄など):不足しやすい栄養素は意識して
  • ビタミン類(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンDなど):多様な食材からバランスよく

詳しくは「薄毛(はげ)と食事の関係【医師監修】」を参照下さい。

睡眠

 睡眠と髪の毛は密接な関係があります。髪の成長や新陳代謝を促す成長ホルモンは睡眠中に分泌されることが知られており、睡眠不足になると成長ホルモンがうまく分泌されず、髪の毛にとってマイナスの影響を与える可能性があります。植毛してから10年後まで長く安定させるためには、短期的な対策よりも、下記のようなことを続ける事が重要です。

  • 起床・就寝時間をできる範囲で一定にする
  • 寝る直前の刺激(スマホ・カフェインなど)を控えめにする
  • 眠りやすい環境を整える

詳しくは「薄毛(はげ)と睡眠の関係【医師監修】」を参照下さい。

ストレス管理

 特に、薄毛治療や植毛後は「見た目が気になる」「経過が不安」といった心理的ストレスが強くなりやすい時期もありますので、植毛してから10年後まで長く付き合っていくためにも、早めに下記のような対処の引き出しを持っておくことが大切です。

  • 「まとめて解消する」ではなく、小さくこまめにリセットする
  • 仕事・家事の負担が重い時期は、睡眠と食事だけは崩さない

詳しくは「ストレスと薄毛(はげ)の関係【医師監修】」を参照下さい。

ヘアケア、頭皮ケア

 頭皮マッサージなどで血流を良くすることは、ストレスケアのみならず抜け毛を予防する効果も期待できます。また、カラーやパーマなどは日常的な楽しみでもありますが、頭皮に刺激がかかる場合もあります。植毛してから10年後の状態を安定させる観点では、頻度ややり方を調整しつつ、違和感が続く場合は無理をしないことが大切です。

  • 洗髪時はゴシゴシこすりすぎず、泡で包むようにもみこむ
  • 洗った後はしっかり乾かし、湿った状態を長く続けない
  • カラーやパーマで頭皮に無理をさせ過ぎない

植毛10年後に追加治療が必要になるケース

 移植した毛髪自体はAGAの影響を受けにくく「薄毛になりにくい毛髪」ですが、すでに述べたように移植していない既存毛はそうではありません。したがって、10年の間に移植毛以外の部分で薄毛が進行し、結果的に「全体として薄く見える」状態になる可能性があります。このような場合には、再度自毛植毛を追加で行うことを検討するケースもあります。

追加植毛を検討する際に重要なのは、以下の点を整理することです。

  • どの部分が新たに薄くなったのか
    生え際なのか頭頂部なのか、あるいは既存毛全体がまんべんなくボリュームダウンしたのかなど、薄毛が進行した部位を正確に把握します。部位によって必要な株数やデザイン戦略が異なります。
  • 既存毛の進行度合いと今後の見通し
    現在どの程度薄くなっているかだけでなく、この先さらに進行しそうか(家族の薄毛傾向や年齢から予測)を考慮します。例えば「今はM字部分だけだが将来的に頭頂部も来そう」など、少し先を読む視点が大切です。
  • 追加植毛が必要な範囲と概算株数
    薄毛範囲が広いほど必要株数も多くなります。ドナーから採取できる毛には限りがあるため、どの程度の範囲をどのくらいの密度で植える必要があるかを医師と相談し、優先順位も含め計画します。

 こうした点を担当医とともに整理し、10年後以降も不自然にならないような計画で追加植毛を行うことが重要です。特にドナーとして利用できる毛髪の量には自ずと上限があり、施術方法(FUT法かFUE法か)や個人の状態(毛量、密度など)によってもその上限は変わります。言い換えれば、追加植毛は際限なく何度もできるものではないという現実があります。そのため、初回の自毛植毛を行う段階から「将来の選択肢を残す」計画を立てておくことが肝要です。
 例えば、経験豊富な医師であれば、初回手術の時点で「将来的に追加が必要になる可能性」を見越してデザインや採取範囲を考慮してくれます。実際、初回植毛から10年以上経ってから追加植毛を検討する患者さんは少なくありません。当院でも植毛してから10年後や20年後に再度ご相談に来られて植毛される方は珍しくはないです。
 初回でドナーを使い果たしてしまわないよう配慮しつつ、万一追加が必要になった場合も対応できるよう将来を見据えた戦略を持っておくことで、10年後・20年後に「やっておいて良かった」と思える結果につながりやすくなるでしょう。

植毛10年後についてよくある質問(FAQ)

Q. 植毛10年後、移植した毛は抜けますか?

A. 自毛植毛では、AGAの影響を受けにくい側頭部・後頭部などのドナー毛を移植します。そのため、移植毛が術後にしっかり生着していれば、植毛10年後であっても生え続けることが期待できます。ただし、年齢とともに毛質が変化したり、白髪化することはあり得ます。また、「薄くなった」と感じる場合でも、多くは移植毛そのものではなく、周囲の既存毛の進行が見え方に影響しているケースが少なくありません。

Q. 10年後に薄く感じたら「植毛の失敗」ですか?

A. 必ずしも植毛の失敗とは限りません。移植毛が維持されていても、AGAは進行性のため、植毛していない既存毛が時間とともに細く・少なくなる可能性があります。その結果、密度のバランスが変わり、「以前より薄く見える」と感じることがあります。これは植毛手技の問題というより、AGAの自然経過が長期で反映された状態と考えられるケースが多いです。

Q. 10年後に不自然に見えるのはなぜですか?

A. 薄毛の進行は年齢とともに部位やスピードが変化します。将来の進行を十分に想定せず、当時の薄い部分だけを高密度で植毛した場合、10年後に密度差が目立ち、不自然に感じられることがあります。そのため、自毛植毛では「今の改善」だけでなく、植毛10年後の見え方まで想定したデザイン設計とそれを実現する技術力が重要になります。

Q. 追加植毛は何回でもできますか?

A.追加の自毛植毛は可能な場合がありますが、ドナーとして採取できる毛髪には限りがあります。体質や初回手術の範囲、採取方法などによって上限は異なり、無制限に行えるわけではありません。そのため、初回の段階から植毛10年後、その先までを見据えて、将来の選択肢を残す設計を行うことが重要です。

まとめ

 このように、体質や状況によって個人差はありますが、基本的には自毛植毛で移植した毛髪は10年後も生え続けていることが期待できます。そして、植毛した移植毛を維持する為には、まず移植後にしっかりと移植毛を定着させることが重要です。また、移植していない既存毛は、AGAの影響を受けて薄毛が進行する可能性がありますので、移植された毛髪だけではなく、移植していない既存の毛髪を維持しておけるよう、極力薄毛の予防(治療薬、生活習慣改善など)を継続的にするよう心掛けておきましょう。
 植毛10年後は、移植毛よりも既存毛の進行が見え方を左右しやすいのがポイントです。術直後は適切に頭皮を管理し移植毛を定着させ、将来を見据えた設計と既存毛ケアを組み合わせることが大切です。
 1998年よりAGA治療・自毛植毛専門院としての実績を持つ紀尾井町クリニックでは、経験豊富な医師が直接相談を承った上で、一緒に薄毛治療プランを考えております。また、長年培ったノウハウを基に将来を見据えた植毛デザインを心掛けており、植毛10年後以降の植毛にも対応しております。AGA・薄毛でお悩みの方、植毛を検討されていらっしゃる方はお気軽にご相談下さい。

第三者サイトに掲載されている当院の評価(Caloo)

紀尾井町クリニックの自毛植毛や薄毛治療については、
医療口コミサイト「Caloo」にて、
実際に受診した方による評価・口コミが掲載されています。

👉 東京本院の評判・口コミ(Caloo)を確認する
👉 新大阪院の評判・口コミ(Caloo)を確認する

監修医師プロフィール

東邦大学医学部医学科卒業後、同大学附属病院泌尿器科に入局し、以降10年以上に渡り手術加療を中心に臨床に従事。男性型脱毛症(AGA)にも関連するアンドロロジー(男性学)の臨床に関わる。2021年より紀尾井町クリニックにて、自毛植毛を中心に薬物治療を組み合わせてAGA治療を行っている。著書として『薄毛の治し方』(現代書林社)を上梓。(詳細プロフィールはこちら

AGA治療・自毛植毛|紀尾井町クリニック 東京院院長
日本泌尿器科学会専門医・同指導医
国際毛髪外科学会 会員
医師 中島 陽太

記事監修 中島医師